池袋演芸場25 その1(入船亭扇遊「不動坊」)

5月上席は、すでに初日に国立に出向いた。林家彦いち師の主任。
だが柳家喬太郎師が聴きたくて再び上席へ。
喬太郎師は池袋夜のトリ。昼席の入船亭扇遊師から通しで聴く。
新宿と迷った。末広亭は、昼が柳家小ゑん師で、夜の仲入りが喬太郎師。

ともかく人はすべての寄席に同時に存在することはできない。選んで池袋へ。
喬太郎師は前日「母恋くらげ」を掛けたらしい。当ブログにも数件お越しがありました。
今日9日目は古典落語だなと思う。
私はだいたい喬太郎師の古典に当たる。師の古典落語は大好きなので、問題なし。
さて昼席、あまり早く行くと、場内食事不可につき夜トリまで持たない。時間を潰してから、「かつや」で軽くカツ丼を食べて突撃。
池袋西口、吉野家も松屋も、東京チカラめしもなくなってしまった。松屋は2階で豚丼が食べられたのに。
演芸場のビルの店子で、裏手にあったAFURIもなくなった。
まだあるのは日高屋ぐらいだ。

昼の仲入りから入場したのだが、暑い中うろうろしていたもので、いきなり二席爆睡してしまった。
扇蔵師はたぶん、ぞろぞろ。
文楽師はたぶん、看板のピン。
以下、その後から。

橘之助
不動坊 扇遊
(以下夜席)
浮世根問 左ん坊
たいこ腹 小んぶ
夏泥 勧之助
にゃん子・金魚
宮戸川 喬之助
提灯屋(上) 馬遊
あずみ
馬の田楽 白酒
酢豆腐 菊之丞
(仲入り)
大根船 喬志郎
辰巳の辻占 燕路
楽一
心眼 喬太郎

 

喬太郎師は心眼。予想通り古典、そして人情噺。
数日後、「柳家喬太郎 心眼」で検索トップにヒットする記事を書くつもりです。乞うご期待。

立花家橘之助

爆睡していた昼席、ヒザの立花家橘之助師匠でようやく目を覚ます。この美魔女も久しぶり。
昼席、女はあたしだけなのよと。夜はにゃん子金魚が出てるけど、あれ女じゃないから。
志ん生、志ん朝の出囃子を、前座を呼んで再現する。
この日の前座は、「おなじはなし寄席」に出ていた扇ぽうさん。
師匠より前に出て叱られるお約束から。
扇ぽうさん、引っ込んだあと「有望な前座」と橘之助師匠に褒められる。一度高座を聴いた印象からすると、同感。
今、楽屋には京大出と東大出がいるのよと師匠。
東大出て噺家になって、バカじゃないの。この子ロシア人とのハーフで、着物全然似合わないの。
これは古今亭菊一さんのこと。
京大出は、一之輔師の三番弟子の、春風亭いっ休さん。

入船亭扇遊「不動坊」

さて、おなじはなし寄席で出た「お菊の皿」を、エンドレスで聴いたばかりの扇遊師が昼のトリ。
もともと好きな師匠だが、聴き続けたことで、従来抱いていたものより、一段上の敬意を抱くようになったところ。
先日も末広亭で、扇遊師の夜トリを聴いた。

私が昼席のお掃除役です。当席は入れ替えありませんので、よかったら引き続き夜のキョンキョンまでお聴きくださいと扇遊師。
嫉妬について。
嫉妬という字は女へん。だがなかなかどうして、男の嫉妬も大変なものだ。
そして不動坊へ。

これからの時季の噺でしょう。
先日、桂雀々師で聴いたら、なんと雪が降っていて驚いたが。普通は夏の噺。
ちなみにTVで出した「お菊の皿」で、いつもはしない中腰をしたと語っていた扇遊師だが、たぶん嘘だろうと思っていた。
さっそくこの日の「不動坊」は、中腰全開でした。
偽物の幽霊の噺だが、しぐさは幽霊なのだ。

金貸しの吉さんは、不動坊未亡人のお滝さんが嫁に迎えられると大家に聴き、ご機嫌の極致。
長屋のやもめ連中を敵に回してしまうのだが、実にまあ、楽しそう。
人が死んだと聞いて、これだけご機嫌になる噺もまたとあるまい。町内の鼻つまみの「らくだ」は別にして。
客は、講釈師の不動坊のことを、どんな人間かまったく知らない。
だが、目の前の吉さんのことはだんだんわかってくる。この人が、3年前から惚れていたお滝さんへの思いをひとり語りする。
そこに漂うのは、ただとにかく、無邪気な嬉しさ。
いやらしさゼロ。よかったね吉さん。
扇遊師の人柄も大きいと思うのだ。どうやっても、いやらしくなる人だっているだろう。

鉄瓶を持って湯に行く吉さん。扇遊師の右手のしぐさが実に自然。
湯でひとり妄想にふける吉さんを描き、噺の主導権は長屋のやもめ3人衆に替わる。
やもめ3人は、旅がちで不在が多い不動坊の留守を狙ってお滝さんにアプローチし、振られた経験の持ち主。

不動坊の幽霊役は、万年前座の噺家。
師匠から覚えがいいと褒められている割には、セリフを度忘れする。
しかしヨイショが上手い。
昔は万年前座、つまり二ツ目に上がることを希望せず、ずっと前座をやっている噺家が結構いたらしい。

続きます。明日も扇遊師の昼トリに少々触れて、その後の夜席へ。

 

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作成者: でっち定吉

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