10月は、4度目の落語である。
行きたい席はこの倍ぐらいあるが、このくらいの頻度がいいような気がしている。
この日は6月以来の亀戸梅屋敷寄席に。
その前に、神田連雀亭に立ち寄ることにします。
連雀亭は500円。亀戸は1,000円。ハシゴしても、財布のさみしい私に優しい組み合わせ。
風子 / 宗論
楽大 / ちりとてちん
小もん / 蜘蛛駕籠
誰かひとりが目当てということはないけども、いいメンバー。
所属団体も芸風もバラバラな、こういう席が好き。
平日なのに20人近く入っていて大盛況。
前説は楽大さん。大入りなのでびっくりして、「でもジュリーだったら帰りますね」。
春雨や風子「宗論」
春雨や風子さんは、昨年5月に聴いて以来だ。
個人情報ダダ漏れのマクラ。住んでる練馬のマンション所在地を詳しく言う風子さん。
あとでGoogle Mapで調べたら本当に目印のお店があった。
いいのかね。普通に考えたらウソなんだろうけど。
スポーツクラブでおかま扱いされた話から、さらに中3の長男の進学の話。
風子さんは落語界初、シングルマザーで師匠に入門したという人である。
息子のマクラ、面白かったけどオチがついたようなついていないような?
隠れキリシタンの話から、宗論へ。
息子の歌う讃美歌が途中で「里の秋」に変わってしまう。三遊亭遊雀師に教わったのだと思う。
さらに、歌の続きがあり、なぜか宝塚になってしまう。また、宝塚の男役の歌が上手いんだ。
ご本人が高座で語っていたわけではないが、噺家になる前にCD出してるらしいんだけど。
風子さん、唯一無二のスタイル。女流も増えたが、こんな落語をする人は他にいない。
この人はやたらとハートが強く、ギャグがウケようが滑ろうが、一切頓着しない。
といって、客にギャグを押し付けたりもしないし、置いてきぼりにもしない。客へのサービスは怠らず、最低限のルールを守ってやりたいことをやる。
ウケるギャグだけ刈り込むということはせず、ただひたすら自分のスタイルを貫くだけ。
面白いネタもそうでないネタも堂々と語っているうちに、客のほうがなんだか世界に馴染んできてしまう不思議な味。
客席の年配のお父さん方、楽しい一席に大喜び。私も大喜び。
三遊亭楽大「ちりとてちん」
続いて登場、三遊亭楽大さんはひと節だけ歌って大ウケ。
明るい高座を巨体で務める、実に楽しい人。
落語協会にデブサミットという巨体噺家の会があるが、楽大さんも混ざれるといいのに。
前日、10月29日は五代目圓楽の命日で、一門は皆で墓参。先代圓楽は、誕生日が12月29日で、どちらも肉の日で覚えやすいのだと。
師匠・円楽の入院ネタ。弟子にも病院を教えなかった師匠・円楽だが、ひとりだけ見舞客がいた。
それが、フライデーの記者。不倫事件以来、妙に記者と仲良くなってしまったらしい。
円楽師、不倫の内幕のネタを、にぎわい座でも喋っているし、さらに同じネタを楽屋でも、さらに弟子たちの前でも繰り返し喋っている。
かなり完成したネタになってきたのでぜひ師匠の独演会で聴いて下さいと楽大さん。
楽大さんの本編は、夏も終わったのにちりとてちん。
私は10月に入って二度目。天気がいいと、噺家さんはやりたくなる噺のようだ。
今年は随分聴いた噺だが、何度聞いても飽きはしない。噺家さんの攻めるポイントがそれぞれ違うので、着目点が多い噺。
さらに円楽党の古典落語は、他派と結構スタイルが違うことがある。
ちりとてちんは、落語協会も芸術協会も、攻めるポイントこそ違え、型自体はだいたい一緒だと思う。
登場人物の名前は統一されていないものの、展開はおおむね一緒。円楽党でも、両国で聴いた竜楽師の型は特に違わなかったが、楽大さんは結構異なる型。
口の悪い六さんは、隠居の友達である。だから、年齢はどうやらそこそこいっているらしい。
そして女中のお清は出てこない。おさんどんは婆さんの役目。
調子のいい男のほうは、軽くて幇間っぽい。
そしてカビの生えた豆腐、ちりとてちんは、長崎名物。今はみんな台湾名物なので、長崎でやる型は久々に聴いた。
さらに六さんによると、このちりとてちんは軍艦島のお土産物屋で売ってるらしい。これは楽大さんのオリジナルギャグだろうけど。
楽大さんは、以前「蛇含草」を聴き、餅をおいしそうに食べるのに感心した。
ちりとてちんでも、灘の生一本、鯛の刺身、うなぎとことごとくおいしそう。
食欲増進落語というジャンルがあると思う。実際、5月の黒門亭で、古今亭菊丸師のちりとてちんのあと寿司を食べにいった。
これからの季節では、二番煎じとか、円楽党では「ふぐ鍋」などが出るだろう。いいですね。
楽大さんは巨体からも見てわかるとおり、食べるのが大好きな人みたい。そして私は、そんな噺を聴くのが大好きだ。
なにしろ、腐った豆腐を一気食いしてしまうのだから。そんな発想そうそうないけど。
大満足。
楽しいマクラが長かったので、時間はオーバー気味で、すでに残り13分くらい。
柳家小もん「蜘蛛駕籠」
トリは柳家小もんさん。
時間ないのに、慌てず騒がず「蜘蛛駕籠」。
その前に、群馬出身芸人たちで、群馬の全市区町村を廻るのだというマクラもちゃんと振る。
蜘蛛駕籠は大好きな噺なのだが、寄席ではめったに聴かない。今年は柳噺研究会で、柳亭小燕枝師のものを聴けて感激した。
柳家の師匠からしか聴いたことのない噺。師匠・小里ん師から来ているのだろう。
時間がないから、オムニバス的に5つあるエピソードのどこかを抜くのかなと思ったら、コンプリートVer.だったので驚く。
ちなみに終演は10分押し。20分でやり切ったわけだから、そこそこコンパクトにはなっている。
小もんさんは、柳家の系譜を正当に継ぐ人。
力の抜けた蜘蛛駕籠がとても楽しい。
こういうのを聴くと、つくづく落語というのは、お笑いとはまったく違う性質のものであることを実感する。
クスクスと、バカな連中のやり取りを眺めながら、ただただ楽しい小もんさんの蜘蛛駕籠。
アラクマさんのエピソードで、六郷の渡しで熊さんが出逢うおかみさん、右目の下にほくろがある。
小もんさんも、右目の下にほくろがある。意外と、そんな理由でこの噺やってるんじゃないかと思う。
3人揃って満足のワンコイン寄席でした。
続いて、総武線で亀戸に向かいますが、こちらの件はまた来週。
毎週土曜日に落語心中を持ってくるため、ネタを調整しないとならないのです。