カメイドクロック落語会2(下・三遊亭好二郎「茶の湯」)

カメイドクロック向かいのベローチェで、聴いたばかりの第1部をブログに起こしてたらアッという間に13時。
第2部はなかなか盛況である。

好二郎さん、もうカメイドクロック落語会は17回目の登場とのこと。
そんなにやってるんだ。どうやら東京かわら版に載る前の、私の知らないコロナ禍時代があるみたいだな。
予定されている4月・5月の4回はこれで最後。
ただ6月以降もまだまだ続くらしい。少なくとも6月は、7日と28日がそう。7日は好二郎さんで、28は未定。
それだけやっているのにマイクの電池切れるんだ。

第1部から引き続きご参加の方もいらっしゃるようでまことにありがとうございます。
笑点のピンク、三遊亭好楽の弟子の弟子の好二郎です。
第1部、すごかったんですよ。公演中にマイクの電池が二度切れるという。
一度くらいは私も経験しましたが、二度は前代未聞です。
なにか私、持ってるみたいです。

この落語会の環境、すっかり慣れまして。
裏で待ってるんですけど、通路から丸見えですよ。
最初の頃は環境に合わせて短い噺をやってましたが、最近は2部のほうで大きめのネタも掛けるようにしています。

1部に続いて、普段から着物で移動しているエピソード。
マナー講師の女性に言われたのだという。好二郎さん、お顔がお黒いですね。色の黒い人は着物着ちゃいけないんです。それが昔からのマナーです。
聞いたことないですが。

おかしな作法から「茶の湯」へ。残り時間20分。
根岸は昔はひなびたところです。今の根岸は林家の巣窟ですが。

ちょっと驚いた。
序盤に重きを置いた茶の湯で、この型は聴いたことがない。
根岸に移った直後から噺が始まる。小僧の定吉が近所を散歩してなにもないところとボヤくのはたまに出るのだが、このあたりが非常に厚い。
師匠の型? 好二郎さんは師匠の前名をもらっているわりにスタイルがかなり違うので、どうだろう。
いずれにせよ誰から教わったにしても、ご本人の創作力あってのこと。
「茶の湯」は、ストーリー自体は単純だし、大ネタのわりによく掛かる印象。
シチュエーション描写に頼らないと持たない噺だと思う。だが好二郎さんのもの、散々聴いたはずのストーリー自体が楽しく、感激してしまった。
ストーリーで楽しむなんて、新作落語ならではの贅沢だと思っていた。

せっかく商家にご奉公に来たのに、こんなひなびたところでご奉公だなんてと嘆く定吉。
ねえ旦那、蔵前に帰りましょうよ。蔵前は毎日楽しいですよ。
私は仕事はもうしないんだから、隠居と呼びなさいと返す。これからは風流に生きようと、デタラメ茶の湯が始まる。

時間的に見て、長屋の三人衆のくだりがないことは明らか。そしてここを除いた後半自体も短いであろうことも、この段階でうかがえる。

デタラメ茶の湯に欠かせない、青ぎなこと椋の皮の説明が面白い。
椋の皮なんてすでに暮らしから消滅したアイテム。だからといって現代人に説明のための説明なんかしていると、噺が死ぬ。
ではどうするか。好二郎さん、楽しくこのくだりを膨らます。

地のセリフで語る演者。
青ぎなこは大豆からできていますが、この主成分を私調べました。
サポニンと言いまして、大量に摂取すると赤血球の膜が溶けるんです。

青ぎなこでは泡が立たない。
そこで定吉、椋の皮を買ってくる。好二郎さん、楽しい脱線第2弾。

椋の皮というのは、昔の洗剤ですね。
石油と同じベンゼンという成分が含まれてまして。こちらを吸い込むと肺から出血します。

改めて調べると、椋の皮の主成分も同じサポニンとあるのだが、どうなんだろう。
別に正解を求めているわけではないので、構いません。

ストーリーに戻り、隠居が定吉の買ってきた椋の皮の包装を見ると、「食用不可」と書いてある。
いいんだ、食用じゃない。飲むんだからと隠居。

いやあ、面白いな。
現代視点から、隠居と定吉がやってることを解析し、端的に示すという。
下手にこんな入れ事すると、かえって噺が死にそうに思うのだが。死なないな。

予想通り、後半はとんとん進む。これが快である。
噺の編集が得意な噺家には、客目線がしっかりあるのだろう。演者がやりたいことをやりまくるのではなく。
おしめを当てている二人に、羊羹泥棒、利休饅頭。

久々に聴いた好二郎さん、実に味があっていい。
編集能力が高いだけでなく、声ももともといい。
誰かに似てるなあと思う。故人の古今亭右朝か。それも違う気がするが。
なかなか巡り合わないが、またカメイドクロックで聴こうと思う。
たまに語尾がモゴモゴするのだけ玉に瑕。これは多分解消する、

運営はチョンボはさておき、落語好きがちゃんといればいいんだけど。
今回も御簾内で公演中スマホいじってたしな。これも非難ではないのだが。

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作成者: でっち定吉

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1件のコメント

  1. 「根岸は林家の巣窟」についてコメントいただきましたのにNGワードに引っ掛かったようで、削除されてます。
    すみません。
    三遊亭好二郎さん、「大師の杵」は明らかに林家から教わっているので、シャレなんでしょうけども。
    好楽Vs.根岸という構造があっても、王楽師は林家に出入りしているようですし、孫弟子もまた。基本落語界は平和です。

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