黒門亭26(中・柳家花いち「お菓子の伝言」)

続いて、二ツ目の披露目で聴いて以来の金原亭駒平さん。
若手なのにグレイヘア。

駒平さん、最近噺家の多い大分出身。
地元で二ツ目披露興行を催してもらった。もったいなくも、喬太郎、文蔵、宮治といった人たちが出てくれる。
そんな人たちに口上に並んでいただけるので、銀髪に染めてみましたとのこと。
よくわからんが。

金髪だとちょっと目立ちすぎる(だったか、なにかネガティブなことを言っていた)でしょ?
いや、なにも青森アニさんのことをどうこう言ってるわけじゃないんですが。
扇ねえさんのことでもないです。
久々に聴いた名前。

金原亭なのになんで銀色かといいますと、銀は「金より良い」って書くんですよ。
この髪にしてから、歌舞伎町を歩いていて客引きに遭わなくなりました。なんかホストから挨拶されたりしまして。

金原亭に、こんなチャラい人は他にいないな。
チャラい噺家の始めた時そばは、1周目の男も2周目の男もチャラかった。
チャラ男落語ってのもなかなかない路線で、いいんじゃないですか。
それにヨイショっぽい男と、チャラい男は親和性が高い。

2周目のそば屋は、ヨボヨボの爺さんがやってる。ありそうでない工夫。
息子が中風で倒れて、孫を育てるため老骨にムチ打って働いてる可哀想なそば屋。1文かするのも気が咎める。

骨格は意外なぐらい崩さない時そばだった。

仲入りは真打の出番で、目当ての柳家花いち師。
今年の10席めで、たぶん私の最多高座数だと思う。
もっとも5日めだけど。行きたい日はもっとあったのだ。
今年は初トリもあった。しっかり裏を返していただきたいものだ。

今回感じたのは、自虐系マクラが非常にしっくりハマるようになったということ。卑屈にならずに。
そして新作落語も、変に突出することなく非常に高座に馴染んでいる。
なかなかいないタイプの人である。芸協っぽい気もするけどやはり違う。

例によって、師匠にはオランウータンの赤ちゃん、昇太師にはインドネシアの郵便局員と呼ばれてますと挨拶。
後者のほうがウケるが、師匠は「俺はオランウータンの赤ちゃんのほうがいいと思う」。なのでずっと使います。
昨日書いたとおり、前座と二ツ目の高座をストレートに褒める。どこが、とは言わないけど。
それから浜松の学校寄席。
おそばの食べ分けをすると、子どもたちがうるさい。「そばじゃないよ。ラーメンだよ」。
なので最近は、「さあ、麺食べるよ。いっぱいあるね、麺すするよ、麺おいしいね」。
そうしたら苦情がなくなった。

浜松の相撲巡業の話。相撲好きのお姉さんと観にいった。
座布団1枚なのに18,000円もした。
静岡出身の力士といえば熱海富士だが、ケガで休場。
ただもうひとり翠富士がいて、巡業では大人気。
優勝戦ではならわしとして地元力士が勝つはずなのに、なんと負けてしまう。お客さんも戸惑い、勝った力士も明らかにうろたえている。
すると、審判から物言いが付き、同体ということで取り直し。大歓声。
見事翠富士が優勝。八百長相撲を目の当たりにしました。
静岡第一テレビのニュース見たら、私画面に映ってました。よく考えたら今年初めてのテレビ出演だったので、喜んでる場合じゃありません。
市馬師みたいに、VTRで驚いた顔が再生されるぐらいになりたいものです。

次の駒治師匠など、好きな鉄道で落語を作ります。
私も好きなもので作ろうと思いまして。私はお菓子が好きです。
私は小さい頃から、風邪を引くとチップスターを食べて治します。
もちろんチップスターで風邪は治りません。でも昔から風邪のときにチップスターを与えられていたので、「チップスターを食べると治る」という意識付けができてしまっているんです。

古典か新作か一切気にしなかったのも、あとから思うと面白い。
花いち師ならマクラからなんでも面白いのだ。

入った新作は、今年「真・観笑地帯」で聴いたもの。
もっとも、当時内容ほとんど忘れてしまっていて、当ブログにも詳しくは書いてない。
なので今回聴けてよかった。ほぼ思い出した。
当時の演題は「人生お菓子」だった。また替えたみたい。「お菓子の伝言」。
変更後のほうがいいと思う。
作って埋もれていた噺のひとつのようで、ようやく日の目を見たようだ。

次の駒治師にも駄菓子屋の噺があるが、駒治師と違い、花いち師は大手メーカーが作っているお菓子に特化している。

駄菓子屋の婆さん店主と、小学生たちの会話をオムニバス形式にした噺。
悩みを持つ子どもたちを、婆さんがお菓子をたとえにアドバイスする。
最初にやってくるカケルくんは、怒っている。
今日遠足だったんだけど、おやつは300円までなのに、友達はすごくたくさん持ってきてたんだ。
ずるいよって言ったら、卸業者から買ったんだって。
うちは定価でごめんねと婆さん。

宇宙飛行士になりたいカケルくんだが、親は公務員になれという。
婆さんはヨックモックを渡し、これで覗いてご覧。なにも見えないよ。それが大人の視野なんだよ。

このとき、この字を読んでごらんと婆さんの差し出す手ぬぐいが、電車の図柄だった。駒治師のなんでしょう。

中学生になったミキちゃんが久々にやってきて、二人から同時に告白されたけどどっちと付き合おう。
婆さんはオレオ占いを教えてくれる。オレオを二つに割って、クリームの多かったほうと付き合いなさい。
婆さんは、持ち家か賃貸か、これで決断したのだ。
なんでも、古典か新作か決められないときも使ってるんだそうだ。
婆さんは、人生は柿ピーだという。ピーナツだけ食べてちゃダメ、辛い柿の種あっての人生。

出てくるお菓子の種類が半端ない。
また聴きたいなと思った。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。

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