亀戸梅屋敷寄席30(上・錦笑亭満堂真打昇進披露口上)

三遊亭とむ改め錦笑亭満堂師匠の披露目、両国の10日間を終えて14日に亀戸で一日。
狙って行ってきた。
個人的に、5週連続で金曜日に出かけるとは珍しい。

狭い亀戸、締め出されちゃかなわないので早めに。
大勢集まっていて、急遽客席と楽屋の間をとっぱらい、椅子を並べる。60人ぐらい入っていたのか。
いつも着物の好二郎さんが、ネクタイ締めて早くから働いている。それかららっ好さん。二人は番頭だそうで。
何度も客の数を数え、そして開場を遅らせますがご容赦くださいとアナウンス。
披露目だからいろいろな人がやってくるのだが、楽屋がなくなってしまったのでみんな袖でたむろしている。

 

雑俳 けろよん
宗論 好二郎
替り目 好太郎
昔ばなし 好楽
(仲入り)
錦笑亭満堂真打昇進披露口上
子ほめ 好の助
手水廻し 満堂

新真打の師匠、仲入りの好楽師が珍しく漫談だけで下りていた。マクラの面白い人だが、それだけというのは初めて。
昨年、好一郎師の披露目では「三年目」を掛けてたんだから。弟子の披露目で漫談だけというのは、大ネタやるよりもずっと一般的な作法である。
ボードには「お世話になった噺家たち」と書いてありました。まあ、適当なタイトルですな。

仲入り後の口上から先に出しましょうか。
狭い高座に、新真打含めて4人乗っかるギュウギュウの口上。これも亀戸のスタンダードなのだけど、昨年など畳を敷いていたが。

司会は好の助師。昨年も司会を務めていた。
それから新真打・満堂師。そして師匠、好楽と、兄弟子好太郎と続く。

ずっと頭を下げっぱなしの新真打に司会が、頭上げたらどう? 上げらんないの? などとツッコむ。
お客さんの同意があれば顔を上げますと振って、拍手をもらい、新真打も顔を上げる。
司会が新真打のプロフィールを。
満堂は歯医者の家に生まれました。お母さんはピアニストです。
16の年にグレて芸人になり、10年やって落語に転身しました。最も楽な一門を探したところ、好楽が引っ掛かったわけです。

好太郎師から口上。
満堂は歯医者の家に生まれたのに「はなし家」になりました。
真打になり行き詰まったら「敗者復活」の心境で挑んでください。

好楽師。
寄席の披露目はこれでおしまいですが、この後伊勢を手始めに全国回ります。最後は来年の武道館で、8,000人です。
ジュリーは7,000人で公演やめましたが、それより多く集めるんです。
まあ、無理でしょう。
埋まったら私は銀座で逆立ちします。私の逆立ちを見たい方はぜひ武道館へ。
昔談志師匠が、山口洋子が間違いなく売れると太鼓判を押した新人歌手に向かって、お前が売れたら銀座で逆立ちしてやるって言ったそうですよ。結局やらなかったそうですが。
歌手は五木ひろしです。

そして好楽師、なぞかけを披露。
錦笑亭満堂と掛けて、富士山と解きます。
どちらも日本一でしょう。
好の助師が、笑点に出てる人のなぞかけじゃないですねと。
いや、本人がそんなの言ってくれっていうもんだからさと好楽師。
新真打に「言ったの?」と訊く好の助師、

好楽師、ここでサプライズゲストを呼ぶ「竹丸師匠!」。
私服の桂竹丸師匠が飛び入りしてきた。好の助師が狭いスペースを譲ろうとするが、いいからいいからと高座の下に座る竹丸師。
おめでたい席なのでやってきました。こう見えましても、落語芸術協会の理事でございます。
私もなぞかけをひとつ。
錦笑亭満堂と掛けて、富士山と解きます。
どちらも先細りでしょう。ごめんね。

(司会に)「名前なんだっけ」
「好の助です」
「あんたじゃないよ。そういえば、あんた九蔵じゃなかった?」
「今度九蔵になります」
というアドリブ漫才も入っていた。

写真撮影コーナーの後、竹丸師の音頭で三本締め。

円楽党は孤立していると思い込んでいる人もいるかもしれないが、決してそんなことはない。
ちゃんと各団体からこうやって師匠方がお祝いに駆け付けるのである。

口上の後は、好の助師の高座。
好の助師が新真打を無理やり高座に上げて言う。みなさん、これ見てください。
こいつ、赤い靴下履いてますよ。
ちなみにこの日の亀戸は緋毛氈が敷かれ、高座も赤、そして後ろ幕も赤なので、わざと履いてるに違いない。

好の助師は、新真打に時間残したいんですけど、足袋に履き替える時間も必要ですからもう少し長くやりますと手短に子ほめ。
この子ほめが見事で。
好の助師、ひとつ上のステージに上がっているなと。
そしてこの一門の躍進の秘訣がわかった気がする。兄弟子の兼好師において顕著だが、みんな自分の言葉で古典落語を喋っている。
好の助師の八っつぁん、上がり込んでいきなり「タダの酒飲ませろ」だが、隠居との関係性まで全部見えてくるタダの酒である。
単に乱暴じゃなくて、そしてとても手短である。

「100歳の人が歩いてたら」「うるさいよ」
「100歳の人が歩いてたら、100歳とはお若く見えます、うるさいよ」
こんなのも、自分のことば。

色の黒い、知らない男に声を掛けるくだりも実に落語としてスムーズ。
伊勢屋の番頭さんとのやり取りも、「45とはお若い」「40なんだよ(ポカ)」と実に短い。
ところで、隠居から子供のほめ方教わってないはずなのに、竹の家に上がり込んで子供をほめだす。
仕込んでいない、アドリブ八っつぁん。
たぶん、本当に年のほめ方だけで下りるつもりだったのに、時計を見てもう少しやることにしたのだろう。
でも乱暴だ。
矛盾しているが、子供のほめ方も出した気になってしまったのではないか。
そんなミスがあったにもかかわらず、すばらしい子ほめでした。
子ほめのくだりは、仕込んでないことに気づいたためか非常に短いものでした。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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