「あかね噺」が刺さらな過ぎて絶望する

暑かった土曜日の夜、酔っぱらって、日曜の朝5時半に目が覚めた。
7時にアップする予定のブログができてない。実際、ちょっと遅れております。
朝になってからネタを探す。幸い、最近はネタのストックがまあまああります。

少年ジャンプで連載中の「あかね噺」。
ジャンプ界隈のことは知らないが、業界でも話題になっているようである。
昇太師匠のラジオにも、原作者が登場していた。
その前、堀井憲一郎師もコラムを書いていたし。
このたび単行本が出たので、朝っぱらからこれを読み、レビューしてみることにしました。
電子書籍がすぐダウンロードできる、いい時代。

「真打昇進」がテーマだと目にしていて、その点ですでにイヤな感じがしていた。
いつの時代なんだよと。
もっともマンガの時代は、落語協会分裂騒動のあたりではなく、現代である。
真打昇進試験があるのは立川流だけ。
立川流を模した「阿良川一門」が舞台である。
現実の立川流の真打昇進などすでに陳腐化し、悪臭を放っているのであるが。
そもそも現在の真打制度、本当に通過儀礼に過ぎない。昇進以後劇的に上手くなるなんて人も、そうそういない。最近の小痴楽師に感じるぐらい。
まあ、あくまでもフィクションはフィクションの中で評価すべきなのだろう。

真打は年功序列でいいです。本当に、
春雨や風子さんだって上げてもらうべきだ。

かつて真打昇進試験に挑み、合格どころか総帥(もちろん談志がモデル)に破門の憂き目にあった噺家の娘が、阿良川流で真打を目指すというのが「あかね噺」のストーリー。
私の事前知識はそれだけ。

いや、本当にびっくりした。
どこがどうじゃない。まるで刺さってこなくて。
落語の世界がどうフィクションに落とし込まれているかなんて評価以前に、ひとつのコンテンツとしてまるで楽しめなかった。
2巻は読まないと思う。
もはや読み進めたくないマンガのことを、これ以上ネタにできるはずもない。

当ブログ、「寄席芸人伝」や「昭和元禄落語心中」のカテゴリを作っている。
古くなってきて、最近はあまりお読みいただいていないが。
昭和元禄落語心中はリアルタイムに追いかけていたものだ。当ブログの礎を築いてくれた記事のひとつであり、足を向けて寝られない。

あかね噺がハマれば、私にとってもこれが新たなブログの軸になり、ハッピーである。
広告クリックしてもらえば売上にもなるし。
そんな私のいやらしい目論見は見事に崩壊した。そのため今、おそろしく不幸である。

面白かったのは、現実の「らくごカフェ」「スタジオフォー」が忠実に絵に落とし込まれていたことぐらいだ。

昭和元禄落語心中においても、それはおかしいなというツッコミは、過去にだいぶ入れている。
柳家小ゑん師も高座でかなり間違いを語っていた。
だが、小ゑん師のツッコミにも愛があったし、同調した私にも。
不備は無数にあっても、あれは十分に名作だったと改めて思う。
落語を利用するだけ利用しても、ちゃんと別のステージに屹立しているならそれでいい。

今回もまた、「作者さん、それは違うよ」という指摘はすることになるんだろうなとは思っていた。
だが、そんな指摘以前の問題。

女子高生のあかねが、いきなりらくごカフェならぬらくご喫茶で初高座を踏む。
そんなバカな設定について、指摘をする気力すらない。
ここで衝撃のデビューを飾るが、生涯のライバル(先輩)が、結局全部持っていってしまう。
落語でもって、ジャンプ得意の「対決」をしようとすると、こんな展開しかないということだ。
主人公に魅力もないし。

「阿良川流の真打になる」なんて目標設定も、そもそも現実に即しておかしい。
あくまでフィクションの中での設定としても、「肩書を求める」のがゴールでは、成り立ち得ないのではなかろうか。

ジャンプマンガは、困難が次々に設定されていくのがお約束。
あかね噺の第1巻に出てきた困難の設定は「弟子入り」「噺の上手いライバル出現」「気働き」である。
弟子入りは、親父の経緯があってすんなり。
ライバルは「色気」があるのが持ち味だが、これはそもそも個性の差であり、勝ち負けの要素ではない。
気働きは、居酒屋で修業だって。談志の弟子たちが築地に行かされた話がベースか。
いずれにしても、なんだかな。

作者はラジオでも語っていたが、格別落語に詳しいわけではないようだ。
それはそれで構わないと思う。
だが、なにかを落語界に感じて創作を始めたはずなのに、それに共感を覚えられないのである。

堀井氏のコラムも、今振り返ると関係ないことばかり書いている。
劇中の芝浜を無理褒めしている感があり、ご本人も別に楽しまなかったのだと思う。
まあ、良くも悪くもプロの物書きの仕事ではある。
泡沫物書きの私は、嫌いなコンテンツに出会ったら、そうとしか書けはしません。

 

(追記)

結構悪く書いてしまったが、続きを読みました。
「あかね噺」の2巻を今頃読んだら、ちょっと面白かった

 

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. このマンガをマクラでネタにする落語家さん(二つ目が多い)が結構いるので以前に読みました。
    難局を乗り越えてライバルと張り合いながら進んで行くという典型的なジャンプ向けのネタ。業界の裏側を特にほり込むでもなく(いろいろ差しさわりがある?)作り込みも浅いのですぐに飽きちゃいましたが。
    少年誌だとターゲット年代のからみもあるんでそんなもんかな?
    女性噺家を描くなら風子さん原作で青年誌向けに・・・ヤバイですね。

    1. まるかんさん、いらっしゃいませ。
      もうひと晩考えて思ったのですが、最初からギャグタッチのマンガだったらハマったのかなという気がしてきました。
      やたらと破門されるのが標準の、架空の落語界を設定しておけば、むしろ変なリアリティが出てきたのかもなんて思います。
      競馬におけるマキバオーのように。

      >女性噺家を描くなら風子さん原作で青年誌向けに
      読みます。キャラ被りする派手な女性ライバルが登場するに違いないですね。

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