浅草演芸ホール4 その5(宮田陽・昇「漫才版子別れ」)

それにしても浅草演芸ホール、極寒。
換気が実によく利いてるもので。厚着してこなかったのを反省。

寄席の彩り、うめ吉姐さんを挟んで仲入りは昔昔亭桃太郎師。
湯のみは出ていない。

いつもの「こんばんは」からマクラを振らずいきなり「ぜんざい公社」へ。
桃ちゃんはよく掛けるけど、このいにしえの芸協新作、他に誰がやってますかね。
現在誰がやったとしても、官僚批判が強くなりすぎる気がする。桃ちゃんだけは、ナンセンスムードが強くて楽しい。
露骨な批判より、ナンセンス色の強い方が結局強いと思うのですがね。あらゆる意味で。

マクラ振らないだけあってたっぷり。
歌も「キュッキュキュー」と「嵐を呼ぶ男」と二つも入っている。裕次郎サングラスを取り出すときに引っ掛かってなかなか出てこない桃ちゃん。
わざとでしょ。いいけど。
以前、嵐を呼ぶ男を歌う際は、客の拍手を遮って二番三番を続けるという手法だったが、今はまた変わっていて、間を置く。
二番と三番の歌詞が混じっていたのはご愛敬。

艱難辛苦、東海道線とバスに乗り山奥の別館までやってきて、ついにぜんざいにありつく。
餅を食らうシーンをたっぷり。
「ここまでやったら普通拍手が来るもんだがな」まで誰も手は入れない。
ここはやっぱり、演者が言うまで待ってるのが作法でしょうか。
同じように落語協会のストレート松浦先生が「あの、回ってますよ」というまでは、やはり手を入れるべきではないのだろうか。
悩むほどのことでもないけれど。

桃ちゃん師匠は77歳だ。世にこれだけ愉快な喜寿がいるだろうか。
もっとも上には上がいて、林家木久扇師匠は85歳だけど。

仲入り休憩後、幕が開くと舞台の真ん中にスクリーンが設えられている。
楽しみにしてきた活弁の坂本頼光先生。噂は聴くが初めてなのだ。

題材となる映画は、昭和12年のマキノ正博監督作品「血煙高田の馬場」。
後の堀部安兵衛である中山安兵衛が阪東妻三郎。
高田馬場の決闘を描いた映画である。
アジャパーの伴淳三郎の名も出てきたが、映画のキャストにはない。どういう登場だったか。
まあいいや。

安兵衛がバッタバッタと叔父の敵を斬っていくのに被せる見事な活弁だった。
としか現時点では言いようがない。
この舞台に今後数多く触れることによって、間違いなくわかってくることが多いわけで、楽しみである。
もしかしてお茶の間寄席でオンエアされるのかな?
国立演芸場のように一旦幕を閉めて撤収。

続いて、なぜか色物連続で宮田陽・昇。
実際にお見かけする頻度以上にこのコンビになじんでいるのは、浅草お茶の間寄席のおかげである。
それでも今年は5月に、ツッコミ昇さんの夫人である柳亭こみち師との会に参加し、実に楽しんだ。
その際に聴き「テレビではできないな」と感じた神社の奉納漫才のネタは、その後しっかりお茶の間寄席で取り上げていた。特にタブーはないのだ。

陽・昇はナイツと同じくマセキ芸能社所属である。
そしてトリの枝太郎師もそうだ。東京の寄席はプロダクションが関係ないところだけども、番組作りになにかあるのかな。
この芝居では、枝太郎師に漫才で落語をやってくれと頼まれているのだそうで。
そんなわけで「子別れ」をやりますと陽さん。
お前、落語の子別れの説明をしてくれと昇さんに振る。なにしろ奥さんがにっくき落語協会の師匠だからな。三遊亭歌る多って言うんだけど。
違うよ!今いじるなよ。
本当は柳亭こみちと言います。桂二葉とかぽんぽ娘とか新しいのが女流界に出てきて、行き場をなくしていますと陽さん。

つる子とか一花でなくて、ぽんぽ娘ですか。

リアルにやろうよと陽さん。
お前が離婚した設定にしよう。そして息子のはるき君と再会するんだ。
無茶振りを演じさせられる昇さん。
そして隙あらば、話の中のこみち師匠に手を出そうとする陽さん。

大工の熊さん兼漫才の宮田昇が、道で息子と遭遇する。息子役は、足を縮めて背丈を合わす陽さん。

昇「お前大きくなったな」
陽「おとっつぁんは人間が小さいね」

息子のはるき君から、おっかさんとおとっつぁんのなれそめを訊く。
漫才協会と落語協会の草野球で、キャッチャーのおとっつぁんがバッターのおっかさんに、ささやき戦法で口説いたんだって?

この人たちも天歌ネタを出していた。

落語以上にオチ捻ってたけど忘れた。
当席だけで捨てるのはもったいないデキ。
もう聴く機会はないと思うが、どこかでぜひまたやっていただきたい。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. 陽・昇のネタ、ここに書かれているのを読むだけで爆笑ネタだと言うことが伝わりました。陽・昇もこみち師も浅草お茶の間寄席にはよく出ているので、このネタを放送してくれないかなあ。

    1. 実に楽しかったのが伝われば幸いです。
      私ももう1回聴きたいものです。
      陽昇の二人は技術も高いし、寄席の目当てになりますね。

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