再度の仲入りを挟んで、アロハマンダラーズ。
この仲入りは、換気目的もあるが、そもそもステージの準備が必要だからである。
メンバーは次の通り。
ギター | 春風亭柳橋 |
ウクレレ | 神田紫 |
ウクレレ&MC | 新山真理 |
スチールギター | 春風亭傳枝 |
ボーカル&パーカッション | 桂夏丸 |
ベース | 笑福亭希光 |
これ以外に、たまに登場するフラダンサーの人。芸人ではなく教室の先生らしい。
真面目にハワイアンや、昔の歌を披露する。
桂夏丸師は若いのに、昔の歌の知識が半端ではない。私なんか全然わからない。
二ツ目の希光さんは、身分的にいろいろ雑用にこき使われいて、そのため笑顔が足りないんだって。歳は結構行ってるのだが。
なんと、途中で車椅子の春風亭小柳枝師が登場。かつてのメンバーだ。
脳梗塞のリハビリ中で、現在高座には上がっていない。
以前倒れて、その後高座に復帰したのも聞いている。
さらにその後どうなったのかを存じ上げない。だが、現在の姿をお見掛けする限り、とうてい落語のできる状況ではない。
なにしろ言葉が出ないのだそうだ。だが、昔覚えた歌だけは歌える。
端正でユーモラス、小粋な高座を務めていた小柳枝師がね。
ステージで公開リハビリである。
歌声は今もなお、渋くてすばらしい。
歌は歌えるがたまに歌詞を忘れるようで、隣のMC、真理先生が耳元で一緒に歌う。
なんだこれは。老人ホームのパーティをハタから見ているような、不思議な雰囲気。
とはいえ、大ベテランの懸命なステージ姿を観て、感動こそすれ、不快に思う人などいないだろう。
そして、ヒザ前で高座を投げ出した三笑亭可楽師も登場。年金コンビだというのだが、年金どころかお二人とも80代である。
どうみても、ステージの上のほうが楽しんでいる。
以下あくまでも、噺家とは個人的なつながりのまったくない私が、さまざまな情報を勝手につなぎ合わせて理解していることだが。
春風亭柳昇の名を、昇太師が継いでいないのには、どうやら小柳枝師の反対があるようだ。
小柳枝師は、移籍組なのだが柳昇門下の惣領でもあり、この点ややこしい。
途中からついた師匠とはいえ、小柳枝師が柳昇に心酔していた様子は、瀧川鯉昇師の書籍「鯉のぼりの御利益」にも書かれている。
生え抜きの惣領である桃太郎師や、外様の鯉昇師は、早くから昇太師に柳昇を継いで欲しがっている。すると反対があるとすれば、小柳枝師を置いて他にいない。
まさかご自分で継ごうというのではないだろうが。
反対はあるにしても、来年真打になる昇太師の弟子、昇々さんが柳昇を継ぐものと、私は決めつけていた。
だが、なさそうだ。小柳枝師がこのような状態にある中、きちんと話ができるはずもない。
襲名というもの、タイミングが8割みたいなものだし、仕方ない。
アロハマンダラーズのステージ、なかなか面白かった。ただ、真理先生が血液型漫談をやめない限り、この芝居にはもう来ないけど。
貴重な商売道具だし、やめないだろうが。
しかしアロハマンダラーズは別格としても、やっぱり振り返るとちょっと変な芝居だったなという印象。
私は決して芸協嫌いではないのだけど、落語協会より芸術協会のほうが、変な寄席に遭遇する確率が高いのは事実のようだ。
日頃来ない浅草という地にも原因がある。
先月行った、4年ぶりの末広亭は、落語の基礎に充ち溢れ、とてもしっくり来たのに。
とにかくこの日は、浅草らしさの表れとはいえ、漫談率が高すぎた。ナオユキを楽しみに来ているぐらいなので、漫談自体を否定しているということはない。
そして、ハイライトは三笑亭可楽師の投げ出し高座。
いっぽうでは、色物2組に大いに楽しませてもらったのは、いつにない経験。といいつつ、先月の末広亭もそうだったのだけど。
そして芸協の噺家の中でも、三遊亭遊馬師はダントツですばらしい。でも今度は寄席じゃなくて、両国・江戸東京博物館の会に出向きそうだ。