亀戸梅屋敷寄席12(上・三遊亭鳳楽「鰻の幇間」)

楽べえ / 手紙無筆
兼太郎 / 雑俳
楽生  / 片棒
(仲入り)
竜楽  / そば清
鳳楽  / 鰻の幇間

亀戸梅屋敷寄席は2時間の席。仕事の隙間に時間を作って出かける。
三遊亭竜楽師を聴きに。トリじゃないが。
ちなみに竜楽師、同じ日の夜席である、両国ではトリ。
両国のほうは、円楽党随一の人気者・兼好師も顔付けされているし、他団体のゲストが橘家文蔵師、立川志遊師という実に面白い番組。
だが、そんなに夜は出歩けない。昼席で我慢しよう。
またしても、8月末、内幸町ホールの竜楽師の独演会には行けなかった。
でもそんなに残念じゃない。いずれ行けるのははっきりしているし、それに寄席だっていいものだ。

急に暑くなって客足に影響したか、20人程度の入り。

亀戸のトリは鳳楽師。芸歴54年。
圓生襲名問題の頃に聴いて以来である。その際、淀五郎だったか、ネガティブな印象を持ってしまい、それがぬぐえなくて、正直避けていた師匠。
だが、弟子の鳳志、鳳笑、鳳月と、最近揃ってファンになってしまった。惣領弟子の楽松師も、よく聴く実力派の師匠。
次々いい弟子を出す師匠が、悪い噺家のはずがない。
そうやって私は三遊亭好楽師、それから柳家花緑師が好きになっていったのだ。
鳳楽師で幻滅した当時の私には聴く耳がなかったのだ。そう思って、最近になって聴く機会を狙っていた。

三遊亭鳳楽「鰻の幇間」

そのトリの鳳楽師、久々に聴いてどうだったか。
昔聴いた際の、今ではよくわからないネガティブな感情はとりあえず消えた。
だが、今回に関していうと、普通だったかな。
マクラには、故・古今亭志ん駒の思い出が入っていた。先輩の志ん駒師たちと、鈴本の前に出る手相見に見てもらった話は面白かった。

暑さが戻ってきたので、鰻の幇間。
寝床やお菊の皿などと同様、演者の工夫でギャグを入れる余地が大きい噺と思う。
そんな噺だが、そんなに独自のクスグリなくして端正に、丁寧に作り上げるのは見事。
だが、鳳楽師がどうという前に、この噺の穴が気になってしまった。
幇間の一八が悪い旦那に騙される舞台の鰻屋が、ひどい店であることは明らか。鰻からおこうこから酒まで全部。
なのに、どうして一八はひどい酒を追加注文するのだろう。
旦那が払ってくれたと誤認してからの追加であるのもよくわからない。一八の認識の中ですら、この勘定だけは自分のところに来て不思議ない気がする。
たびたび聴く噺だが、いい感想を持ったときは、さして穴が気にならないのだが。

演出面で、これはどうかなと思ったのが2か所。
旦那は、「俺はすぐ帰るんだからゆっくりしてきなよ」と一八に言うのだが、消える前にこんなこと宣言する必要があるのかね。
そして、鰻が早く来る理由について、旦那が解説している。「板場に言って急いでもらった。今、出前に出るところだった鰻をあつらえてもらった」のだと。
この必要性もわからない。
私の嫌いな、説明過剰落語になってしまいかねない。
旦那の下駄のボロさも詳細に描写しているが、これも過剰気味かも。結局一八がこれ履いて帰るわけじゃないのだし。
ただ、現にプロにも説明過剰落語を掛ける人がたくさんいるからこそ、そういう概念について私は述べているのである。
鳳楽師の落語に説明過剰傾向があったとして、「説明過剰落語だからダメ」なんてさすがに言えない。

一八が、旦那にばったり出会う前に、「穴釣り」つまりご贔屓の自宅を訪問してごちそうにありつこうと企む場面が入っている。
このシーン、聴いたのは初めてだったかもしれない。
ここだけ聴くと楽しいのだが、後半、一八の持った羊羹がどこに行ったのか気になって仕方ない。
女中のお清が、一八の懐が膨らんでいるのを見逃さなかったのだ。どう考えてもあとで再度登場しそうな気がするのだが。

まあでも、ある日の幇間の悲劇を、面白おかしく描いた一席ではあった。
もういっぺん、鳳楽師を聴きにこねばならない。

続きます。

 

宿屋の仇討/鰻の幇間

作成者: でっち定吉

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