桂小春團治「さわやか侍」(上)

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radikoプレミアムに入っているおかげで、全国のラジオを好きな時間に聴ける。
野球シーズンは、らんまんラジオ寄席も放送されていない。だからラジオで聴ける落語は上方落語中心になる。
久々に、ABCラジオ「日曜落語なみはや亭」で桂小春團治師の新作落語が流れてきて、嬉しくなってしまった。
放送当日の日曜日に聴いたのだが、早くも翌日には消えてしまうという一席。
短い期間に三度続けて聴いた記憶をもとに、ご紹介します。

先日は小春團治師、NHK「日本の話芸」に出演し、見事な一席を披露していた。もっともこれは新作ではなく、古典落語の「大名将棋」である。
東京では「将棋の殿様」という噺。
この際、武士の描写が上手くて感心した。非常に貫禄がある師匠。
上方落語に侍の噺は少ないものの、もちろんできたほうが絶対にいいのである。
米朝も、侍の風格を覚えることの重要性を述べていた気がする。
そして、この春團治師の上手さが、江戸時代を舞台とした新作落語に活きるのだ。

新作落語もすっかり世に定着しているが、東京と上方で作り方に若干の差があると感じている。
上方のほうが、日常に密着した新作が多いように思う。
これは漫才の影響だと私は思っている。「人間の面白い行動」を描くのが目的なのだ。
東京の新作落語のほうが、物語の世界からなにからすべて作り込む傾向が強いように思う。そして登場人物も、現実世界からはみ出る人が多い。
上方の新作落語家の中では、小春團治師の新作落語の作り方は、むしろ東京のそれに近いようだ。
冷蔵庫の中の食材の会話「冷蔵庫哀詩」とか。これなども、誰か東京の噺家さん、やらないだろうか。

上方の新作も、桂文枝師のものは、柳家はん治師をはじめ多くの人が東京で掛けている。
桂文珍師のものは他人が掛けることはないが、それでもご本人自身の活躍でメジャーだと思う。
最近では、上方落語協会会長の笑福亭仁智師の楽しい新作が、多くメディアに乗るようになり私も喜んでいる。
だが西の天才、小春團治師の作品がもうひとつ東京では流れていない。残念でならない。
東京で、師の新作を掛ける人が現れて欲しい。結構、移植しやすいと思うのだけど。
この「さわやか侍」など、古今亭駒治師にやって欲しいなと思った。
あの師匠は、悪徳奉行の「ぐふふふ」とか非常に上手いはずである。

さわやか侍は、時代もの。TV時代劇のパロディである。
設定の中の登場人物が、時代劇を忠実に模倣しようとする。ほりのぶゆきの漫画みたい。
でも時代劇の登場人物だって、本来は現代人視点で動いているわけではないはずなのだ。別に未来の視聴者を喜ばせようとしているわけではなく、般若の面をつけて悪だくみの場に登場してやろうと思ったに違いない、はずだ。
そういう点では実は正しい設定。

この作品について言うなら、小春團治師の自作落語っぽくないなと思っていた。
物語の世界をすべて作り込む点では小春團治師にピタッとはまる。だが、師の自作の場合、登場人物が無自覚にふざけているというものは少ない気がする。
調べたら、落語作家の小佐田定雄先生の作品だそうな。なるほど。
さすが小佐田先生。そして、2002年の初演だから結構古い作品なのだ。
姉妹編で「さわやか刑事」というのもあるらしい。もちろん聴いてみたいが、どんな噺かだいたい想像はつく。
作者も偉いが、もちろん噺を磨きぬくのは演者の仕事。仮に東京に移植すれば、また移植した人の噺になる。

続きます。

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作成者: でっち定吉

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