丁稚の落語百科(「ほ」の巻2)

井戸の茶碗収録

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細川越中守

落語によく出てくる実在の殿様。肥後熊本藩主。
井戸の茶碗では、小汚い茶碗が名器と知り、300両で買い上げる。
竹の水仙では、左甚五郎作の木彫り水仙を、やはり300両で買い上げる。
先祖の戦国大名細川忠興も、「荒茶」に豊臣七人衆のひとりとして登場。この人だけ茶の心得がある。
昔からこの一族は風流人だったらしい。

保母さんの逆襲

林家彦いち作の新作落語。
金目当てだった男と別れた保育士が、なぜか銀行強盗を働くという噺。

堀井憲一郎

大河ドラマと朝ドラと落語について書いている人。それだけじゃないと思うけど。
落語について、真面目なものも結構書いている。
東京かわら版の連載は、落語についても独自の切り口で書いていて面白いのに、新真打を取り上げるときだけなぜか全員ヨイショの記事になる。真打の全員が面白いはずがないじゃないか。
以前、桂米朝について書いた本を出版する予定だったが、刷り上がってから発売中止となった。
息子の桂米團治師を怒らせてしまったようだが、なにがどうだったのかよくわからない。
米團治師も、米朝事務所の社長を降りたり最近いろいろある。今思えば、横車が過ぎたのだろうかと想像する。

ホリエゾン

落語と関係ないけど、流行らせたいので載せてみました。すなわちホリエ損。
マスクをせずに餃子店に乗り込み、フォロワーを動員して休業に追い込む卑劣な人間(前科一犯)。
国民的アイドルにあやかった愛称などで呼んではいけない。

堀の内

爆笑粗忽噺。
粗忽の八っつぁんは起きるたびにかみさんの顔を忘れるような重度粗忽。
粗忽を直そうと、堀の内のお祖師さまに日参することにするが、さっそくドタバタ。間違って浅草の観音様に行ってしまう。
堀の内のお祖師さまは、杉並の環七沿いにある堀之内妙法寺という名刹。
ここも法華である。
落語とゆかりの深い妙法寺では、毎月23日に「堀之内寄席」という落語会を開催している。
芸術協会の二ツ目が出ていて、料金は500円。

惚れ薬

イモリの黒焼きといえば惚れ薬。相手に振りかけると惚れてもらえる。
これを使った珍しい落語が2種類ほどある。「いもりの黒焼き」と「薬違い」。
もちろん落語なので、作戦は失敗する。いもりの黒焼きでは、誤って振りかけた米俵に惚れられてしまう。
薬違いでは、惚れた娘に思いを寄せられるのかと思ったら、溜まった店賃を催促される。

ホンキートンク

漫才協会所属の漫才師。落語協会の寄席に出ている。
もともとホンキートンクは、漫才協会四天王の一組として、定評の高いコンビだった。
四天王の他の3組は、「ナイツ」「宮田陽・昇」「ロケット団」である。
ところが、ボケのトシさんが、奥さんの看病を理由に脱退してしまう。この人は「天草ヤスミ」と改名し、引き続き落語協会の香盤に名はあるが、寄席には上がっていない。
残ったツッコミ、弾さんが新メンバーと組んだのが現在のホンキートンクである。
新たなボケ、遊次さんは、三遊亭金翁師の孫。金翁(先代金馬)の付き人として寄席に出入りしていたという。
新たなホンキートンクは、先代のギャグも積極的に取り入れ、今日も寄席を沸かせている。
以前と違うのは、「スベリボケ」の多用か。

本所

古典落語にはよく出る地名。
浅草や蔵前あたりから、大川を渡った向こう側。東駒形や本所、石原あたり。
文七元結の主人公、左官の長兵衛も本所に住んでいる。吉原の角海老から吾妻橋を通って帰る途中で、身投げを見つけるわけである。
本所の割下水に住んでいるのが、化け物使いの人遣いの荒い旦那。川向うは化け物も出るらしい。

本寸法

落語の初心者が妙に使いたがることば。
当ブログでは積極的に使うのをよしとしない。本寸法じゃない落語も無数にあるから。
「本寸法だねえ」といえば、「ちゃんとしてるね」ぐらいの意味。
「本寸法だけどね」とか「本寸法ではあるね」などというニュアンスでも使う。

本膳

「人の真似をして失敗する」という落語は多いが、おおむね「オウム返し」。
本膳は、「荒茶」と並んで珍しい、集団芸である。
食事のマナーを真似て、みんなで失敗する噺。里芋の煮っころがしは塗り箸では食べにくい。
あまり掛からない。

ほんとのこというと

柳家喬太郎作の新作落語。
結婚前に、初めて男の実家に挨拶しに行く女。
しおらしくしている女だが、次々に秘密を告白していく。
人の「優しさ」っていったいなんだろう。優しさを切り刻む快作。

次回、いつになるかわかりませんが、「へ」の巻でお会いしましょう。

 

作成者: でっち定吉

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