池袋演芸場20 その1(橘家文吾「やかん」)

二人旅春風亭 枝次
やかん橘家 文吾
猫と金魚二ツ目昇進 朝七 改メ春風亭 朝枝
時そば二ツ目昇進 門朗 改メ橘家 文太
江戸家 小猫
松曳き台所 おさん
干物箱春風亭 一之輔
(仲入り)
元禄女太陽伝春風亭 ぴっかり
あくび指南古今亭 文菊
三増 紋之助
キッス研究会春風亭 百栄

 

いつもはネタ帳から、噺家の亭号は抜いている。
ネタ帳とはそういうものだが、個人のブログなんだからわざわざ抜かなくてもいいな。
今回は落語協会のサイトからそのまま貼り付けてみた。
雰囲気出ていいでしょう。

まとまった仕事をようやく終わらせた。金曜日は休みにして、池袋演芸場に出かける。池袋下席の初日である。
主任は春風亭百栄師。先日鈴本でもトリを取ったばかり。この師匠、鈴本以外でトリを取るのはあまり見かけない。
池袋は新作落語の殿堂なのに、主任はひょっとして初めてじゃないか?
先月もこの下席(駒治師)に出かけた。やはり、池袋の下席昼はとても居心地がいい。
時間は3時間と短いのだが、流し込みで好きなだけいられる上席・中席とはまた違う魅力がある。
1月は客が入るから出さないが、2月なので割引券が出ている。2,000円が1,800円である。ありがたい。
先月は、毎日刷るプログラムをもらったが、今席はまた芸協と同じ、席単独のものに戻っている。しかも色付き。これ、予告版じゃないか。

コロナ肺炎が蔓延しているのに、妙に客は多い。仲入りが春風亭一之輔師だということもあるようだ。
一之輔師、この日は落語会など入っていないことは確認していたが、実際のこの初日の顔付け、最終的に確認しないで来たことに気づく。
結局寄席というものはどこまで行っても日常。あまり気合を入れてくるもんじゃないのだ。
代演も順序変更も、この日はなし。
この芝居は新二ツ目のお目見え興行でもある。4人の新二ツ目を2人ずつ分け、新宿と池袋に登場。
池袋下席は夜席が落語会なので、昼に2人出してしまう。
そして、クイツキに女流二ツ目を交互で入れている。その結果どうなったかというと、前座を除く落語8席のうち、半分の4人が二ツ目という非常に妙な番組である。
そんなのも、ある意味とても池袋らしくていい。

主任が百栄師なら、先代正蔵の一門から多く顔付けしそうだが、一之輔師と、ぴっかりさん、新二ツ目のふたりと文吾さんだけ。
ぴっかりさんも三遊亭粋歌さんと交互なので、一門であることは関係ありそうな、さしてなさそうな。

前座は主任、百栄師の弟子の春風亭枝次さん。ほぼ1年振り。
前座はあまりやらない「二人旅」。
すばらしい一席。前座らしく、即物的なウケを狙いにいかないところがいい。
まあ、目に見えるウケどころなんてそんなにない噺だけども、まんべんなく楽しいので、リキを入れずにやればとてもいい感じになる。
そういえば、一之輔師の弟子の㐂いちさんからも、二人旅を聴いた。
上方落語の定番、東の旅の「煮売屋」である。だから東京でも、もっと前座がやっていいと思う。
どじょうとくじらまで。

本来の二ツ目枠は、橘家文吾さん。先日、久々に黒門亭で聴いていたく感銘を受けた。
その際にもちょっと聴いた気がするのだが、群馬のイオンモールのエントランスで一席やったマクラ。屋外みたいなところ。
マイクの利きが悪いので、普通にカミシモを振ってると音が拾えない。そんなところで、ひとり30分でやってくれと無茶なことを言われたと。
確かに厳しい環境だが、そんなところでも頑張って欲しいと個人的に思う。
東京でも、葛西のイオンで毎月やっている落語会に、私は物好きにも2回出かけた。
会場はエントランスではないが、似たような会場。場内アナウンスも終始入ってくるので落語やる環境じゃないけども、でもそんなのもいいものだ。

本編は、楽しい「やかん」。
八っつぁんと先生の会話が敵対していないところがいい。「愚者」も引っ張らない。
人間が見事に、記号に昇華している。
記号化されたふたりは、高度なシャレのやり取りを楽しんでいるのだ。
1か所なんだったか忘れたが、クスグリが予想外にウケたので、すかさず「このギャグが初めてウケた。また使おう」だって。
池袋の客には、そんなセリフのほうがさらにウケるのであった。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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