プーク新作落語寄席 その4(柳家小ゑん、新作台本募集を語る)

仲入り休憩時、水分補給でもしたかったが通路側の人が二人動かないので、もういいやと我慢。
ひとりならまだしも、ふたり立ってもらって出るのは気が引ける。残り二席、正気で行きましょう。

古今亭駒治「楽しい山手線」

先月も聴いた古今亭駒治師。もっと聴いていきます。
というか、この日が恐らく30席目ぐらいで、私が最も数聴いてる噺家なのだけど。

私、このプークは非常にありがたいんですね。なにしろ家から近いです。
マクラは先日「新作落語せめ達磨」で聴いたものと同じ幡ヶ谷ネタ。
今回は鉄道落語だ。

山手線の各駅が集められる。駅はもちろん擬人化である。
なんでも、山手線に急行を走らせることになったので、集められたマイナーな駅たちから停車駅を選抜しようというのだ。
集められたのは、鶯谷、駒込、巣鴨、大塚、目白、高田馬場、新大久保、代々木、目黒、五反田、大崎、高輪ゲートウェイ、田町、神田、御徒町、そして日暮里姉妹。
メジャーな駅は当然急行停車駅なので、呼ばれていない。
なんだ、田端までいないじゃないか、どういうことだ。田端はJR東日本の本部があるから停車駅なんだ。あんたたちの都合かよ。
鶯谷には日本のラブホテルの3分の2が集まってるとか、高田馬場はいつまで早稲田大学の最寄り駅ヅラしてるんだ、徒歩15分なのに、とか。
日暮里姉妹(日暮里と西日暮里)は影が薄いとか、大崎はどうしてそんな「大崎止まり」が多いんだとか。
田町はなにか自慢があるのか。品川と浜松町の隣です。高輪ゲートウェイはどうした。
代々木はアニメーション学院があると自慢するが、もう神田に移転して、ない。
これを自慢する神田の神田外語大学も、千葉に移転している。

最近の駒治師のマイブームなのか、決選投票を客にゆだねる。
五反田、日暮里、大崎の3駅で決着しようというのだ。
結果、客の拍手で日暮里の勝ち。でも辞退する、日暮里姉妹の姉。

初めて聴いたはずだが、なぜか既視感がある。
駒治師の鉄道落語だから当然? そうかもしれないが、配信で聴いたかな。
あとは清麿師の「東急駅長会議」に似ているせいだろうか。

実に軽いバカネタで、クイツキにピッタリだ。寄席でも間違いなくウケるはず。
それどころか、大阪でやってもバカウケ間違いないと思う。伝わらなければ、大阪環状線の駅をたとえに出せば爆笑間違いなし。
というか、桂しん吉師があちらに移植しそうだけど。その際は御堂筋線にすれば、「中津止まり」という鉄板ネタがある。

柳家小ゑん「長い夜」

トリは小ゑん師。
ネタは「長い夜」。「改Ⅱ」はもう取ったみたい。
メルヘン要素に満ちた、私の大好きな噺で嬉しいのだが、この噺についてはフルバージョンのレビューがあるのでそちらに譲ります。

池袋演芸場14(柳家小ゑん「長い夜・改Ⅱ」)

もう5年前だ。
今回もまた、「おでんが喋る」など擬人化について振ってから入る。その際、ぐんまさんのモグラの噺を激賞していた。
長い夜は、「大空」と「大地」を擬人化し、人類の進化を楽しむ壮大な(笑)噺。ウラノスとガイアらしい。

今日の残りは、小ゑん師のマクラで埋めます。
落語協会新作台本募集について。見逃せないでしょう。師がいつも語ったり、ツイートしたりしてる内容とも重複するが。

この時季はずっと応募台本を読まないといけない小ゑん師。
台本の読み手はそこそこいるのだが、全部に目を通す人間が6人いて、いつも私はそれに選ばれている。
まあ、つまらないのが大部分。
5段階で☆を付けていくが、読み終わった中、大部分は☆1つか2つ。☆4つが2作。
形式面にのっとっていない作品が多すぎ、手引き動画をアップしたりしているのに、観てもくれない。
セリフのカギカッコが一切ない作品が結構ある。セリフなんだか地の文なんだかわけがわからない。
特定の知識をひたすら解説しているものもある。面白くもなんともない。
なんだか知らないが隠居と八っつぁんが会話をしているのに、テーマが現代。落語というものは、隠居八公と思っているのか。現代の登場人物に直せばいいのに。
あと、漫談。
漫談なんて、談志師匠とか、その人が喋るから面白いわけで。台本で漫談なんて面白いわけがない。
それでも、画期的な作品でもあれば別だ。だが、内容はほぼ世間に対する愚痴。

募集要項に15枚とありますけど、みんな15枚書いてきます。
そんなに要らないんです。15枚は上限ですから。10枚でいい。
10枚だと、15分の落語になるんですけど。

残念な作品があった。
社内の会話。絶対に謝ろうとしない部下を持った課長が、部長に相談している。
部長のアドバイス。そいつはどこの出身だ。なに、大阪。なら、「謝ったほうがウケるよ」と教えなさい。
他にもやはり謝らない部下がいます。そいつは東京出身か。なら、「謝ったほうがイキだよ」と教えなさい。

これ、面白いでしょ? と小ゑん師。
なのに、このパターンを47都道府県やるんですよ。
なんてもったいない。せいぜい5つぐらいにしておいて、あとは上手いこと噺にまとめたらいいのに。
こうしてみるとやっぱりプロはすごいですね。前座さんから見事な新作を作ってきますよ。
そして安易な擬人化をたしなめ、本編に入っていったのだった。

私も一度応募したキリだなあ。落ちた作品は改稿して当ブログに載せています。
今年も漠然としたアイディアは持っていたのだけども、書く前に消えてしまいました。大したことなかったんでしょう。
私は、自分で読んでよほど自信があるのができたら応募します。

というわけで、小ゑん師のマクラで終わってしまいますが、プーク新作落語寄席は非常にエキサイティングでありました。

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作成者: でっち定吉

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