伝統と捏造のあいだ(上)

立川志らくがツイッターで叩かれ、そして上目線で反論をしている。既視感がとても強い。
毎度毎度のこと。いい年こいてつくづく成長のない人だなあ。
最後は必ず、「自分が正しい。正しくないとしてもお前らよりは人としてましだ」と勝利宣言して締めるのである。
この目的達成のためには、あらゆる理屈を引っ張ってくるが、その理屈が通ってないからますますバカにされるんだけど。

私は、この人が落語界をしばしば勝手に代表するのが気に入らないだけで、視ないテレビのほうは関係ないし、別にどうでもいいと思っている。
だが低視聴率番組のほうも相変わらず迷走している様子はうかがえる。
ちなみに、「志らくさんが好き」というファンのツイートは、すべて「志らくさんが私の好きな○○さんを褒めた」というものばかり。
中日ファンや競馬ファンは別に、志らくがファンだからといって喜びはしないようだが。

今回も、扱うネタはなんだって同じこと。いつもの茶番。
だが、今回の騒動の中身が「江戸しぐさ」だったので、ちょっと見逃せないなと。

私も江戸しぐさについては、「世の中の落語を探す」シリーズで取り上げたことがある。
もっとも、ネタとして取り上げただけ。
江戸しぐさのインチキ振りを自分の見解で暴いたわけでもなんでもない点、偉そうなことはいえない。
原田実氏の著書もいまだに読んではいないし。読むつもりだけど。

その原田実氏もツイートしている。

ああ、三遊亭竜楽師の名前が。ニュートラルな書き方ではあるが、決して褒めているわけではない。
志らくはもっとも嫌いな噺家のひとりであるが、竜楽師はもっとも好きな噺家のひとり。極端なふたりが江戸しぐさでもってつながってしまった。
竜楽師が江戸しぐさの関係者であったことは、私は「世の中の落語を探す」を書いた後で知ったのだ。
それ以来、実にもってウズウズし続けている。
世界を飛び回って公演している竜楽師、古き良き日本文化を常に意識している人だ。
そこからすると、江戸しぐさのような、日本文化の理想にたどり着くのはある種必然なのかもしれない。
でもなあ、「江戸っ子大虐殺」から始まった偽歴史だからなあ・・・江戸しぐさ反対派は、マナーとしての価値に基づきどうたら言ってるわけではなく、マナーを成り立たせるための架空の体系を批判しているだけである。
そして江戸しぐさは反対派のロビーにより、ようやく滅んだところである。志らくが批判されているのは、その滅んだ事実を認識していない無知によるものでもあるのだ。
幸い、高座で竜楽師が江戸しぐさを語ったところには出くわしていない。万一出くわしたら、さすがにファンでい続けられるかどうか。
この師匠のマクラは、たゆまぬ文化比較から生み出された、深い思索に充ちたものだ。今後も聴いていきたいのだけど。

さて、江戸しぐさを滅ぼした貢献者、原田実氏のWikipediaを見ていたら、思わぬ過去が書いてある。

<パシフィック・ウエスタン大学博士課程修了。なお、パシフィック・ウエスタン大学は非認可の学校で判決によって閉鎖された(ディプロマミル)。>

ディプロマミルというのは、学位商法。金を払って海外の大学の学位を得ることをいう。
つまり、インチキ文化を糾弾している人が、インチキ学位の持ち主だったのだ。あらら。
思わぬところで黒歴史が出てくるもんだ。
別に原田氏は、この肩書を利用して現在仕事をしているわけではない。
それでもかつて肩書として使っていた事実があるからWikipediaに載せられ、消してもらえないのだろう。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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