用賀・眞福寺落語会2(下・桂文治「三年目」)

仲入り休憩後は再度の文治師登場。
学校寄席が現在一度で終わらず、学年を入れ替えて3回やるので大変だ。早く一度にできるようになって欲しいと。
故郷の大分で、中学の校舎が建て替わった。生徒も減ってコンパクトになった木造の綺麗な校舎だ。
そこで講演を頼まれた文治師。15分転失気をやって、あとは中学の思い出をいろいろとした。
独身の文治師だが、中学のときはもてたのよと。こんな顔だけど。
○○△△さん(実名)と付き合ったの。クラス一の美少女。○○△△さんご存じ?
交換日記を付けてましたが、そのうち縁が切れて。
その次に付き合ったのが、●●※※さん(実名)。ご存じ?
色の浅黒い、バスケ部の明るい娘でした。
同じ高校行こうと誓ったのだけど、先生に呼び出されて。ぼくがその高校行っちゃうと、自動的に友達が落ちるんだって。
なんだかわからないけど、そういうことになってたの。
仕方ないから友達に譲ったの。彼女とは違う高校だったんで、そのうち疎遠になって。
でもよかったですよ、今地元で会を仕切ってくれるのは四日市高校の友達だから。
で、講演に、●●※※さんが来てたそうで、校長室に訪ねてきたの。まるで面影なかったけど。
もう下のお子さんが高校生だって。
この話、楽屋でしてたら仲間に高座に出せって言われて、それで最近出してるんですけどね。

男女の縁からつながる、三年目。
文治師のイメージじゃない噺だが、よかった。人情噺だが、カラッとやる噺。
もちろん爆笑ものにはならないけども、文治師が明るく進めることで、むしろ亡くなった女房のいじらしさが際立つ。
好楽師のものによく似ていたので、教わったのかもしれない。

ダイナミックな所作の水屋の富と、しっとりした三年目、いい組み合わせでした。
一席終えて文治師、なぜか座布団を返し、メクリを変えて去っていく。
国立の会のため、弟子はもう向かったのかなと。

もう一度権之助師が出て、トリ。
空治さんはもう準備のために私服に着替えていたので、文治師匠がメクリを返してくださいました。
文治師匠、帰っていきますけどそちら(窓の外)はあんまり見ないでくださいね。私のほうを見てください。
そんなこと言われたら気になるじゃないか。

用賀から半蔵門まで電車で一本だが、文治師は歩きではなかった。
本堂前に置かれたアルファードを、空治さんが運転して去っていきました。
「水屋の富」のマクラで、噺家はそこそこやっていける商売ですよと語っていたのだけど、いいクルマに乗ってるな。
アルファードの前はレクサスだったそうで。ちなみに文治師自身は免許ないそうだ。

権之助の名前の由来。目黒の坂とは何の関係もありません。
師匠・権太楼から上をもらい、下はTHE ALFEEの坂崎幸之助さんからいただいたんです。昔からファンなので。
おばさんみたいなおじさんですね。
意を決して坂崎さんにいただきにあがったんですが、「いいよー」と二つ返事。「俺、本名コウジだもん」。
もちろん大ファンだから本名は存じ上げてます。
でも、「権幸二」ってわけにもいかないですし。

権之助師は、四神剣について振る。
百川か。あんまり好きじゃない。
アンジャッシュのコントを連想するからかもしれない。ちなみにコント大好きな私だが、アンジャッシュのすれ違いコントは、事件前から好みではない。

百川という噺への不満、理屈で迫ると納得がいく。
百兵衛さんという山出しの奉公人をめぐる二つのエピソードで成り立っている噺。
だが、前半と後半で百兵衛のキャラが違う。
前半は、言葉が江戸で通じないので勝手に「四神剣の掛け合い人」だと思われてしまう。これは事故である。
一方後半は、常磐津の師匠ではなく医者を呼んでしまうトラブル。これは明らかに、百兵衛自体が間抜けなので生じる。
四神剣の仕込みが必要な前半をやめて、後半だけ、間抜けな奉公人の噺にしたらスッキリしそうだが。
・・・スッキリはするが、つまんないだろうな。

だが、私の感じた問題意識を権之助師も共有しているかもしれない。
後半、サゲ間際で間抜けな百兵衛が「先生ござらっしゃって嬉しかんべ」というセリフがなかった。
わりと、後半も間違えたのは無理がない状況にしていた。
百兵衛さん、最初から三光新道で「か」のつく有名人を探し求めていっている。覚えてないんじゃ仕方ない。

演者のニンに合っている噺は楽しいものでした。

次回はこの会、1月だそうです。
ゲストは新真打、入船亭扇橋師。行こうかな。

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作成者: でっち定吉

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