つる | しゅりけん |
都々逸親子 | とむ |
王子の狐 | 兼好 |
(仲入り) | |
鹿政談 | 鳳志 |
らくだ | 好の助 |
1月10日、落語協会と芸協はまだ初席であるが、世間には正月気分などかけらも残っていない。
いつものように亀戸梅屋敷寄席に出かける。この日の顔付けが実に充実しているので、仕事をサボって。
4人全員に期待するという、個人的にすごい番組。
さて、亀戸にも正月の風情はなし。会場の前に、主任の好の助師が私服で立っていた。
開場して間もないのに、入ってみるとすでに満員だ。トリではないが、兼好師の集客であろうか。
そして普段の円楽党より、落語に対する感度の高い客たちであった。
前座は三遊亭しゅりけんさん。
すっかりここ亀戸でおなじみになっている前座。調べたら、昨年5席聴いている。兼好師の三番弟子であるが、今日がいちばんよかった。
つまり、どんどん上手くなっているわけだ。
師匠のように、会話の畳みかけ方が実に達者。特にクスグリが入っていなくても、八っつぁんと隠居の会話が楽しい。
円楽党ではよく聴く「つる」だが、よく聴くのと違い冒頭が「道灌」「一目上がり」「雑俳」などと完全に同じもの。6分ぐらい聴かないと演題がわからない。
一般的には、つるの場合は八っつぁんは最初からつるの由来について疑問を持って隠居宅にやってくるのだが、この八っつぁんは純粋に遊びに来ている。
床屋でバカっ話をしてきたことを思い出し、その流れでつるの由来を訊く。
隠居は、若い者たちが物識りだと言っているらしいと聞き、気分よくなってごく自然につるのウソ話を始める。
前座から、もっともよくできた構成のつるを聴くとは。兼好師の持っているスタイルなのだろうか?
話術はいいし、噺の構成もよく、実に気分よく聴けた。
と思ったら、1年前にも同じ構成の「つる」をここでしゅりけんさんから聴いて、同じような感想をすでに書いていた。1年前より上手くなっているからこそ、いろいろ思うわけだろう。
続いて二ツ目枠は、三遊亭とむさん。
いつも、笑点特大号で見せるのと同じ真っ赤な羽織を着ている人だが、この日は黒紋付の下に茶系の赤。
師匠、好楽の話をマクラで。今日は好楽一門が多いんですと、先に出た前座のしゅりけんさんのエピソードを話す。
そういえば、前座も含めた5人のうち、他の一門は鳳志師だけだ。
ちなみに好楽師は、この日の同時間帯にお江戸日本橋亭に出ている。前日は亀戸のトリだった。どちらかに行こうかとも思ったのだが、この日の亀戸の顔付けが良すぎる。
いつもテキトーな好楽師。2日から4日は池之端しのぶ亭で会を開いている。
チラシは手書きのメモみたいなものを、自宅で印刷して近所にポスティングしている。
誰が出るかは秘密なのだが、笑点メンバーはよく出てくれるようだ。
ところで好楽師、「出る人」ではなく、「出て欲しい人」をしばしばチラシに書いている。
もっとも3日間、それぞれ2部制なので、「この人出なかった」と言えるのは、6席全部聴いた人だけ。だから特に苦情もない。
以前、「談春も来る!」と書いていたが、来ない。だが今年は志の輔師が出た。
他にもヨネスケ師や、雀々師も出たそうな。皆さん先輩の好楽師に頼まれて、いやいや来てるんだって。
志の輔師、立川流の新年会欠席してしのぶ亭に出たらしいけど、なにか落語界激変の伏線なのかしら。これはとむさんではなく私が思ったのだが。
頼むほうもテキトーで、来るほうもテキトー。何時に来いと言われていないので、皆さん思わぬ時間に来たりする。
何年か前に、「小遊三が出る」とお客さんを呼び止めてスタートしたのに、肝心の小遊三師は来ない。
2階でみんなでテレビを視ていると、NHKに小遊三師が出ていたんだって。
とむさんから聴くしのぶ亭の様子、とても面白そうだなあ。
東京かわら版にも出ないけど、来年は行ってみようかなと思った。
それから、誰ひとり落語をちゃんと聴かない小学校の学校寄席の話。でも毎年行くんだそうな。
やはり同門、兼好師の弟子のじゃんけんさんも今日は楽屋にいて、今日は盛り上がってるねと話していたんだそうだ。じゃんけんさんに、今日は都々逸親子をやろうと思うと言ったら、もっと力入れたほうがいいんじゃないかと言われたそうだが、その都々逸親子。
以前、ミッドナイト寄席で聴いた演目だが、軽くて実に楽しい。楽しいマクラからシームレスに続いている。
そして、師匠を詠んだ都々逸も入る。
ゴーンネタも入っていた。
とむさん、どちらかというと新作に力を入れている人かもしれないが、私はこういうリキの入らない古典落語を演じる彼がとても好きだ。