上方落語家に東京の噺家の名をちゃんと発声してもらおう

ネタが本当になくて、ほぼ2日休んでしまいましたが、ようやく思いついたので午後11時にアップ。
ブログのトップに、昔の記事を張ってみました。わりとアクセスよかったので、もう少し露出を増やしたい過去記事について、またやろうと思っている。

たまに噺家の名前のアクセントについて書いている。
慣れないと、噺家の名前を正しく発声するのはなかなか難しい。
私は、「絶対こう発音しないとならない」と、堅苦しいことを言う気はない。そもそも、本当に正しいアクセントがあるかどうかわからない。

一応は、プロの発声に従おうとは思っているのだが、なかにはやる気をなくすのがある。
私にとって最もハードルが高いのが、「(金原亭)馬太郎」。
普通に読むと、「マタ」にアクセントが来る。それでいいじゃないのという気もする。
だが、業界では得てしてこれをフラットに読むのだ。
金太郎のように。この名跡は山遊亭くま八さんが継いで復活しますが。

桂枝太郎師は名乗るとき、「ダタ」に若干アクセントを置いている気がするのだが。
これも本来はフラットに読むらしい。だが当代、あえてアクセントをつけているかも。

最近、考え直す機会があった。
「(尾上)菊五郎」は、芝居好きならみんなフラットに読んでいると思う。ようよう音羽屋。
噺家でも、「金語楼」「三語楼」「甚語楼」等はみんなフラット。これはわかる。
だが、菊五郎だと生理的にやや抵抗があるのだ。
とはいえいちいち逆らって、「馬太郎」や「菊五郎」にアクセントをつけて読むのも失礼かなと。
逆にフラットに読むのが正解と考えて、「桃太郎」を無アクセントで読んだりしないようにしなければならない。

さて、本題はまた別である。
先日米團治師の対談を聴きにいった。米團治師、「志ん生」「圓生」を正確に発声していて、ちょっと驚いたのだった。
なにしろ上方では、人前でもみな冒頭アクセントでこの、昭和の名人を発声するのである。
大名人圓朝すら、「園長」のアクセントで読んでしまう。志ん生は「身上(潰す)」。
今度、橘家圓喬という大きな名前が復活すると見込まれているが、また関西人の発声できない名前が増える。

リスペクトが足りないと言えないこともないのだが、もう長いことそう読む習慣で来てしまっているのだろう。
志ん朝に相当お世話になったという桂坊枝師まで、「清朝」のアクセントで呼んでいた。
ちなみに春風亭三朝という人がいるが、三朝だったらこのアクセントで合ってるはず。師匠の一朝も同じ。

桂佐ん吉という噺家がいる。
この名前の付け方は、上方ではわりと珍しい。
先輩たちにはおおむね、ええ名前やなと褒めてもらったようだ。
先日、東京の噺家だけで名前に最もよく使う字をリサーチしたところ、1位は「ん」だった。だが、上方には非常に少ないと思われる。
しかし、東京風の名を持つ佐ん吉師まで、ラジオでは「清朝」だった覚えがある。

アクセントは関西のほうが複雑で、多い。なぜ東京の頻出の噺家の名前が発声できないのか、謎である。
実は「ヤンキー」のアクセントで発声すればいいのだけど、これはあんまりわかりやすい例ではない。

米團治師がちゃんと発声できるのだから、他の噺家にもできないことはなかろう。
先日、古今亭志ん橋師が亡くなった。
この際、関西人に正しく発声してもらおうと思い、発声の仕方を書いた。
「新京極」を言うつもりで、「新京」まで発声し、そこでやめてしまえば正解になると。

この例をもうちょっと拡大してみようと思う。
志ん生も「新生姜」と言うつもりで、「新生」で切ってしまえばいい。
志ん朝は、「新庁舎」を「新庁」で切る。
圓朝はちょっと例が難しいが、「園長会」ならOK。園長だと違うのに、後ろに何かつけるとOKという不思議。
圓生も、「演唱会」なら。これは中国語でいうコンサートである。

さて現代の噺家でも、「(柳家)さん喬」は関西人には言えまい。
笑福亭松喬師の前名は「三喬」であったが、これも冒頭高。三喬とさん喬、区別せよというのはちょっとキツい。
三喬は、サンキューのアクセント。
さん喬はどう言えばいいか。「三教科」のアクセントで、「三教」で止めてしまえばいい。「三兄弟」でもいいです。

例を挙げてみるとわかるが、関西人が「志ん生」を発声できないのは、なんだかその後も続く感じがぬぐえないからなのだろう。
続きそうだがグっとこらえると正解です。

それほど役に立たない内容でひとつできました。

作成者: でっち定吉

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3件のコメント

  1. こんにちは。
    上方アクセントだと「新京極」「新生姜」「新庁舎」「三教科」「三兄弟」の例すべてが二文字目の漢字にアクセントが来るから、この例で上方落語家に教えると余計ダメですね。「園長会」だけが東西同じです。

    1. そうですか?
      まさに、二文字目の漢字にアクセントを置いて欲しかったのですけど。
      確かに、コテコテの関西人の場合、東京で同じ発音するよりややアクセントが上に行くかもしれません。ただ、上げ下げの理屈は合ってると思うのですけどもね。

  2. なるほど、私の勘違いですね。頭のかな3文字が平板で最後が下がるのが正しい江戸の発音かと思っていました。上方噺家は頭にだけアクセントをつける人が多いので。

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