新真打雲龍亭雨花の披露会見に師匠出席せず

春風亭昇太会長「女流という意識を持たずに自由に」 シングルマザーで入門した雨花ら新真打ちに期待(ENCOUNT)

2024年5月から落語芸術協会は3人の新真打登場。その披露会見が2月29日におこなわれた。
昇進は3人。

  • 雲龍亭雨花(春雨や風子改メ)
  • 四代目山遊亭金太郎(山遊亭くま八改メ)
  • 三代目松林伯知(神田真紅改メ)

春雨や風子さんは、亭号も変える。
気の毒な人で、昇進を二度飛ばされた。
2021年春に同期(小笑、昇々、昇吉、羽光)が上がったが、風子さんは香盤がその次だった。
芸協で5人も同時に上がることはそうそうなく、これは仕方ないともいえる。だがこれを含めるなら三度だ。
2022年春、柳雀、昇也には明確に抜かされた。このときはじめて世間がザワついた。
そしてトドメが2023年春で、翔丸、吉好、明楽にも抜かされた。
昇也師はともかく、2023年の昇進組に比べると風子さんのほうがスター性は上だろう。

現在の真打は、芸術協会も落語協会もおおむね年功序列。
ヘタクソでも、真打昇進後仕事のないことが明らかな人でも、辞めなければみな真打になる。
逆に、ちょっとぐらい上手くても年功序列で同時に昇進。
このたび落語協会でつる子、わん丈が抜擢昇進するが、このルートに乗るのは極めて難しい。
なにしろ主要な大会である「さがみはら」「北とぴあ」と2冠獲ってる吉緑さんまで抜かされる側なのだ。

年功序列真打に不満を持つ人もいるだろうが、長年争いが絶えなかった中で生まれた関係者の知恵なのだ。落語協会だってこれで分裂してるんだから。
芸術協会の会長だった歌丸師も抜擢に反対した。歌丸師が亡くなったので伯山、宮治と抜擢されたのである。
年功序列だからって、真打披露がめでたいものでなくなったわけでもなく。

ともかくそんな運用がなされている中、二度も真打昇進にストップがかかるのは尋常なことではない。
休んでいたわけでもないのだし。
芸協はこのことについてなにも語っていない。語る性質のもんでもないが。

風子さんの師匠、春雨や雷蔵師が認めないかららしいということは、だんだんわかってきた。
だが、これがそもそも意味不明。
長いこと年功序列でやってるのに、急にひとりだけ「師匠として弟子の真打は認めない」を振りかざされても戸惑うばかり。
風子さんが顔マネなどやってるのが気に入らないみたいだ。これは今回の昇進コメントからもなんとなく読み取れる。

風子さんは相変わらず顔マネをやってるし、師匠の方針が急に変わることもないだろう。
そうすると、永遠の二ツ目に留め置かれてしまう。圓生の時代じゃないってえの。
ただ、我が道を行く師匠。
雷蔵師、芸術協会ではかなりの重鎮で、香盤は上が寿輔、下が歌春。
でも役員でもない。
師匠の腕は確かだ。NHK新人コンクールと、芸術祭優秀賞。
日本の話芸にも出ていた。
スベリウケのようなウケないネタを堂々語り、しかし変な空気にしないというスゴ技。
だが、こじんまりしてファミリー要素の強い芸術協会においては、ちょっと浮いた存在のようだ。
かつて桂伸衛門師も、二ツ目時代に移籍させてしまった。行き先を決めてやったから破門とはいえないにせよ、同じようなものではある。

シングルマザーの風子さんを入門させてくれたのだから、この点でいつまでも師匠には頭が上がらないわけだが。
今回の風子さんの亭号変更にも、なにかしらの緊張感が漂う気がする。
天気つながりなので、一門を離れるわけではないようだ。昇進後離れても不思議はないけれど。

今回の2年遅れの昇進については、芸術協会でも数限りない働きかけが師匠にされたものと思われる。
それこそ、「俺が引き取って真打にする」みたいなやり取りだってあったと、100%想像だけど。
協会運営の側からすると、スター候補が塩漬けになっていたら困るのであった。
そこで、師匠の基準は相変わらず満たさないが、しぶしぶみたいな落着ではないか。
師匠に基準があっても、誰も真打に育て上げてないからわかりようがないけど。そうかと思うと、協会員でないシロウトをなぜか真打認定していたりして。
二ツ目に晴太さんという、なかなか将来性漂う人がいる。この人は、関係あるのかないのかわからないが体調不良で休養中。

ともかく偏屈な師匠、披露会見に出席していない。
オレは認めてないってとこか。
くま八さんの師匠、南なん師だって、元の師匠である兄弟子・先代金太郎逝去後預かっただけだがちゃんと出席している。当たり前だ。
これは雷蔵師、披露目の口上にも並ばないのではなかろうか。

山遊亭くま八さんも、紆余曲折ある人で、元立川流。快楽亭ブラック門下。
だが、芸術協会に入り直して普通に修業をしている。立川流時代はカウントされていない点が、元兄弟子の吉幸師と違うところである。
先代の金太郎師の高座は私も聴いている。
前座さんが次の高座の支度をしている間にとっとと上がり、座ってしまうというのを思い出す。
ちなみに金太郎は山で遊ぶのであるから山遊亭。

作成者: でっち定吉

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5件のコメント

  1. おじゃまします!

    最近、「あの場合はしょうがなかった」を座右の銘にした風子さん。
    真打昇進のあいさつで「雷門門下の・・・」と語ってたことからも偏屈な師匠に春雨やは名乗るな!と言われたのかな?などと邪推する今日この頃です。

    1. いらっしゃいませ。

      なにもかも不自然すぎますから、邪推も仕方ないところですね。
      弟子の晴れ舞台を妨害するなんて尋常じゃないですね。
      ところで今回のネット記事、
      〈雨花の座右の銘「あの場合はしょうがなかった」に壇上の師匠らも苦笑い〉
      と中見出しがあるのに、それに関する言及がないですよね。

  2. コメント失礼します。
    新真打の記者会見というおめでたいことなのにモヤ〜っとするような事象ですよね。
    もし披露興行にも雷蔵師匠が参加しないとなれば本当に圓生師匠と同じですね。
    今休業中の晴太さんが伸衛門師匠のように別の一門に移籍したら「あぁそういうことか…」となるなぁと考えてしまいました。

    1. いらっしゃいませ。まったくもってモヤりますね。
      弟子の出世を師匠が妨げるとは、ある種破門よりタチが悪いのではないでしょうか。
      このあたりの事情、風子改メ雨花師匠から、いずれ語られると思うので勝手に期待しております。

  3. 雷蔵師匠も大人気ないですね。
    弟子の披露目の記者会見を欠席するなんて、まるで圓生師匠みたいですね。
    雷蔵師匠の芸は古典も芸協新作も好きな方なのでちょっとがっかりです。

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