落語協会の次期会長を考える

妄想により一日分の記事を埋めます。

落語協会は、柳亭市馬会長が早いものでもう3期務め上げ、4期目に突入している。
2014年に会長になって6年となる。
別に評判は悪くない。実務型会長として調整を進め、コロナ禍の寄席の中止と再開にも尽力している。
しかし、会長をいつまでやるのだろうか。
落語協会の会長は、最近は短期政権だ。
24年務めた先代柳家小さん会長の後は、こうだ。

  • 三代目三遊亭圓歌・・・1987年~2006年
  • 五代目鈴々舎馬風・・・2006年~2010年
  • 十代目柳家小三治・・・2010年~2014年
  • 四代目柳亭市馬・・・2014年~

馬風、小三治は2期4年で勇退している。
馬風師は「会長への道」を実現したのでもういいということだろうか。
そして、たぶんなにか企みがあったと思うのだが、「紀州」作戦で小三治に話を持っていった。
ところが断ると思ったら受けられてしまった。そんなところだろうか。

ともかく、いったん三遊亭に移った政権が、最大派閥の柳家に戻り、すでに14年になる。
他派の不満もいい加減溜まっているはずである。
もっとも、先代金原亭馬生や古今亭志ん朝も副会長を務めていて、ゆくゆくは会長の路線も敷かれていたはず。だが早逝してしまったので仕方ない。
さて、基本的に落語協会の会長は、副会長を務めると転がり込んでくるとされている。
馬風師も、市馬師もそう。
小三治師は副会長をやっていないが、これは当時、協会が定款にない副会長を勝手に名乗っていたのを指摘され、置けなかったはず。これは例外。
もっとも、先代馬生亡き後、小さん会長の下で副会長になった六代目蝶花楼馬楽について、会長になるとは、周囲も本人も思っていたはずはない。
実際在任中に亡くなっている。だから巡り合わせもあるだろう。
とにかく普通に考え、市馬会長もあと1期、2期ぐらいで勇退しても不思議はない。本業でもう一花咲かせたいと思うところでもあろうし。
で、そのときは正蔵会長が誕生するのであろうか? そう思う人は多い。
柳家長期政権からも離れられる。
正蔵師は市馬師より先輩なのだが、歳は下なのでそんなに不自然な継投とはならない。

しかし、正蔵師が会長のガラか?
私は師の落語については、「こぶ平の分際で」とそしる古いファンよりも、ずっときちんと評価をしている。
しかし協会の顔になるキャラかということだ。
林家九蔵問題でも現れたのだが、この師匠はあまりにも、他協会・団体とのパイプが細すぎる。
鈴本演芸場のパイプが強いのはいいが、鈴本は落語協会専用の寄席である。
円楽党は芸協への統合を望んで久しく、立川流は内部崩壊が著しい。
今後落語界を見据えていくにあたり、正蔵会長ではちょっと不安が多すぎるのである。

私が勝手に思うかどうかでなくて、落語界にもそういう見立てはあると思うのだ。
というわけで、他の人選があるものと考えている。
会長・副会長の下を見てみる。常任理事というポジション。
これがこのたび増員されて5人となった。すなわち、

  • 柳家小さん
  • 柳家さん喬
  • 入船亭扇遊
  • 林家たい平
  • 柳家喬太郎

後の3人が新常任理事である。
超ベテランの扇遊師は別にいい。「たい平」「喬太郎」のどちらかが会長候補なのだと思いませんか。
たい平師が先輩だが、二人は同時に抜擢真打になっている。
歳は見た目通り喬太郎師が上。55歳のたい平師、実に若々しい。

散々引っ張ってきたのだが、私の結論。
たい平師こそ、ここ数年のうちに落語協会のトップを務めるのにふさわしいのではないか。そして、それを見越した協会内の動きがあるのではないか。

たい平師は最近、落語界のスポークスマン的活動が非常に目立つ。
今年はなかったが、アイディアマンであって、謝楽祭での毎年の活躍ぶりは特筆すべきものである。
そしてこの人には笑点人脈がある。
芸術協会のトップが昇太師で、落語協会がたい平師というのは実にしっくりくるのだが、どうでしょう。
この師匠が会長にふさわしい理由は他にもある。
ひとつには、海老名の林家から出ていること。
落語に専念するようになってから、正蔵師は妙に陰キャラ。その正蔵師に変わる資格があるたい平師。
海老名のおかみさんも、たい平師が三平の後ろ盾になってくれれば助かるのではないか。
そして同時にたい平師、海老名の一門でありながら、おかみさんや師匠・こん平からは結構ひどい目に遭わされてきたらしいこと。
協会員の反感を買うポジションにはないのである。

欠点もある。
ひとつは弟子がいないこと。あずみさんは色物だし。
弟子を採る気はあったのだが、落語協会に入門の年齢制限ができてしまったので、やむなく志願者を円楽党に紹介したのだ。
これが好楽門下の鯛好さん。鯛はたい平のタイだそうで。

それからたい平師、タレントとしては素晴らしいのだが、落語のほうはそれほどでもない(個人の感想です)。
落語協会の会長なら、落語は達者じゃないと。
たい平師の落語、楽しいのだけど面白落語を掛ける人たちの中に埋没してしまっている。

喬太郎師ではいけないのか?
別にいけなくはない。この師匠も、他協会・団体とのパイプは太い。弟子はいないけど。
喜多八師亡き後の落語教育委員会には、兼好師が入ったぐらいだ。
喬太郎師はなによりも、落語が圧倒的に上手い。
ただ、柳家の人でもあるし、よくよく見ると会長っぽくない気もしてくる。

というわけで、丁稚定吉は「たい平会長」を強く望むものであります。望むだけですが。

(追記:たい平師には息子の弟子がいるとのご指摘をいただきました。そういえばそうでした。ありがとうございます)

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. いつも楽しく拝見しております。
    たい平師匠ですが、弟子で実子のさく平さんが9月から前座になっているようですね。
    高座ではお見掛けしたことないのですが、
    ちょいちょい情報が出てきますね。

    いずれにしても弟子の少なさということでは変わりないところですが・・・。

    どうも、失礼いたしました。

    1. JAKOさん、いらっしゃいませ。
      そうでした。テレビで息子の入門やってました。
      私も放送自体は当ブログで取り上げてたのに。
      これを機に、たい平一門が大きくなる可能性もないとはいえないかも。
      息子のさく平さんは、もう落語協会の香盤に載ってるんですね。よく見たら、正蔵師匠の次男と同期じゃないですか。

      またどうぞお越しください。

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