古今亭圓菊復活と来春の落語協会新真打

古今亭圓菊の名前が復活するそうな。
二代目の息子、菊生師が三代目を継ぐのだと。
圓菊の初代は、数多くの名を名乗った志ん生。
志ん生をおぶって寄席に連れていった二代目は、古今亭の総帥として2012年に亡くなった。
私もご存命中、何度か聴いた。くねくねする色っぽい人。

一代で大きくなった圓菊の名、いずれ復活すると思っていた。継ぐのは菊生師だとも。
名跡を「血で継ぐ」ことをよしとしない人もいる。
だが名跡とは相続するもの。先代の遺族に頭を下げて、相応の対価を支払って襲名する人が多いのはその性質による。
血縁で名前を持っているのが噺家ならば、その名を自分で継ぐのは道理といっていい。

さみしいことに、通常行われる50日間の披露目なし。
10月31日の鈴本余一会と、11月上席の二代目圓菊追善公演の主任を務めるのみとのこと。
秋から名乗るというので急な話だが、披露目がないからこそ、このスケジュールでできるのだともいえる。
たぶん来秋にもその次にも、落語協会ではきっと何かの襲名があり、粛々と準備が進んでいるのだ。その邪魔はできない。
誰の襲名だって? いろいろあるんじゃない?
談洲楼燕枝とか、江戸家猫八とか。
菊生師が真っ先に配慮しなきゃいけないのは、菊之丞師の志ん生襲名。たぶん数年後にある。

披露目がないとは、どういうことか。昨年も金馬襲名があったから、コロナは関係ないだろう。
襲名自体は、名前を持っている人がやりたければ、できる。
だが、寄席が披露目の興行をしてくれないということ。
菊生師では興業が成り立たないということなのだろう。
それでも一門の協力があるから、かろうじて恰好がつく。

東京の場合、襲名の大部分は真打昇進時に行われる。
昇進時以外で襲名の披露目ができる人は、腕達者か話題性ある人に限られるのだ。
父の名乗った柳家つば女を襲名したいのが柳家小きん師。小きん師も、寄席が披露目をしてくれることはないだろう。
それでも襲名しようと思えば、名前は持っているのでできるのである。ただし「襲名しました」という告知が出るだけ。
今回の披露目なし襲名が前例となり、数年内に「披露目なしでいいや」と襲名を決行しそうな気がする。
さらにその後も、二世落語家を中心にそういう襲名が続きそうな気までする。

参考記事:襲名と空き名跡

落語協会のもうひとつのニュース。来春の新真打。
以下の4名。

  • 三遊亭美るく
  • 春風亭ぴっかり
  • 鈴々舎八ゑ馬
  • 林家はな平

早速、春風亭ぴっかりさんだけ話題になっている。
あとの3人がやや気の毒だが、まあ、ぴっかりさん相当の人気者だから仕方ない。
笑点特大号の女流大喜利でも、全体を盛り上げるのがとても上手く、改めて感心したところ。
ぴっかりさん、昨年の池袋で「元禄女太陽伝」という新作落語を掛けていた。花魁の役を演じていたのである。
世にも珍しい、廓噺を掛ける女流。いろいろな顔を持つ中で、私はこの部分に期待しています。
「徳ちゃん」の化け物みたいな花魁を演じて欲しい。

ぴっかりさんは、このままの名で真打ということはあり得ない。
亭号も、春風亭のままとは考えづらい。兄弟子二人が「橘家」「五明楼」だから。
兄弟子たちは既存の名前の襲名だが、女性の名乗った名前なんてないので、オリジナルになりそう。
それかいっそ二代目小朝を襲名して、師匠は隠居名になるか。
隠居名に、金発亭槍翁なんてどうでしょう。きんぱつていやりょうと読みます。

最近ぴっかりさんは「有吉反省会」に、そして師匠・小朝は「徹子の部屋」に出演していた。
ネタにできそうなので、保存している。
小朝師の活動については、当ブログでは厳しめなのだが、それでも徹子の部屋はなかなか面白かった。昔視ていた「三匹が斬る!」のエピソードなどあって。

昇進組のうち個人的には、You Tuberの林家はな平さんがとても面白い。高座は一度しか聴いたことないのだけど、とても馴染みがある。
はな平さん、真打昇進時に名前をどうするか考えていると、聞くか読むかした。
この一門は名前を変えないことで有名だから、そのままの可能性が高い。
ただ、上の兄弟子にならい「はな蔵」になる可能性はある。師匠・正蔵に合わせて。

三遊亭美るくさんの姉弟子の粋歌さんが、弁財亭和泉で真打昇進したばかり。師匠(歌る多)の意向があったようなので、美るくさんもこうなりそう。
またしても、オリジナル新亭号から考えるのだろうか。
前座のときが歌る美、二ツ目で美るく。なんでなのか知らないが牛に関連した名前を付けている。
牛に関連した亭号? じゃ、安楽亭だな。

鈴々舎八ゑ馬さんはしばらくお見掛けしていない。
東の上方落語である。
芸協には鶴光師の弟子が多数いて上方落語もよく出るが、落語協会では珍しい。なかなか貴重なのだけど。

作成者: でっち定吉

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1件のコメント

  1. 芸術協会の春馬改め六代目三遊亭圓雀襲名(平成30年)の際も、口上付きの披露興行はありませんでした。その時は、襲名記念として9月下席末廣亭、10月上席後半浅草演芸ホール、10月中席後半池袋演芸場の主任を勤めていました。

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