古典落語・定番クスグリの好き嫌い

落語の構造についても日々いろいろ書いてる当ブログ。
「クスグリ」でタグを作っていなかったことに気づき、驚いた。
今日はクスグリについて。

くすぐるからクスグリ。落語のちょっとしたギャグのことである。
落語を「笑い」の観点で捉えれば必要不可欠に思える要素。とはいえ多く入れればいいかというとそうでもなく。
爆笑ではなく、クスッとするのが上質。
かつてこんなのも書いている。

クスグリ過剰落語

古典落語をやる際にも、創作力は必須。
新作落語と違い一からは作らないものの、三ぐらいからは創作が必要なのだった。
その分、落語を理解していないのに創作に懸命になり、無意味なクスグリで噺を壊してしまう。そんな若手も多々いる。

私もスカッと系の仕事をしていて、元原稿にギャグを入れていく作業をしている。
元原稿が凡庸なら、その作業が功を奏する。
だが、ギャグ以外のストーリー部分がよくできている原稿にたっぷりギャグを入れてしまい、反省することもある。
思いつくと、つい入れたくなってしまうのだ。
やらかしてしまう若手の気持ちもわかるけど。

反対に、クスグリがほぼないのにやたら楽しい噺に遭遇することもある。
二度聴いた桂ひな太郎師の「たいこ腹」はたまらなかった。
たいこ腹は、アホな若旦那とアホな幇間が、人の腹を刺す刺さないで大騒ぎになる実にくだらなく楽しい噺。下手なクスグリがいかにも邪魔になりそうな噺ではあるが、それにしても。

ごく一般的な、使い古されたクスグリもいまだに多い。
一般的でも、ウケるものとウケないものとがあるので取捨選択しなければならない。全部入れりゃいいわけではない。
本来ウケるクスグリのはずなのに、演者がしくじってウケないこともある。
いっぽう本当に軽い、強い笑いを求めない本来のクスグリなのに、初心者が多い席で妙にウケたり。慣れてるから気にしないだけで、実は面白かったのだろう。

そんな定番クスグリについて、記憶を掘り起こして書いてみます。

強情灸

強情灸でよく聴くクスグリが「バーべ灸」。
現代的クスグリなのに、実に頻繁に入る。
展開的に、渾身の力を込めて言うのだけど、なんだかなと思うことが多い。
さらっと言ったら面白そうだけど、すでに強情な男がもぐさ載せてる以上、無理でしょうな。

厩火事

主人公お咲さんは、真剣な話を旦那(亭主のことではない)にしているのに、すぐにつまらんことを言う癖がある。
亭主と別れたいのか別れたくないのか、お咲さんの逡巡の現れであり、上手く使うと心理が描けてすばらしいのだが。
でも個別のクスグリ自体はどうしても面倒くさい。
「もろこし=唐もろこし」「こうし=幸四郎、子牛」「猿旦那」いちいち引っ掛かるお咲さん。
なんだかこの場面、お咲さんが下手な演者と一緒に一生懸命ギャグを言うシーンになってることがある。どのみちつまらないからね。
さらっとやったら客のイラつきが軽くてダメ? そんなことはないはずです。

片棒

三男の場面の「親こうこう」「臭いものに蓋」が好きじゃない。
片棒は次男のお祭りがハイライトなので、三男のシーンはとっとと終えて欲しいのだが、妙にアクセントが付きすぎる。
改良案です。

三男がサラッと「菜漬けの樽に入ってもらって、これがほんとの親こうこう」。
親父「くだらないけど、カネかからないから許す」

軽くてよくないですか。

禁酒番屋

子供の頃にラジオで聴いた一席(演者不明)が忘れられない。
威勢よく、「へい、しょんべん屋で!」と答えるというもの。
一般的にはごにょごにょ「お稲荷さん」とか答えるのだが。
威勢のいいしょんべん屋、誰かやらないかな。

宮戸川

「締め出し食べちゃった」までは別にいい。
これを強調する演出は、ツッコミなしのボケが全盛のいま、時代遅れなので気を付けましょう。
できる限り軽くやってもらいものだ。

無精床

耳を狙う赤犬のくだりはちょっとグロい。
ナンセンスに長けた演者が「そんなバカな」を客から引き出せるならいいと思うけど。
柳家喬太郎師が「綿医者」でもって、内臓を全部取り出す医者が「ホルモン屋が来てるんだよ」というのはナンセンスで全然気にならないのだが。
いずれにしても無精床、客がひどい目に遭いすぎるので、ちょっと古いかな。

目黒のさんま

「殿さま、さんまに会いたいさんまに会いたいと一時期の大竹しのぶみたいなことを言いまして」

今どきこんなクスグリ入れてたら、マジで軽蔑しますよ。
この手の流行ったクスグリ、更新できない化石みたいな演者もいる。

ぞろぞろ

好きなクスグリも書いてみる。ハッカ菓子について。
「あちらこちらに動かすうちにすっかり角が取れて、ハッカの両親も喜んでおります」
やっぱり好きなものは軽い。

かぼちゃ屋

これも好きなやつ。
「(かぼちゃは)新しいよ。さっきまで河岸で泳いでた」

与太郎さんというのは、力を入れずにボケられる最強の人なのだ。

思いつきベースなので今日はこの程度。
また続きを書きます。

 
 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。