鈴本演芸場8 その1(オチケン前座とポンコツ二ツ目)

ブログ更新滞ってましてすみません。なにせネタがなく。
と思ったら円楽師死去のニュースが飛び込んできた。
当ブログは平常運転で参ります。今日は寄席に行ったので。

〆切やっつけて、本日9月下席千秋楽は、結局池袋ではなく鈴本昼席へ。
池袋下席の料金が500円も上がったのが直接の理由。
物価が上がって行かない限り日本の未来はないと思っている。値上げに文句言いたいわけではない。
だがこうなると、東京かわら版割引のある他場が魅力的に映り出す。
鈴本は、200円割引で2,800円。2,500円の池袋より1時間長いこちらのほうがパフォーマンスよし。
ちなみにさらに1時間長い浅草も、パフォーマンスは最高。こちら(主任:文菊)も考えた。
だが、小ゑん師が主任の鈴本へ。
結局またしても柳家なのだが、さん花師主任の池袋ほど柳家色は強くない顔付け。
鈴本らしく、落語協会オールスターズという趣だ。
そして、ミニ新作まつり。

かわら版でなく、小ゑん師提供の割引画面で200円引いてもらう。
相変わらず私の嫌いな現金投入機がお出迎え。

今席、小ゑん師の演目、「ぐつぐつ」はすでに2回出ている。
鉄道ものも3作出て、よく聴く「ほっとけない娘」も出ている。
未聴の「アクアの男」がすでに出ているのは残念だが、もしかしてもう一度聴きたい「願い事や」が出ないだろうか。
結局「アキバぞめき」でしたね。

お客は100人ぐらいか。
夜席は真打披露で、エントランスにはお花がいっぱい。
今度の新真打は、扇橋師だけ国立で聴くつもり。

昼席にも後ろ幕。
落語協会の幕で、「のし」の2文字が入っている。

平林枝平
タイトル不明(調べる気なし)やま彦
仙志郎・仙成
We are イディオッツ!駒治
浮世床(将棋)三三
のだゆき
寿司屋水滸伝百栄
粗忽長屋一之輔
二楽
鮑のし馬石
(仲入り)
ダーク広和
熱血怪談部彦いち
代書権太楼
ロケット団
アキバぞめき小ゑん

 

前座は初めて見る桂枝平さん。
割と立派な名前からは誰の弟子だかわからないが、文生の弟子だと名乗る。
この人がなあ。オチケン丸出しだったという話。

いろいろプロを批判している当ブログではあるが、前座を名指しで悪く言うことはめったにない。
だが、この前座さんの将来がちょっと心配になったので、問題提起をしたいのです。
口はすらすら回るし、高座度胸はあるし、一見いいのだ。
だが、平林が全然ウケない。
前座なんてウケなくていいもの。棒読みでもいい。
だが、オチケンの作法でもってウケを狙っていくのに、びっくりするほど客に響かないのであった。
小僧の定吉がたばこ屋で、「いちはちじゅうのもくもく」とお爺さんに声をかけたりするなど、工夫がいっぱいなのに。

さん喬師が惣領弟子・喬太郎に「オチケンはマイナスからのスタートだ」と言い放ったのは有名なエピソード。
別にこれは、さん喬師だけの哲学ではない。
だがいっぽうで、オチケン出身者は非常に多い。この日顔付けされている春風亭一之輔師など、オチケン時代に培ったスキル、今でもわりと普通に使っているという。
そんな話を聞くと、「結局人それぞれ」だという結論になる。本人の考え次第だ。
だが今日の枝平さんの落語を聴いて、オチケンとプロとの深い深い断絶が一挙に理解できた次第。
アマチュアの世界では、枝平さんのようなやり方がよくウケたろう。実際、そういう経歴の持ち主なのだと想像する。
素人落語を聴く機会はないのだが、ウケたに違いないと感じるものがある。
だがプロを聴きにきた客に対しては、モードが完全に違っているのである。

ああ、これは大変だなと。
オチケンを捨てないと、プロのスキルは乗らない。だが、捨てられないでいるのではなかろうか。
でも捨てられないと、次から次へ抜かされていくのだ。いや、「抜かれる」のではなく実は置いていかれているだけ。

続いて二ツ目は、彦いち師の惣領弟子、やま彦さん。元ポンコツ前座。
当ブログにおいて、高座を聴いた際に名前はほとんど出していない。
だが、今ならいいだろう。

黒門亭10(柳家小せん「人形買い」)
小ゑん駒治鉄道落語会@お江戸日本橋亭 その1

ここで名前を伏せて取り上げた前座が、やま彦(当時、やまびこ)だ。
これ以外に、黒門亭でメクリを変え忘れた事件もあった。
今日の新作も、なにがなんだか。
冷蔵庫の中の焼肉用の生肉の会話なのだが、そもそも設定、桂小春團治師の「冷蔵庫哀詩」のパクリじゃないかよ。

前座の時に聴いた新作と同様、落語としてなにがなんだか。クスグリも、おおむねセンスがおかしいし。
そしてだいたい、スベリウケという禁断の果実に逃げる。
作者としても、演じ手としても、なにがなんだか。
結局、常識が身についておらず世間標準がわからないため、なにがズレになり、笑いになるのかがわからないままみたいだ。

私は別に、上からやま彦を批判して満足を得たいわけではないのです。
将来出世したって全然構わない。
この人、個性は確かにユニークなんだけども、そもそも落語のスタイルになってないんじゃ仕方ない。
二ツ目になったとはいえ、古典からちゃんとやり直さないとダメじゃない?

今日はとてもいい席だったのだが、前座二ツ目が続けて外れると、ちょっと辛かったぞ。

続きます。

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。