国立演芸場15(上・柳家さん花真打昇進披露口上)

またしても連雀亭からハシゴをする。馬久一花夫婦を取り上げたら、期待通りアクセス多めでした。

今回の行き先は、国立演芸場。落語協会秋の真打昇進披露も、いよいよ大詰めだ。
結局、花いちさんの披露目(浅草)しか行っていない。
今回は4人全員の披露目に行きたいと思っていたのだが、そうは言っても、主役が変わって中身が大きく変わるわけじゃないし。
ただ、小んぶ改めさん花さんの披露目だけ観ておこう。
ただし頭からは行かない。連雀亭ワンコインの終演後にちょうどいい、仲入り後の口上から参加することにする。

昨年、連雀亭(主任・玉川太福)に札止めで入れず、瀧川鯉八さんの披露目に切り替え、歩いて国立に向かった。
その際の道(片道4km)を皇居に沿ってまたも歩く。天気がよくて気持ちがいい。ジョガーはあんまりいなかった。
半蔵門のドトールで連雀亭の記事を書きあげてから、演芸場へ。
仲入り後の入場は、3割引きで1,400円。
連雀亭と掛け持ちしてるのは私だけだろうな。

私的にはでかいニュース。
国立演芸場で、電子マネーが使えるようになっていた。Suicaで払ったのだが、あと使えるのはなんだろう。たぶん、iD、楽天Edy、nanaco、WAONぐらいかな。
QUICPayは意外とダメなショップが多い。
本当は、VISAのタッチ決済で支払おうと思ったのだが、「使えません」って言われた。
ウソだろ。))))マークが端末に付いてるから、きっと使えると思うよ。
次回は「クレジットで」と言っておいて、勝手に端末にスマホをタッチしてやろう。
世間に取り残され気味の落語界、ほんの少しずつだが、進んでいる。まあ、鈴本の現金投入機みたいな間違った進化もあるが。
しかし令和の時代に、電子マネーごときで感激したくはないね。

すぐに開演。そしていきなり口上。
客は50人ぐらいか。
下手から、喬之助(司会)、左龍、さん花、さん喬、馬風。

喬之助師は、間違って冒頭「小んぶ」と言ってしまう。披露目あるあるですな。
大きな男です。そして、母ひとり子ひとりの家庭で育ったさみしい男です。
字面だけ切り取ったら、抗議来そうだな。そんな雰囲気じゃないですが。
大学行っているときにお父さんが早逝し、人生好きなことをしなきゃと噺家になったそうなので、いわゆる母子家庭というのとはやや違うと思うが。

左龍師は、いきなり噛んでスタート。
兄弟弟子というものは絆が強いものですと。喬之助さんと私は、前座時代を一緒にすごし、兄弟のような仲です。互いの家によく泊まりっこしてました。
あるとき楽屋で着替える喬之助さんのパンツを見たら、私のでした。
喬之助師から「私のことはいいから」とツッコまれ、主役の話に。
10番弟子のさん花とはさすがに、修業を一緒にしてないからたまに楽屋で逢ったりするぐらいですが、それでも兄弟弟子なんです。
さん花はもっぱら古典落語をやりますが、師匠から伝わったものに、ちょっとだけ自分の色を加えるのが持ち味です。
まるで変えるわけじゃないんです。噺を壊さずに自分の色を出すのが上手いんですね。
先日、米津玄師さんのプロモーションビデオを末広亭で撮った際、監修をさせてもらいました。
米津さんとさん花の共通点は身長なんです。さん花が187で、米津さんが188でしたか。
米津さんの着てる羽織は、さん花のなんですよ。

落語協会最高顧問の馬風師は例によって、披露目のお土産、付け届けへの感謝と、ジャイアンツ愛。
浅草で聴いたときはシーズン終了間際でガッカリ気味の馬風師だったが、クライマックスシリーズを阪神相手に連勝して突破したばかりで、ご機嫌。
ヤクルトを倒し、日本シリーズでオリックスかロッテかわからないが勝てるかどうかは、すべてお客さまのおかげです。
隣のさん喬師から、師匠師匠、さん花のこともお願いしますとツッコミが入る。「言ってなかったっけ?」。
改めて新真打を褒める。
喬太郎も左龍も、喬之助もいる立派な一門だよ。手本があっていいと。
最後に見栄を切って「ずずずいと」。お約束のバタバタが入る。
さらに今回並んだ全員は、馬風師に押され全員ドミノ倒しにひっくり返る。新真打まで盛大にひっくり返る。
ふざけた大人たちだなあ。たまらないな。

司会が「暴力的な口上でした」とまとめる。
最後に師匠、さん喬。
心の優しい男なんですが、私にだけはいまだにその姿を見せません。殴ってやりたくても手が届きません。
母ひとり子ひとりでも、お母さんがとても優しい人なので、優しい人間に育ちました。
私や馬風師匠は先代小さんの弟子です。自分の弟子には、小さんの孫弟子であることを誇るようにと言ってあります。
小さんの噺をさん花も継いでますが、そこに自分の個性を出していって、それから最後に色を付けるのはお客さんの力ですと綺麗に締める。

馬風師の音頭で三本締め。

続きます。

作成者: でっち定吉

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