池袋演芸場27 その1(寄席の空席についてムダ話)

池袋下席、相当新作台本まつりの25日は柳家喬太郎師がトリ。
喬太郎師は私にとって落語の神さま。せめて年に三度は聴きたいものだ。
この日か、あるいは23日(喬太郎師が仲入り、トリは三遊亭丈二師)のどちらかに行きたいなと思っていた。
でも、23日に結局堀之内寄席に出向いて満足したばかりだし、締め切りもあるから止めとこうかなとも思う。
しかし、家が日中終日断水。予定のもので、私がうっかりしてたのだけど。
家にいられないので出かけることにします。
仕事のほうは、電車の中で気張って終わらせた。

今月はいつになく本業が忙しいが、落語のほうも6席目。私にしてはとても多い。
ただし使ったお金は6,800円だけ。無料あり、500円あり、1,000円あり。この日は2,000円。

コロナは続くが、喬太郎師なら札止め必至。
開演1時間前の午後1時に行ってみたら、すでに列が折り返している。私の予想より列が長いが、このぐらいならまだまだ大丈夫。
並んでいたら「落語だ」と声を発して通り過ぎる通行人。久々に見る光景じゃないでしょうか。

開演間際に隣の空席に人が座る。
いいんだけど、なんで「空いてますか」って訊くのかな。
この世における、最も不毛な質問だと思うよ。
荷物の置いてない席は、早く来た人に座る権利があるのだ。座りゃいいじゃん。
隣空いてますかって言われても、こちらは隣の席についてなんの権利も、そして情報も持っていない。管理責任もない。
わかっているのはただ、そこに荷物が置かれていないことだけだ。満員になるのに隣の椅子を占拠するバカもいないし。
そう思いません?
こんなことで立腹しているようでは社会不適応扱いされるから、怒りはもちろん内心にとどめる。
だが、なぜこんなやり取りが頭にくるのか、自己分析ぐらいはする。
結局、隣にいるだけの私に、なんらかの責任を分配させようというひそかな企みがあるからだ。あなた空いてるって言いましたねと言質をとりたいわけだ。
しかしこちらはもともと、ふたつ隣の人とのトラブルについては何の責任も負えない。

とりあえず、空いてる席は勝手に座ってください。
人の前を横切る必要性があるから声は掛けるにせよ、「そこいいですか」ならいい。訊かれた側も二つ返事。
荷物がない席に自分の意思で座る姿勢を見せていれば、声を掛けられた側が責任を分担させられはしない。

ああ面倒くさい(←お前だあ)。

そういえば池袋、通信スクランブル入れた?
仲入りのとき、電波が入らなかったのだ。まあ、いいことだと思いますよ。国立に次いでなんと池袋か。

女子高生の設定 ごはんつぶ
うしみつであそぼ ぐんま
きゃいのう 正雀
老後が心配 天どん
のだゆき
土産話 花いち
悲しみは埼玉に向けて 小ゑん
(仲入り)
演題不明(髷もの) 世之介
ウルトラマンじいちゃん 彩大
小菊
焼きそば 喬太郎

 

演題がわかったのは、一般的には古典落語扱いの「きゃいのう」と、円丈作「悲しみは埼玉に向けて」、それから「焼きそば」という、かすかに作品名の記憶があった喬太郎師の一席だけ。
ここまでわからないというのも、新作まつりならではだ。
それ以外は調べました。調べたら意外とわかるものだ。
世之介師の髷ものだけ不明。過去10数年遡ったのだが、新作落語台本募集に、この人情噺に該当する作品も見つからないのだけど。

(追記です。「鋸雪」と判明)

募集作品(佳作)である「焼きそば」はたまらないものだった。
最初に取り上げてもいいのだけど、この日一番のバカ落語なので最後に回します。

三遊亭ごはんつぶ「女子高生の設定」

幕が開いて前座は三遊亭ごはんつぶさん。
2年前の3月25日に来たときもこの人が前座だった。
その日とても楽しい新作を聴いたのだが、内容はすっかり忘れちゃった。でも、ごはんつぶ恐るべしという認識は得た。
この人の高座は、その一度だけしか聴いたことがない。普段の席で掛けている古典落語のクオリティは知らない。

ごはんつぶさん、前座がすっかり長くなりましたと。
前回の昇進が昨年3月で、次の昇進が今年5月っておかしいでしょ、と。
確かに今度昇進の3人(扇ぽう、まめ菊、り助)ももう前座を丸4年やっている。
コロナで下が入ってこないから、寄席をまわすために仕方ないことなのだろうと、関係者でない私はそう理解している。
ごはんつぶさんは、その次の前座の2番目。
ところで、「前座が長い」なんて、春風亭かけ橋さんの前で言ってみろなんて私は思ったけどね。

前座が長いと腐る仲間も出てきます。いえ、私自身はそうでもないんですけど。
私考えたんです。
今の前座が長い状況は、嫌々続けているものじゃないんですよ。
我々、実は75歳の超ベテラン噺家だったんです。あるとき、「苦労したけど修業時代は楽しかったな」って考えたんです。
それを神さまがかなえてくれて、当時の記憶を持たないまま、魂だけがタイムスリップして前座を務めているんですよ。
この考え方が気に入ったので仲間に話しました。反応はあまりありませんでしたが。

思い込む元ネタは不動坊かな。新作派らしい自由な発想、面白いね。
前座ですが、新作まつりなので新作をしますとのこと。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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