トーク配信「三遊亭天どん × 春風亭一之輔」

寄席が休止になった連休だが、意外とブログのネタは続いている。
寄席がなくても、でっち定吉らくご日常&非日常は営業中。おかげさまで、アクセスも増えるいっぽうです。

今日は4月30日の、落語会中止に伴う「天どん × 一之輔」の配信トークを取り上げます。
私の想像を加えてネタにさせてもらいます。

春風亭一之輔師については毎週ラジオ「あなたとハッピー」(金曜日)を楽しみに聴いているのだが、そちらでは最近、前に出ないで回す役割に徹している。
それはそれで見事だが、今回久しぶりに、前面に出て喋りまくる一之輔師を見ることができた。
とんがった噺家の代表、三遊亭天どん師がフォローにまわるという、珍しい展開。
「落語より面白かった」というと失礼なので、「相当に面白い両師の落語よりさらに面白かった」と言わせていただく。
落語会にはよくトークコーナーがあるが、面白いものばかりではない。

コロナ禍の寄席休業の被害に遭う落語界の諸師を応援する内容。
話題はまず、落語協会新真打について。
ここはなにも、危ないことは言ってない。
ただし、11日の国立初日がなくなり、披露目が1日なくなる三遊亭れん生師の師匠、円丈について天どん師が「師匠が口上に出たくないって言ってるんだよ」とサラッと。
師匠、体調不良ということになっているし、実際それで休んだ会もある。
だが、口上に出られないほど悪いわけではなさそうだ。単にれん生師が、師匠をしくじっている様子。
わん丈さんの披露目なら、なんとしてでも出ると思うが。

毒舌にまぶして、子供向けの会が飛ぶことをしっかり嘆く一之輔師。天どん師に、自分が落語好きになった頃を思い出せと。
高校生時代の一之輔師、初めて寄席(末広亭)に行き、トリが柳昇だった話はよくしている。この日、最初に聴いた落語は「でっどぼうる」だったと。
現在の桂米多朗師。

お前、ホールとかでやるから「笑い待ち」し過ぎだよと天どん師に指摘される一之輔師。俺は「笑い待ち」しないほうだよと言い返す。
それはいいが、なぜか「小三治師匠って結構笑い待ちするよね」と追加する一之輔師。世間では「間」だと言われてるけどと。
思わず快哉を叫ぶ。小三治師は、「作為を排除して噺そのものの笑いを引き出す」という評価を受けているが、私は、それは本当かなといつも思っている。
むしろ、相当に作為のある、アンナチュラルな高座だろう。ウソをつかなきゃ別にいいのに。
抜擢で真打昇進を待たされた天どん師は、以前から高座で会長だった小三治の悪口を言っている。だが、抜擢の恩恵を受けた一之輔師が、小三治をdisるところがすごい。

道楽亭(新宿)だけはGWもやってるのだそうだ。私はここはまだ行ったことがない。
その一之輔師、道楽亭には出ていない。
道楽亭へは、以前菊之丞師がツイッターで謎の怒りをぶつけていたと記憶する。結構、揉めてる噺家さんがいる様子。
一之輔師も、揉めていないにしても避けているのだろうか。
なにか不自然な流れだが、無理にとりつくろわない両師。

配信では言っていなかったが、実は巣鴨スタジオフォーもやる予定。ここで紹介すると迷惑かもしれないが。
私は宣言解除のあとで行かせていただきます。

先日取り上げた、桂文治師の怒りのツイッターもニュースにする。芸人仲間への苦情のほうではなくて、政府と都への怒り爆発のほう。
芸協の師匠だが、こういうところで師が落語界を代表している様子がうかがえる。

お前は「鬼丸みたいに不謹慎だ」と天どん師。「不謹慎の国から不謹慎を広めにきたんだ」と反撃する一之輔師。
○○の国から○○を広めに、は、古典落語でたびたび登場する便利なフレーズ。「親切」「強欲」「汚い」などが入る。

音が途切れる放送事故を挟み、寄席の営業継続と休業について語る両師。
寄席の大英断、粋だとヤフーのコメントで誉めそやす人に限って、寄席なんか来てないよと一之輔師。これはまったくそうだ。よく行く人のほうが、ちゃんと向き合って捉えている。
そしてこの日のハイライト。
同じ事務所所属の志らくを糾弾する一之輔師。
「社会生活の維持に必要」は、なんとかひねり出したものなのに。そこをネタにする志らく。
さらに「寄席に出てないくせに」と一之輔師。天どん師が、お前が先に言ってくれてよかったとそこに乗っかる。
立川流が寄席に出ていないのは事実であり、むしろそれを志らくは誇っている。だから「寄席に出てないくせに」は実のところ、本人には刺さらない。
ただし、日ごろから落語界を代表しているような態度でいたら、同業者に嫌がられるのは当たり前。
志の輔、談春といった師匠を嫌う協会員はいない。
私も、志らく発言の卑怯さについて書いたところなので、非常に喜んだ。

志らくに対し「寄席に出てねえくせに」は伯山先生も言っていたようだが、それはスルー。
配信でもっていろいろな同業者をいじるのに、伯山だけは、名前が一度出たのにスルーするふたり。むしろ不自然な進行だが、理由はよくわかる。
いじると喜んで乗っかってくるから、ウザいよね。意図しないパス出しになってしまうのだ。

加藤官房長官の「よせき」発言もさらっと。
まあ、当ブログにも「よせき」で検索してくる人がいますよ。そんなもんです、世間なんて。
「○席」とかいて、「せ」と読む言葉って、「寄席」だけだし。

披露目が延期になった芸協新真打について。
世間では東大出の昇吉師ばかりもてはやしているが、一之輔師は小笑師が面白いといじる。さすが。

メール紹介もまた、最近書いたばかりの「教え魔」に関するものだった。
女性が寄席や落語会に行くと、話しかけてきた客が、女性の好きな噺家をけなし出すという。
いい歳こいて人にマウントを取りたいただのクソジジイ。もちろん相手にする必要はないのだが、相談内容は「負けない強い心が欲しい」というもの。
天どん師は、こういうおじさんはオフェンスしかなくて打たれ弱いから、先に攻撃したらどうだと。それもいいね。

次の「効果的なツカミ」を尋ねるメールから話を広げる一之輔師。
一朝師匠に初天神を教わったたけ平師が、アゲの稽古の際、冒頭の「イッチョウケンメイ」を自ら話しだして、一朝師に止められたそうで。
たけ平師も素直な人だね。
これ、いいマクラになるのにここで話すとは贅沢。

話は天どん師の「なんだよー」とか、ELT大好きの話とか、わさび師のヘアスタイルなどにさらに広がっていったが、もう満腹。

それにしても、一之輔師とは見解が実に一致するなあ、私。
まあ、実際に会って話す機会でもあったら、師に一撃で嫌がられる気がするけど。

作成者: でっち定吉

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