KITTEグランシェ落語会3(上・桂竹千代 コロナ禍草津温泉落語の客は外国人)

亀戸からいったん戻り、昼寝してから18時開始のKITTEグランシェ落語会へ。
来月から18時半開始に変わるそうだが。
復活して3回目。私は先月に続いて参戦。
今回は高座の最中隣の物販ブースに入り浸る客もおらず、実にいい環境でした。
落語をやってるすぐ隣で話し込める感覚は信じられないが、でも落語の客じゃない以上非難などしようがない。
芸術協会の二ツ目が順に出る会だが、今回は桂竹千代さん。
先月から楽しみにしていた。

コロナ禍の草津温泉落語
千早ふる
コロナ禍の温泉珍事件
サオリ9号
古事記

3席だったのだが、「千早ふる」「サオリ9号」のマクラはそれぞれ本編とあまり関係ない仕上がった漫談だったので、勝手に独立させてみた。
「コロナ禍の温泉珍事件」のほうは、ご本人がそう語っていたので、丸ごと私が付けたタイトルでもありません。

草津温泉のエピソード以外はすべて聴いたことのある内容だが、まったくガッカリなどしなかった。
むしろ、そのパワーアップ振りがよくわかって感激。
もともと落語の腕の高い竹千代さんが、ここに来てお笑いスキルを強化し、トッピングしている。びっくり。
噺家になる以前に芸人時代のある人だが、落語に来てからお笑いスキルを強化してくる人というのはなかなか珍しい。
すべて、会話の妙である。セリフの緩急で客を爆笑させる。

芸術祭新人賞を二ツ目ながら獲ったこの人、私は数年前から勝手に抜擢候補にしているのだが、だんだん香盤が上がってきて、もうなさそうな感じ。
でも、ひとり真打だったらあるんじゃないかな。
実のところ抜かれるほうに思いを馳せてしまうので、抜擢推奨派でもなんでもないのだけど。

冒頭の司会の人は、今月は「○○のほう」という表現は抑え気味にしていた。
前回、私が触れたからだと思うのだ。
カメイドクロックもそうだが、なにか書くとなにか現場に影響が出るようになって面白いな。
ただ、まだツッコミどころはある。
「竹千代師匠」とか、「来月は笑福亭茶光師匠」などと言っていた。まあ、目くじらを立てるものでもないとは思うが。
あとプロフィールに笑点特大号のことも。ちょっと出ただけだからご本人的には触れられたくないと思う。
笑点側とすれば、「無頼キャラ」がひとり欲しかったのだと思う。

竹千代さんはもともと圧が強い人だが、さらに強くなっている。
ただしその圧の強さを高座の中で完結させ、客にはぶつけて来ないようになっている。だから聴いてプレッシャーにはならない。
これが三平師と大きく違うところ。

4年振りのKITTEグランシェ落語会です。
名称がKITTEグランシェ落語会なのか、東京シティアイ落語会なのか、どっちなんでしょう。統一しないんでしょうか。
コロナ前と変わったのは背景ですね。この金屏風が、いえ屏風を買う予算はなかったようですが。
その代わり踏み台がどこかの倉庫から拾ってきたような。まあ、いいんです上がれれば。
今はこうやって通路の音がシャットアウトされてよくなりました。以前は野外みたいでした。

名称の件は、私も前回気になったのだが。
言えてしまうのが竹千代さんならでは。
館はKITTE、この地下1階はグランシェで、会場は東京シティアイなのである。

4年前に来てたという人、います? あ、結構いらっしゃいますね。
私の高座を聴いた人って? あ、ありがとうございます。
ああ、覚えてますよもちろん。ちょっとお痩せになりました?
4年前になんのネタをやったのか思い出せません。古いネタ帳ももうないので、被ってしまうかもしれませんがいいですよね。
今日のお客さんはお若いですね。さすが東京駅です。

芸協の草津温泉落語について。
毎日やってます。コロナ禍でもやってました。
昼間は湯もみショーの会場で、目の前にはお客さんでなく、湯があります。つまらない落語をしたら、前の熱い湯に飛び込まなきゃいけなんじゃないかと思わせられます。
あるとき、今日のお客さん2名ですと言われました。2名なら全然いいじゃないですか。
コロナ前から、少ないことはありましたよ。お客さんひとりだとやりづらいです。カミシモ振ってる間に逃げられますから。

お客さんは若い女性2人でした。
ですがなんだかポカンとして聴いています。
どこから来ましたかと訊いてみました。そうしたら、ベトナムと台湾でした。
なんとか話を膨らませられないかと思いましたが、ベトナムは行ったことがありません。
ただ、台湾なら行きました。台北だったらチャンスです。どこから来たのか訊くと「台南です」。終わったー。

外国人のお客さんは難しいです。なにしろシャレがわかりませんから。
こんな小噺ですよ。就職決まったんだがブラック企業だ。色がついてるだけマシだろう。確かにお前無職だもんな。
仕方ないのでひとつずつ説明して、ようやく理解はしてもらえました。

「台南です。終わったー」の流れるようなつぶやきに、いたく感心したのでした。
これはもう、落語のみならずもっと広い世界で活きるお笑いスキルに相違ない。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。