アニメ「昭和元禄落語心中」の落語(助六再び編)/第一話

ついに「昭和元禄落語心中」第二シーズンが始まりました。
第一シーズンは、終わってからレビューを始めました。今回はリアルタイムで、劇中の落語についていろいろ書いていきます。

有楽亭助六襲名披露、お練りのシーンから。
現実世界では、めったにあるものではない。当代林家正蔵師が襲名時にやっているが、真打昇進時にお練りをやったのは、なんと当代林家三平だけらしい。合掌。

祝儀を持って楽屋を訪ねてきた円屋萬月が、上方落語の現状を嘆いている。上方でもついに寄席がなくなってしまったと。
現実世界では、上方では寄席ははるか昔に消滅している。その後、物語の時代のあと、2006年に天満天神繁盛亭が復活する。
嘆きを受け、八雲師の受け売りで助六答え、「落語は共感を得るための芸です」。
「笑わせるだけの芸ではない、共感は時代で変わらない」
そうですね、まったく。

つるつる

高座に上がる八雲師匠。
「あんな与太郎のヒザ前務める日が来るとは思いませんでした」。
師匠が弟子のヒザ前を務めること自体は、よくある。
どんな商売でも難しい、というマクラから「つるつる」。
八雲師匠も、ヒザ前でさすがに「死神」はない。若かりし頃、女の噺で売り出したのを思い起こさせる女の描写はさすが。

「つるつる」、先代文楽で有名で、今ではすっかり廃れてしまった噺。しかも「幇間の恋」を描いた珍しい噺だ。
「幇間」の噺自体は今でもたくさん掛けられている。「つるつる」が廃れているのは陰気なムードのためか。
先代の弟子だった、柳家小満ん師匠が今でも掛けていらっしゃるのはとてもありがたい。
「つるつる」というタイトルは、最後まで聴かないと意味が分からない。
事情を知っているのに、意地悪尽くしの旦那に翻弄され、約束の時間を逃してしまいそうで焦る幇間の一八。
旦那は芸人の了見を厳しく一八に諭しているのか、な。
非常手段を取るも、結局時間に間に合わなかった幇間の恋、結局どうなるのであろうか。やはり悲恋で終わるのだろうか。
そういう描写を一切せずにサゲてしまうのが粋である。

通販の広告などで、落語全集のタイトル見て不思議に思った、というご経験はないでしょうか?
「つるつる」とか「ぞろぞろ」「だくだく」など、落語にはこんなタイトルの噺が多い。柳家小ゑん師の「ぐつぐつ」という新作落語もこのデンなんだろう。

「昭和元禄落語心中」の劇中設定では、都内に寄席が1軒だけになっている。現実世界では、「人形町末廣」がなくなってからも、寄席は4軒残っている。
フィクションの世界で1軒だけ残った寄席「雨竹亭」、現実の「新宿末広亭」に外観・内装ともに瓜二つなのだが、どうやら場所は浅草らしい。寄席を抜け出してきた助六と姉さんが、「吾妻橋」の上で会話をするシーンがある。
まあ、浅草のほうが雰囲気は出ますね。そういえば、「タイガー&ドラゴン」も、寄席はいつも浅草だった。そして中身は末広亭。
結局、助六が披露目の初日になにを掛けたのかは不明のまま。

浮世床

披露目はつつがなく終わったようで、後日、雨竹亭で助六が「浮世床」を掛けている。
細かいエピソードを継いでいく噺。
床屋で皆が時間を潰している。寝ていた建具屋の半ちゃん、起こされて開口一番、「最近年増に責められてろくに寝てないんだ」とのこと。
仲間が訊くと、半公、芝居に出かけて、粋な姉さんと出逢い、いい思いをしかけるが・・・という話。
「ヘボ将棋」「貸本の朗読」とエピソードをつないで、この、半公ののろけ噺で落とすことが多い。
時間に合わせて伸び縮み可能な便利な噺で、寄席にはもってこい。特に浅い出番で重宝される。

与太郎の前座時代から、いきなり真打昇進まで噺が飛んでしまうので、与太郎がどういう修業をして、どういう噺を得意にして真打になったのか、よくわからない。
当然、先代助六の噺はマスターしているだろうが。ストーリー展開的には、なぜここで「浮世床」?

この高座を観ていた作家の樋口栄助先生に見込まれ、お座敷で「奴さん」を踊る助六。
寄席というものはありがたいですね。三遊亭小圓歌姉さんの高座などちょくちょく観ていれば、踊りに関する知識など大してない私でも、自然とわかるようになる。

樋口先生、八雲師に弟子入りを願って断られた過去を明かす(第一シーズン・第十話に登場する青年)。
過去の大名人たちにはなかなか勝てないが、生で高座を届けられる現代の噺家は圧倒的に有利、落語は自由だ、新作落語を一緒に作ろうと熱く語る樋口先生。
助六、八雲師に相談すると、「新作落語は邪道」と一言。だが、真打なんだから自分の責任でなんでもやれと。

ところでこの「新作落語」ってなんだろう。
ひと口に新作落語というが、「古典落語」でなければ新作落語といい、人によって指し示すものが違う。
八雲師の指しているのは、現実世界において、かつての芸協で主だった落語のことだろうか。
樋口先生の指すものは恐らく違うはずだ。現実世界では、すでにこの頃、三遊亭円丈師が数多くの新作を世に出していた。
このあたり、原作漫画は未読です。私も、この先を楽しみにすることにします。

第二話に続く

作成者: でっち定吉

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