八楽 / 子ほめ
やなぎ / 転失気
勝丸
歌司 / 漫談
笑組
燕路 / 辰巳の辻占
百栄 / 誘拐家族
一之輔 / 黄金の大黒
のだゆき
一朝 / 芝居の喧嘩
(仲入り)
ロケット団
小ゑん / ぐつぐつ
馬石 / 浮世床
ダーク広和
喬太郎 / 花筏
キャッシュレス特需のおかげで、本業のライティングが結構忙しい。だが、なんとか喬太郎師の主任の席に出かける。
この火曜日は、交互出演で春風亭一之輔師も出ている。
寄席は令和の時代には珍しく、キャッシュオンリーの遊び場である。うっかり、財布の中に千円しかないのに中央通りの列に並んでしまい、慌ててファミマに下ろしに行く。
現金を寄席以外で使うこと、最近は皆無です。鈴本もキャッシュレス対応してくれれば5%還元になるんだろうが。
ちなみに、東京かわら版の割引、200円になっているじゃないか。気づかなかったです。以前は300円。
帰りに買い物した御徒町の吉池は5%還元。
寄席四場は、4月の上席、池袋で昼席(菊之丞)と夜席(喬太郎)を続けて聴いて以来である。避けていたわけではないが気づくと結構ご無沙汰だ。
その半年前の喬太郎師は、居残り佐平次。
この半年間、私はいったいどこに行っていたか。円楽党と黒門亭と神田連雀亭と、あとは安い席いろいろ。
だが、寄席が私を呼んでいる。この喬太郎師の席から寄席に戻ろうと決意したのだ。
結果非常に楽しかったが、やはり寄席というところは、混雑していてもテンションが違う。本当に日常の世界なのである。
演者のほうも日常感満載。毎日出勤する仕事場だもの。この日の演目も、先刻知っているものばかり。
そんな日常の寄席が、私に「お帰り」と言ってくれている気がする。幻聴かもしれないけど。
そして、眠くて仕方なかった。ロケット団以外の色物さんで寝せてもらいました。
笑組など完全寝落ち。
色物さん、別に寝やすくはないのだが、本当に眠かったもので。これも、くつろぎの証拠。
平日なのに、鈴本は開演時から満員だ。2年前の春の平日、ここで喬太郎師を聴いたときは、もちろん最後は立ち見だけど開演時から埋まってなどいなかったが。
その主任、喬太郎師の高座から。
この芝居では、「路地裏の伝説」「母恋くらげ」なども出しているらしい。どちらも好きな噺で、寄席で聴いてみたいものだ。
この日はというと、古典落語の「花筏」。
喬太郎師にしては、わりとフツーの演目である。
だが、このフツーの噺がもう、たまらないものだった。
もっとも、実際に高座を聴いた人の多数の感想は、フツーの落語という認識ではない気がする。相当にお遊びが入っているし。
だが、噺の骨格については少しもいじっていなくて、先人の型を踏襲しているのである。喬太郎師は、このバカな世界のバカな男たちの物語、ストレートに大好きなのだろう。
先輩の昇太師にも教えた演目だそうだ。古典に力を入れている昇太師の得意演目でもある。
そして、「落語研究会」あたりのオンエアで知っている花筏より、大幅にパワーアップしているのであった。
ラグビーの話題をちょっと振って、よく師が語ることだが、私はスポーツにまるで興味がないんですと。
文系オリンピックもあるといいですね。でも文系オリンピックの種目に「落語」はいけません。我々勝負はしないんです。
ファンの方は「今日は馬石の勝ち」とか思ってるかもしれませんが。
だいたい、文系オリンピックの落語に日本代表が出て、アゼルバイジャンに負けたらイヤでしょうと。
以前「リトアニア」に負けたらイヤでしょというのを聴いたが、アゼルバイジャン、いいですね。モンゴル、とかいうとなんか生々しくなるし。
そして、やたら大相撲のTVに映っている、市馬、菊之丞、そしていつもピンクのペー先生の話。
この時点でもう、本編はほぼ花筏と決定。
前述のとおり、喬太郎師にしてはフツーの噺と思っているので、本編を知って特に喜んだわけではない。
もっとも、喬太郎師の先人の型を踏襲した古典落語、私はいずれも好きで、このブログでもたびたび取り上げている。
花筏も、喬太郎古典の集大成。いいタイミングで聴けた気もしている。
マクラはまだ続く。大師匠、先代小さんが鈴本で相撲中継を視る際、会長席からでは色物楽屋に置かれたTVが見えないので、鏡に映るTVを見ていたという説明のため、座布団を持ち上げ、客に見せる喬太郎師。
座布団をなぜか抱きしめ、「昼席のトリって気が楽だね」だって。
口調を変えて、座布団を指差し、「ここが真打の楽屋ね。で、こっちが色物さんや二ツ目さんの楽屋。小さんは会長席のここ」。
いきなり遊んでみせるのであった。
ご自身の大好きな噺であろう花筏だが、本編のじわっとくる楽しさだけだと客が満足しないのではないかと、そんな気持ちもあるのでは。
そんなことないよとも思うし、そうだよねとも思う。
常に高い期待をされる喬太郎師、大変だ。トリのこの人の空気だけは日常感とは別。
ご本人は、柳家らしく余計なギャグのない古典落語を、トリでもやってみたいと思っていそう。
それも聴きたいような、遊びがあったほうが嬉しいような。