前座が日中の飲酒を見つけられた話(春風亭一之輔のラジオから)

春風亭一之輔師のラジオ「あなたとハッピー(金曜)」は、週に一度の私の楽しみ。
一方で、日曜の「Sunday Flickers」のほうはすっかり聴かなくなってしまったけども。
ラジオで日々のネタを喋ればその分、本業のマクラの質・量が落ちそうに思うのだが、そうなってないからすごい。
マクラのネタとラジオと、まるで違うわけでもないのに。
ネタを作るという習慣ができていると、日常のすべての事象に基づき、息をするようにネタができるようになるらしい。

リスナーから募集する「まさかの出来事」の例題として、「思わぬところで思わぬ人に会う」エピソードを披露する一之輔師。
前座の頃のある日、一之輔師は鈴本に入っていた。当時は朝左久か。
夜に横浜にぎわい座で前座を務める必要があったので、途中で鈴本を抜けさせてもらう。
前座も古くなってくるとこういうことができるのだ。仕事だから別に非難されることもない。
4時過ぎだったというから、昼席の前座として入っていて、トリの師匠より先に失礼したということになる。
横浜に行く前に、腹ごしらえしたくなった。これは別にいい。
昼下がり、御徒町の回転寿司「大江戸」に入る朝左久。これもいい。
だが、1杯ぐらいいいだろとビールをもらう。
前座はそもそも、酒飲んじゃいけないのだ。
まあ、隠れて飲むのまでダメなんていう師匠はいないと思う(自分たちだって修業時代に飲んでたのだ)。
だが、まだ仕事があるのに1杯なんて問題外。
調子に乗った朝左久、もう1杯おかわり。夜の仕事なんだからその頃抜けるはずと。

2杯やってご機嫌の朝左久、出ようとすると声が掛かる。「アンちゃんいい飲みっぷりだねえ」。
真横から、五街道雲助師がそっくり見ていたという。当然、うろたえる朝左久。
アルコールについてはとがめず、その場の会計を引き受ける雲助師。
雲助師は、朝左久が楽屋を出た後で高座に上がっていた人。追いつかれてしまった。
一之輔師は語っていないが、時間的に雲助師は、トリの高座を終えてきたものと思われる。
しかもこの後にぎわい座でもって、雲助師にも出番があったそうな。
にぎわい座の楽屋で、「先ほどはごちそうさまでした」。雲助師が「高座の前に打ち上げしたのは初めてだ」。

いい話。
しかし一之輔師も、御徒町で一杯やってるとは大胆不適。東京駅とか、ちょっと離れればよかったのに。
ちなみに落語界には、一緒にではなくたまたま同じ場所で飲み食いしていただけでも、先輩が払ってくれる風習がある。
なので、先輩がいそうな飲食店に狙っていく後輩もいるらしい。
前座の頃の朝左久も、連れ立って先代小せんのいそうな、中華「珍満」を襲撃したのだった。大勢で現れた前座を見て、「勘弁してよ」という小せん。

先日、志らくにマウンティングされ続けの対談で、将来なりたい噺家像を語っていた一之輔師。寄席の浅い出番に出て、軽く喋るのが一日の仕事だという。
その際、先代小せんがロールモデルだと勝手に想像したのだが、実際にその名が出てきたのでなんだか嬉しくなった。

ラジオの冒頭では、所属するナベプロの悪口を言う一之輔師。
先日東京FMでJUJUと対談したという。あいにくこれは聴いてない。
誰もタクシーを呼んでくれず、深夜2時に東京FMの玄関に放り出された話は、前週のあなたとハッピーで喋っていた。
だが、新たな事実を知る一之輔。東京FMのギャラはタクシー代込みだったのだ。
だから悪口を言った東京FMにはお詫びするが、ナベプロのマネジャーもちゃんと伝えてくれって。
ナベプロ入りした一之輔師だが、いまだに落語のマネジメントは一切渡していないらしい。
落語の仕事を渡すと、小さな会など切られてしまうからだと。芸能プロは切るのが仕事。
でも二ツ目時代を支えてくれたお客さんの仕事は、安いギャラでも受けたいのだろう。
ナベプロとしては、落語の仕事を渡さない一之輔が気に入らないのではないかだって。ラジオで喋るには、もうギリギリのネタ。
志らくみたいに、落語まで全部マネジメントしたいのだろうと。

今日は人のラジオだけで記事書いてしまいました。
一之輔師匠、どうもすみません。

(2020/8/23追記)
Sunday Flickersのほうも2週間まとめて聴いてみたら、一之輔師、16日の放送でもナベプロの悪口言ってました。

 

作成者: でっち定吉

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