アニメ「昭和元禄落語心中」に出てくる落語につきいろいろ書いています。ついに最終回。
助六とみよ吉の葬儀を出し、東京に戻った菊比古。
「異論のない襲名はそうそうない」と協会の会長に、八雲襲名を強く言われる。
確かにそうで、いい名前が欲しいと思ってもすんなり継げると限らないのは、現実の世界での「三遊亭圓生襲名問題」をみればおわかりのとおり。
権利を持っている人に、大枚はたかなければならない場合もある。そもそも、ちゃんとした権利だかなんだかわかったものではないが、法律上の権利だけで割り切れはすまい。
先代八雲は、菊比古が葬儀を出したのをみればわかるが跡継ぎがいなかった。おかみさんも先にお亡くなりだ。
ということは、噺家でない一般人が名跡を持っていて、ああだこうだいうことはないのである。
「八雲」の名前を持っているのは菊比古で、本人が継ぐと言えば実力的にも反対はない。
菊比古が「助六に八雲を継がせたい」といえば、これは反対はあっただろうがそれでも恐らく押し切れたのだ。第十二話で、菊比古が八雲に「東京に帰って八雲を継ぎなさい」と言っていたのは、根拠のない話ではなかった。
ちなみに、「有楽亭助六」のほうは名跡ではないが、この名前も助六死後、当然八代目師匠が持っていると思われる。だから、与太郎が助六を継ぎたいと言ったとき、八代目師匠が名前を与えられるのだ。
野ざらし
サイサイ節を泣きながらうなる小夏。
爆笑落語なのに。
死神
落語と心中する決意をして高座に上がる、菊比古改め八代目八雲。
「野ざらし」と「死神」はこの物語の節目ごとに出てきますね。「野ざらし」が助六のテーマで、「死神」が八雲のテーマだ。
ここから現代に戻る。与太郎は真打昇進が決定。
松田さんの年齢からして八代目師匠は65歳くらいか。すると時代は平成一桁くらい。
寄席が一軒になってしまったというが、これは現実とは違うパラレルワールドだ。
テーマ的に理解はできるが、ずいぶんまた、極端な状況を設定したものではある。まあ、うっかりするとそうなってしまいかねない演芸ではあるだろう。
浮世床
「こんぴら船」に乗って与太郎登場。現実の世界では、桂米丸師と柳家権太楼師の出囃子だ。協会が違うので同じ出囃子を使えている。
メクリには「有楽亭与太郎」とある。現実の「寄席」では亭号は書かず、「与太郎」だけとなる。ホール落語はまた別。
短く刈った自分の頭から床屋のマクラ。噺の本番はなし。
野ざらし
小夏のリクエストで個人的に語る与太郎。
乱暴な八五郎はいかにも合っている。
野ざらしを聴き、「助六の血を残したかった」と涙を流しながら妊娠を報告する小夏。
現実社会にも、こんなことを言って自分の息子を噺家にする女性がいますね。落語は血でやるもんじゃないと思うが。
「昭和元禄落語心中」をwikipediaで改めて調べてみたが、第三話に登場する噺が「明烏、宮戸川、黄金餅、あくび指南、野ざらし、包丁」と書かれていた。字は「庖丁」のほうがいいと思う。
「明烏」「宮戸川」なんて出ていたかなと思って再チェック。このふたつは、「はなし塚」に埋められた噺の代表格として、名前だけの登場でした。
そして、私が当ブログに書いた「子ほめ」と「蛙茶番」がwikipediaには抜けている。
まだチェックできていない噺がともにあると思う。音がなく「仕草」だけ出ているのが結構あるのだけど、仕草だけではなかなかなんの噺かはわからない。でも、なんだかわからない噺を雰囲気だけ適当にやっているということはないはず。
これは今後の宿題にさせてもらいます。
昭和元禄落語心中第一期に出てくる落語のレビュー完了です。おつきあいありがとうございました。
第二期の放送を楽しみにするとします。