池袋演芸場20 その5(春風亭百栄「キッス研究会」)

トリの春風亭百栄師、「こんにちわあ」と登場。頭に寝癖が付いている。
ディープなファンの多い池袋でも、いつものように世界一汚いモモエの紹介から。
これは抜かせないらしい。

そして、昨年鈴本でも聴いた自虐マクラ。最近はいつも振っているのだろうか。
「春風亭」で検索しようとすると、予測で出てくるのが、

  • 昇太
  • 小朝
  • 一之輔

いよいよその次かと思ったら、出てくるのは「ぴっかり」。

でも確かに、「柳朝」「柳昇」はいざ知らず、「一花」「正太郎」「昇々」などの二ツ目が出ても、モモエは出ない。
決して、そこまで人気ない人じゃないはずなのだが、なぜかこうなっている。

百栄師続けて、「春風亭百」まで来れば、あたしのもんですと。
こうなると私しか出ません。でも、辞めた弟子「百んが」が出てきたらどうしようだって。
高座で元弟子のことを喋っているということは、最初の弟子は破門ではないらしい。
この日の開口一番、枝次さんは、百んがさんが辞めてから入っているはず。

学生の頃は、異性への関心が抑えられない。運動部はそれでも運動で発散するが、文化部の男子には発散する方法がない。
だから、異性への関心自体を研究材料にしてしまったりする、と振る百栄師。
ああ、「キッス研究会」だな。「柳家喬太郎のようこそ芸賓館」で掛けたVTRを持っている。
百栄師の楽しい新作落語のラインナップの中では、それほど好きな噺ではないのだが。
でも、吉原に行きたい噺が出て、ぴっかりさんの吉原の噺が出て、文菊師が色っぽい噺を掛けて、そして高座返しは美人だという、少々浮ついた席にはぴったりかもしれない。

高校生活でキッスの仕方の研究をする部活「キッス研究会」。
肩を抱き寄せ、目をつむり、薄目を開けて相手が目を閉じているのを確認し、また目をつむりなどという手順と意味を、一生懸命マスターしようとしている先輩と1年生。
しかし、このマニュアルが真実なのかどうかは誰も知らないのだ。

そしてキッス研究会を冷やかしに、次々とやってくる他の研究会の諸君。
いずれもキッスについて、異なる方法論で研究している連中である。
この噺について書こうとすると、ほぼネタバレになりかねない。
ネタバレすると楽しさが半減するタイプの噺。なにも書けない。
私にとっては、あまりVTRを繰り返し聴いたことがなかったのが、かえってよかったかもしれない。
なかなか面白かった。知っている以上、意外性はないけれど。

ちなみに、翌日2日目は「ねこの日」だったから、「バイオレンス・スコ」とか出たんじゃないかと想像していたら、ツイッターにアップしてくださっていた人がいて、ほんとにそうだったと知る。
4日目は「落語家の夢」を掛けたそうで、私のブログの該当記事のアクセスが増えて知る。
その次の日は大阪で会があったので寄席は休みだが、そちらではまた「キッス研究会」を掛けたそうな。

明確なハズレ高座がひとつもなかった池袋。
印象に残らない高座もなかった。
もちろん百栄師、一之輔師のおかげもあるが、この日の昇級者をはじめとする二ツ目の皆さんが頑張ってこそである。

コロナで落語会が次々中止になっても、寄席は開いている。
寄席四場は開いてるけど、黒門亭も3月前半は中止だそうな。
7日の2部、柳家一九師の「二番煎じ」ネタ出しで、小ゑん師も出るので楽しみにしてたのに。
あんなところでコロナは蔓延しないとも思うが、落語協会直営だから席亭に気兼ねする必要はない。潰しやすい。
届いたばかりの東京かわら版3月号にタダの落語会が出ていたので、さっそく往復ハガキを買ってきて応募した。
3月15日のこの「たばしお寄席」(たばこと塩の博物館)も、延期になってしまった。隅田川馬石師。
そんなこともありそうだからと思い、聴けるうちにもう1日行こうかなと実は昨日、27日に再度池袋に行ってきたのです。
大収穫でありました。
明日からその池袋の模様を。落語聴きの決死隊。

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作成者: でっち定吉

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