女流落語家

(※ 「女流噺家」というタイトルでずっと出していたのですが、不自然な気がしてきたので修正します)

来訪者のほぼ9割、男性が占めている当ブログですが、日曜日のアクセスを見たら、女性が4分の1を占めていました。
「昭和元禄落語心中」ネタの反応がいいのでしょうか。
そんなことがきっかけで、今日は女流の噺家さんについて書いてみます。

落語協会の二ツ目を調べてみると、63人中10人が女性だ。
芸協は、35人中、2人。芸協は講談師の女性が多いから華やかなイメージだが、落語家さんに関しては意外と少なかった。
上方落語協会のほうは自分で調べるのが面倒だったのでWebでひとさまのデータを参照させていただく。上方には階級制度がないから全体の数字だが、2010年の5%が女性とのこと。
結構な比率だと思う。

落語はもともと男のものなので、女性には不利だ、とよく言われる。
廓話、艶笑噺はできないし、八っつぁんとご隠居さんの会話にも無理があると。
おかみさんなど女のキャラクターも、実際には男のつくった女なので、女が演じても無理があるという説も読んだことがある。

本当にそうなのだろうか。講談だって、もともと男のものだったのではないかな。チャンチャンバラバラ、仇討ち、親分子分と、こっちのほうがよほど男の世界ではないか。
でも実際に女性が多数派になった今、「講談なら女性でもできる」などと平気で言う。たぶん、原因と結果が逆だ。

落語女性不向き説は、男性の落語家をよく振り返ればあっさり論破できると思う、
「昭和元禄落語心中」の有楽亭八雲師匠もそうだが、男性が色っぽい女性、かわいい女性を演じていることについて、マイナスの論評はまったくない。
それなのに、女性が乱暴な八っつぁん熊さんを演じると「無理だ」というのだ。
無理なのではなく、聴いてるあなたのお気に召さなかったというだけではないのか。
男が女を演じるのは芝居のほうで長い歴史があるが、その反対の宝塚だってずいぶん長いことやっている。
女性の噺家さんも、なんでもできるはずだと私は思っている。年齢を重ねても関係ありますまい。

最近寄席に行った際、二ツ目の女性が「真田小僧」を掛けていた。よかったですよ。前座として認識していた人だったということもあり、うまくてびっくりした。
アニメや吹き替え映画で、男の子の声を女性の声優さんがあてるように、女性の噺家も「落語の世界の子供」を描くのに向いてはいるだろう。
でも、たまたま噺が合っていたという以上の可能性を、私は感じました。

女性の噺家さんも、不向き説を真に受けて、自分で限界を作ってしまっている人もいるのではないか。「古典落語の登場人物は男性目線なので、新作落語に特化して、落語向きの女性を登場させればいい」というふうに。
これもひとつの手だとは思う。だけどなあ・・・女性の日常目線で噺をつくったとして、それは自然なのかもしれないけど、聴いて面白いとは限らないよ。
三遊亭白鳥師匠の新作落語「ナース・コール」を、柳亭こみちさんに教えてやらせたら大爆笑だったという逸話がある。「ナース・コール」の主人公みどりちゃんは、ぶっとんだキャラクターで、等身大の女性でもなんでもない。
こみちさんも人間の女性だけでなく、白鳥師の「流れの豚次」だってできるのではないか。任侠道に生きる豚です。

たぬきを演じるときにはたぬきの了見になれ、というのが柳家の教え。こみちさんも柳家だ。
了見にさえなれば、なんでもできる! はず。

女性の噺家さんも、古典落語にもどんどん挑戦して欲しい。
吉原に生きる女だって演じられるはずだ。化け物みたいな花魁とか、見たいですね。

作成者: でっち定吉

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