両国寄席8 その2(三遊亭楽大「道具屋」)

スキンヘッドの三遊亭好好さんは出てきて一瞬間を置き、「お坊さんではありません」。
二ツ目に昇進してからは、師匠・好楽と顔を合わせる回数が減った。だが珍しく師匠から電話がかかってきた。
「明日空いてる?」「空いてます」「映画行くけど来る?」
これが、「明日映画行くけど空いてる?」なら断りようもあるのだが、先に空いてるかと訊かれると避けようがない。
師匠と一緒にパラサイトを観にいった好好さん。師匠が隣にいるので寝るわけにはいかないので一生懸命観ていた。
幸い、映画はとても楽しかったのだが、師匠は爆睡していた。
やむを得ず行った体で喋るのだが、その実師匠に声を掛けてもらって嬉しくてならない様子の好好さん。
こういうエピソードを聴くと、師弟っていいなと思うのです。

そして坊主つながりなのか、転失気へ。昨秋亀戸で聴いている。
噺を進めるにあたり、まったく焦らない点には感心する。
「屁とも思いません」でも、「なら平安時代から」でもないサゲが付いている。

次が、4月1日から真打の三遊亭楽大さん。
前日は、一緒に昇進する先輩、鳳笑さんの披露パーティだったそうな。会場は上野だったようで(上楽師が、鈴本のすしざんまいで飲んでたと言ってた)、東天紅かな。
ご本人のパーティは、3月21日。
お客さんからは、次々とキャンセルの連絡が入る。しかし、芸人の参加が多い。
芸人は、仕事が流れてしまって、パーティに来てくれるのだ。
そういえば、一之輔師も仕事が流れ、弟弟子・一左さんのパーティに出席したとラジオで言ってたっけ。
楽大さんのパーティには、好楽師も仕事が流れたので、行くよと言ってくれた。
オヤと思ったのだが、好楽師のことを「元会長で偉い人。今は理事・・・相談役でしたかね」と。
後で調べたら、好楽師は先日円楽党の会長職を退いて、顧問に就任している。現在の会長は圓橘師。
楽大さん、鳳笑さんの真打昇進は報道されていたのに、好楽師の退任は報道されておらずまったく知らなかった。
というか世間の大多数も、好楽師が円楽党の会長だったこと自体そもそも知るまいが。仕事のない暇なおじさんだと思っている人もたくさんいるわけで。
これが落語協会や芸協なら、会長交代はちょっとしたニュースなのに。
円楽党の会長職、鳳楽⇒好楽⇒圓橘と来ると、次は円楽師というのがものの順序になるが、円楽師は半分芸協にいるので会長はできまい。
円楽党は、圓橘師の後で会長が務まるような人が、兼好師までぽっかりと誰もいないのが難点。
まあ、他団体の師匠と関係の深い兼好師でいいんじゃないですか。

話がそれた。
ともかく楽大さんは、政府からなにか発表がない限りは披露パーティはやるそうだ。
師匠・円楽が、知ってるホテルがあるのかと声を掛けてくれた。知らないので、師匠の世話で「錦糸町のホテル」でおこなうことにした。
もちろん、東武レパントのことだけど。
一般のお客様は、ぜひ来月の両国に来てくださいと宣伝。
ところで、円楽党は代々真打昇進は一人だった。楽大さんが噺家になって以来、ずっとそう。
だから披露目に並ぶ真打もだいたい1人。
今回は二人なのだが、トリでないほうも毎日顔付けされるし、口上にも並ぶ。楽大さんいわく、芸協方式。
この高座に、二人揃って毎日並ぶ。アタシは体がでかくて場所を取るので、師匠方に文句を言われているんだそうな。

二ツ目なので持ち時間は長くない。手短に、道具屋。
与太郎が、妙に知恵があって、おじさんや同業の道具屋にマーケティングの心得など、偉そうなことを言うのが楽しい。
それ以外、珍しい点はないのだけどとても楽しい。人間がしっかり描かれると落語は楽しいのである。
人を幸せにする落語。
楽大さんの披露目はもちろん来たい。あるいは亀戸になってしまうかもしれないが。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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