立川笑二月例独演会(上・つる)

夜席に行っての撮って出しです。深夜の更新。

夜席は行きづらいのだけど、ちょっと解放されたので出かけます。
木曜の上野広小路亭「立川笑二月例独演会」か、金曜の日本橋亭「花いちの真・観笑地帯」のどちらかに行きたい。
解放された割には家庭事情も忖度し、木曜のほうに。前日に立川企画に予約して2,000円。
広小路亭も久々だ。定席も落語会も、常日頃チェックは欠かさないのだけど。
調べたらなんと4年振り。

7時の開演まで上野付近で仕事するが、先が長くていささかダレ気味だ。
意味なく、黒門町の落語協会まで足を向ける。
表でチラシ見てたら、作務衣姿の三遊亭白鳥師が事務所から出てきた。

広小路亭のお客は想像通り、20人強。
BGMは、邦楽で聴くビートルズ。ヘンなの。

そもそも笑二さんにもご無沙汰。と思ったが、調べたら1年振りでそんなに間は空いてない。
この才人を私は神田連雀亭でしか聴いていない。
ここ立川流広小路寄席には出てるけど、ちょっとね。
別に立川流が聴きたいわけじゃないのだ。

つる
佐々木政談
(仲入り)
札所の霊験

前座はいないのだな。
いきなり笑二さん登場。
この会、入りが薄いとやめるぞと立川企画に言われているので、ツィッターで集客強化しましたとのこと。

最近の笑二さんはちょっとテンションがおかしいのだそうで。
それをあえて包み隠さないのが面白いだろうと。
前日、新宿アルタ前で見つめあっているカップルを見たそうな。
通りすぎざまに笑二さん、マスクの下で「ヒュウ」と口笛。吹いた自分に驚いた。

統一協会が叩かれてるが、末端の信者はなにかの救いを求めているわけだから、あまり叩きすぎるのはよくないんじゃないか。
ここでご自身の父方の家系について。

沖縄にいる笑二さんのお父さんは、白光真宏会の信者。
聞いたことありますか? マイナーな宗教ですよ。
でもこの信仰は父のみ。
父の母はクリスチャン。
父の姉は、創価学会。父の妹が嫁いで千葉にいるが、これがまさに統一協会。
でも父方の祖父は、日蓮宗。リアル宗論。
そして私が立川流。客、爆笑。

父があるとき用事があって東京に出てきた。
父と外で一杯やる。久々で、本来な寡黙な父もよくしゃべる。
カラオケ行こうよと父。親子二人でカラオケへ。
笑二さんはキャラ的に、立川流のカラオケ大会では昔の唄を歌ってベテラン師匠を喜ばせている。
同じ世代の父も喜ぶはずと、麻丘めぐみの「私の彼は左利き」を熱唱する。
この唄には立川流総出で立ち上がって合わせる振り付けが入っている。「ひだりき~き~」のくだりで、左手を握りこんで上下運動させるという、実にどうしようもないネタ(主に談四楼師がやってますとのこと)。
父の前でうっかりいつもの振り付けをしてしまったのだが、父は大喜びであった。
これだけ喜んでくれれば、父の宗教について聞き出せるのではないか。
笑二さんが、「どうしてぼくたちを勧誘しなかったの」と絡め手から聞いてみるが、結局よくわからなかった。ただ、父には宗教に頼るきっかけの、なにかしらの闇があったのだろうと。

こんなにマクラ具体的に書いていいものかな。
実に楽しかったものでして。別に宗教ネタじゃないのだけど。

本編へ。
隠居を八っつぁんが訪ねてくる。だが八っつぁん、妙に元気がない。
なんだこりゃ、古典のパロディかなと。
テンション低い八っつぁん、粗茶を勧められ、飲んで「旨いね」。
いつもの古典落語が書き換えられていて、爆笑。粗茶のくだりを脳内先取りするが、出てこないという卑怯なメタギャグ。
隠居が訊いてみると、八っつぁんはなんでも、たばこ屋のみいちゃんに嫌われたのだと。
寄席に行った八っつぁん、ねずみの小噺(チュウ)を覚えてみいちゃんに披露したが、まるでウケない。
隠居に、面白い小噺教えてくださいと。

隠居のほうは、八っつぁんをたしなめる。面白い小噺聴いたってダメなんだよ、お前さんは語りが致命的に下手なんだから。
下手なのはわかってますけど、爆笑小噺だったら「チュウ」よりはウケるでしょと隠居に迫る八っつぁん。
急に言われても、と困る隠居だが閃いた。「つるは昔、首長鳥と言った」。

「まさか『つる』やんすか」
「五代目小さんで覚えた。12年目のネタおろしは大変なんだよ」

本当につるだった。
首長鳥のエピソードを面白いっすねと何度も隠居にせがむ八っつぁん。隠居が「そこまで面白くはない」と引き気味。
さっそく新たに仕入れたネタを、みいちゃんに披露しにいく八っつぁん。

つくづく思ったのだが、笑二さんという人、下卑たところがまったくない人。
私生活がどうかは知らないが、こと落語に関しては、極めて品のいい人である。
かなりユニークな「つる」を語っているのに、そこにちゃんと古典落語の味わいが濃厚に漂っている。肚の中に落語の空気がすべて入り込んでいるからだと思うのだ。
既存の落語を破壊するとウケるのだが、しかしなにか下卑た、残念な感が漂ってくることがある。
そういう落語ではない。
ははあ、だから私、この人が好きなんだなと。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. うわあ、同じ場所にいらしたのですね!なにか不思議です。
    たしかに笑ニさんって下卑てない。そう言われれば確かにそうです。「私の彼は左利き」の振りも下品にはならない。
    トリのネタ下ろしも…
    これは明日の記事を楽しみにしてます。

    1. いらっしゃいませ。
      珍しめのところでご一緒でしたね。
      そして皆さん、いいお客さんでした。
      本日と明日の記事にも乞うご期待。
      今、朝ですが、これから書きます。

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