両国寄席8 その1(三遊亭楽太「寿限無」)

寿限無 楽太
転失気 好好
道具屋 楽大
宗論 上楽
厩火事 とん楽
長屋の花見 萬橘
(仲入り)
締め込み 鯛好
井戸の茶碗 竜楽

 

円楽党にはよく通う私だが、昼席の亀戸梅屋敷が多い。
夜席の両国寄席は昨年7月以来とややご無沙汰だが、本当はこちらのほうが好きなのだ。
最終日15日日曜日は、三遊亭竜楽師の主任である。仲入りは萬橘師。これは行くべき番組。
両国寄席ではおなじみの、他団体の噺家がひとりもいないのだけやや残念ではある。
開場時刻の5時半ギリギリに行くと、まだ開いていなくて入場を待つ列が数人。
とそこに、本日の主任竜楽師が楽屋口から出てこられた。待っている客に、「こんなときにありがとうございます」と一礼。時間を潰すのか、両国橋の方向に歩いていかれました。

いつものように、「竜楽師匠を聴きにきました」と前座さんに伝えて、1,200円で入れてもらう。
番組変更告知ツイッターには出ていなかったが、行ってみるとクイツキの愛楽師が、二ツ目の鯛好さんに替わっている。
そしてその鯛好さんが出てきて言うには、演者が減ってこの後トリの竜楽師ですとのこと。
ヒザは芸協の色物さん、俗曲の小梅美ゆ紀さんであったが、来れなくなったらしい。
そのため、オール落語で8席という、立川流の寄席みたいな番組になった。うち二ツ目が3席。
演者が減っても、トリの竜楽師の「井戸の茶碗」熱演で、時間が20分オーバーで終演。
非常に満足の3時間でありました。
竜楽師によると、本日のお客は19人とのこと。
適度に離れて座るので、濃厚接触はない。

「三遊亭竜楽 井戸の茶碗」で検索すると、ありがたいことに私のブログが2番目に表示される。
1年半前に聴いた際の記事である。
今回もまた非常に感動し、大いに笑った。
この見事な一席は何日かあとの記事で改めて触れることにして、今回はトップバッターから。

顔を知らない新しい前座さんからスタート。メクリには「三遊亭楽太」とある。
名前からすると、どう考えても円楽師の弟子である。
ハキハキしている好青年。
後で調べたら実際に円楽師の弟子だった。元・楽太郎の弟子で楽太。伊集院光がラジオで触れたんだそうな。
もう弟子は採らないと宣言していた円楽師に、くじけずアタックして入門にこぎつけたとのこと。
17歳で今年入門したそうで、もう18になっているかもしれない。そんなに若いんだ。
大学のオチケンにいたような感じが漂っていたのだが。
円楽師、私の予想では、仮に弟子を取るとしたら芸協の楽屋に入れると思っていた。談幸方式である。
だが円楽師、芸協はどうやら客員のままで終えるつもりらしい。新たな弟子も円楽党で修業をするのだ。

好青年の楽太さんは寿限無。
高校でも落語をやっていたのだろうか? 喋ることには慣れているようだ。
でも素直なのだろう。非常に前座らしい、朴訥な落語である。こういう人は将来性が高いのだ。
円楽師のところも、この日顔付けされている来月真打昇進の楽大さんをはじめ、達者な人の多い一門である。
楽大と楽太、字が似てるのだけ気になる。

ちなみに寿限無の言い立ては、ほぼNHK標準バージョン。きっと子供の頃、好きで覚えた形でやっているのだろう。
だが、「シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピー」のセリフが、「シューリンガンのグーリンダイのポンポコピー」に、2回なってしまっていた。
そんなもの、誰が気が付くんだ。アタシだ。
言い立ての言い方は、迎えにくる金ちゃんと、両親とでは異なる。金ちゃんはたっぷり間を取り、そして両親はハイスピード。

和尚に考えてもらった名前のいわれをかみさんに解説する(自己流)という、聴いたことのないくだりが入っていた。
五劫の擦り切れは、天上人が花札をやって、五光を出し、そのとき札をなでて擦り切れるのが5回なんだって。円楽師がこういうのを持っているのか?

楽太さん、堂々としゃべり緊張してたふうでもないのだが、メクリを「好好」に先に替えてしまってから、高座に戻って座布団返し。
客に向かって一礼し、「失礼いたしました」。
うっかりしても、パニックに陥ったりはしないのだ。大したものだ。楽しみな前座さんに会えた。
どこかの一門と違い、円楽師は破門なんかしない。伊集院光も自主廃業。
弟子への向き合い方も、先代の悪かった点をすべて反面教師にし、穏やかに接するようにしているらしい。
結構、育成達者な人なのだ。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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