蚊いくさ | 遊京 |
臆病源兵衛 | 馬久 |
鰻屋 | 竹千代 |
フリーランスの私、なんの前触れもなく忙しくなってきた。落語の仕事もある。
ともかく、暇なら出かけるし、忙しくてもやっぱり短い時間、気分転換に出かけるのであった。
土曜日は、ちょっといいメンバーを聴きに、昨年11月振りの神田連雀亭。落語協会ふたりに芸術協会の桂竹千代さん。
遊京、馬久のふたりは、先月末いい高座を聴いたばかり。
竹千代さんは、調べたら1年振りで驚く。それまで続けて聴いていたのに。
一時期やたら来ていた神田連雀亭、来なくなった理由はいくつかあるのだが、この日のメンバーなら満足度が高そうだ。
二ツ目のショーウインドーとしてではなく、完成系だけいただこうと思ってやってきたのである。
現在連雀亭は、コロナ禍により定員19名なのだが、満員になった。
久々なので、「見たことのない常連さん」がいたりなんかして。
秋葉原から行ったのだが、アキバを歩く人間は、ぶつかりそうになってもよけないなと実感。
意地を張ってよけないのではなく、ふらふらしてる。歩きスマホだけが理由じゃない。
万世ビルの中央通りを挟んだ向かい、小さな売店があったところに、カツサンドの自販機が設置されていた。
連雀亭、休業中に改装があって、高座と客席の間にアクリル板が設えられている。
テケツも同様。
テケツにいたのは馬久さん。本来はトリの人が入るのだが、トリの竹千代さんはまだ到着していなかったようだ。
ひとりで来ている女性に、話しかけているおじさんがいる。どこかの会で会ったということなのだろう。
おじさん、通路を挟んで座っていたくせに、「どうも見にくいな」とかなんとか言って、女性のいる列のほうにわざわざ移ってくる。
おやおやと思ったが、結局その女性に逃げられておりました。
この記事に書いたことを思い出す。
開演前の諸注意は馬久さん。この後、昼席まで居続けの方いますか?と問うと、2人の手が上がる。
遊京アニさんに訊けと言われたって。同期のふたりは昼席にも出るのだ。
トップバッターは入船亭遊京さん。
マクラが面白かった。
この寄席は、換気がばっちりです。高座の後ろも開いているし、ほぼ野外ですだって。
アクリル板があるので飛沫感染対策はばっちりだが、お客さんの笑い声がちょっと減って聞こえるのだそうで。
そして、自分の声は、張って話すせいもあり、非常によく返ってくる。
自分の姿がアクリル板にうっすら映っていて、なんだか寂しくなるんだそうな。
自粛期間中は出かけられない。先輩の三遊亭天歌さんに電話をしてみたら、遊京さんの電話に感激してくれる。
もう3日間着替えてないし、どこも行っていないんだよだって。
その後、飲み会を企画した。やはり先輩の春風亭一蔵さんが、自宅に招いてくれる。
天歌さんにも声を掛けたのだが、なぜか当日体調が悪いとキャンセル。
一蔵夫人を交え楽しくやっていた遊京さんだが、その様子を天歌さんにLINEしても、未読のまま。
体調が悪いと言っていた天歌さん、ひょっとするとコロナに罹ってひとり死んでるんじゃないかと心配する、遊京、一蔵。
相談の上、深夜だがタクシーを飛ばすことにする。
初めて行く家なので、天歌さんの部屋がA棟なのかB棟なのかわからず、郵便受けを除くと部屋はわかったが、持続化給付金の案内が乱雑に放り込まれている。
天歌さんが出ないので裏口から声を掛けていたら、一蔵アニさんの「ふざけんなよ!」という声がする。ちょうど天歌さんがタクシーで帰ってきたのだ。
女性と飲んでいたのだと。そして服も買ってもらったんだって。
楽しいマクラと何の関係もない、蚊いくさ。
また珍しい噺。私は昨年、三遊亭好の助師から初めて聴いた。
働かず剣術に熱中する熊さん、質屋から蚊帳を出してこれず、坊やが刺されまくっている。なんとかしろと怒るかみさん。
いったい誰に教わったのかわからないが、遊京さんのものも、好の助師とおおむね同じ。
だが、クスグリを絞り込む遊京さんだけあって、「俺、かみさんが怖いから剣術習ってるのに」という、大受けしたクスグリはない。
蚊を相手にいくさを挑む、くだらない噺。
くだらないが、大真面目に蚊と戦い、そして敗れるのであった。
実に軽い遊京さん、いいですね。