亀戸梅屋敷寄席20(上・三遊亭好太郎「禁酒番屋」)

今日も朝の更新ができなかった。
そんなにいつもいつもネタないですよ。
ネタはやはり現場で作るのが、一番いい。
仕事をほったらかして昨年9月以来の亀戸へ。前回と同じ、好楽師の主任。
終わったあと、亀戸のファミマで書いています。撮って出し。

他の選択肢としては、池袋の新作台本まつり、鈴本の披露目、それから翌日水曜日、三遊亭遊馬師のお昼のツキイチ落語会などがあった。
池袋は、一度行くつもりだ。

緊急事態宣言も明けたし、ツイッター情報によると最近の亀戸は満員が続いているとのこと。
なので急いで出向いたが、開場時の亀戸は極めて平穏であった。つ離れはしている。
なにしろ年末、円楽師を聴きにきて札止めだったもんだから。
急いでいるわりに、電車を二度乗り間違えた粗忽の私。
目つぶっても行けるところだと思っているときが、危ない。
そのうち、末広亭行こうとして池袋に着くんじゃないかという気がする。
こういうチョンボでもって、「堀の内」の変なリアリティを知るのである。

受付は、前座の楽太さん。先週連雀亭で久々に聴いたばかりのらっ好さんが手伝っている。
今日の顔付けはちょっと面白い。
仲入りが好太郎師。その前がらっ好さん。
つまり、師匠、弟子、孫弟子の揃い踏み。これに対する言及は特になかったけど。
弟子と孫弟子は、それぞれ一番弟子だ。
好太郎師も開演前に到着。

子ほめ 楽太
だくだく らっ好
禁酒番屋 好太郎
(仲入り)
犬の目 楽市
ぞろぞろ 好楽

 

前座は楽太さん。

ずいぶん大きな声で、はっきり喋る。前座が求められる修業に忠実なのだろう。
「子ほめ」は、円楽党では、意外と聴かない。次のらっ好さんから素晴らしいものをかつて聴いたが。
よく聴く子ほめと微妙に違う。
八っつぁんは隠居のところに、最初から人の褒め方を教わりにきている。
竹のところで赤ん坊を褒める前に、かみさんの赤い腰巻きめくったりしている。
「かやつりたい首つりたい」で落とす。

続いてらっ好さん。
楽太さんをいじる。18歳のかわいい子なんですと。
落語大好きで、圓生が大好きなんです。
覚えたまんまやっているんですけど、この間「寄合酒」のマクラで、「大勢で呑むお酒は楽しいですね」と語っていた。
ダメだよ未成年は呑んじゃ。

今朝、大師匠好楽の家に行って、CDを受け取って運んできましたとらっ好さん。
CD売ってますのでよろしくお願いしますとのこと。
CDはこのたび出たシングル「熱燗二本」。「芝浜」も収録されている。

三ぼうのマクラを振る。泥棒の噺である。なんだろうと思ったら、聴いたばかりの「だくだく」だった。
ちょっとばかり残念だったが、でもいいデキだし、とにかく楽しい。
必ずや、この人の代表作になるであろう。

先生の道具箱を持つ八っつぁんの所作が、先ほど語っていた、大師匠のCDに掛かっている。
たまたまなのか狙っていたのか。

ニコニコしながら先生と語る、らっ好さんの八っつぁん。
客も実に楽しくなる。
客をリラックスモードにしておいて、先生に畳み掛けるように、絵の指示をしていく八っつぁん。
先日書いたとおり、よく情景が見えるいいシーンなのだが、それ以前に、溢れる言葉がとても心地いい。
落語とは、五感を駆使する総合芸術である。それが腑に落ちる。
前回と違うのは、掛け軸。「CD発売中」と書かれている。

先生が再登場して、楽しくフィニッシュ。

走れコータローの出囃子に乗って好太郎師登場。
マクラは早々に、酒の噺に入る。
一度聴いた親子酒かと思ったら、禁酒番屋。
柳家の型である。落語協会の師匠に教わったのだろうと。
しょんべん屋のくだりで、べろべろの侍がしつこい町人に呆れ、一旦「返してやるから持って帰れ」という。
柳家小里ん師のものを聴いたことがある。先代小さんも、たまにこの型でやっていたそうで。
返されちゃ復讐にならない。ちょっとアセるのだ。

ただし、柳家の師匠が絶対やらない上方の型が入っている。
みんなでしょんべんを徳利に詰める際、女中のお清まで一緒に入れている。
番頭さんが呆れて、しにくいだろとお清に声を掛け、漏斗があるから持ってきなさいと。
最後は、ちょっと量が足りないというので、番頭が自ら詰めていた。
ちなみに上方だと、本当にしょんべんに口を付けてしまうまでやるが、これはなし。

話芸というものは面白いものだと改めて思った。
すでに、2人の手代が酒を巻き上げられている。
これにより、門番が酒好きであり、いい呑みっぷりであることまでが詳細に描写されている。
すると、3人目が持ってきたもの、本当にしょんべんであることを客は知っているのに、門番が丁寧に試飲しようとする際に、一瞬本物の酒を連想するのである。
被害者の気持ちになりすぎると嫌な味わいが残るかもしれないが、そこまでではない。
噺が立体的に膨らんでいいものである。

どんなタイプの禁酒番屋、あるいは上方の禁酒関所でも、近藤さまに無理強いされて酒を持っていく羽目になる。
さらに好太郎師の近藤さま、番頭が承諾してくれないので腰のものに手を掛ける。まあ、シャレなんだろうけど、すごい実力行使。

続きます。

 

親子酒/禁酒番屋

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。