林家木久扇「渋谷に寄席を」

2月25日開催の落語協会100周年記念式典が、3月1日になって報道されている。

落語協会100年「渋谷に寄席を」 木久扇、会見で若者にアピール

2月29日の芸術協会真打披露記者会見のほうが先にメディアに出ているのだが、いろいろ調整があるのでしょう。
協会の報道は寄席興行の区切りに合わせたものかもしれないが、芸協さんの披露目に被せるような野暮はしない。
世間の人は協会が二つあると聞くと、勝手に対立していると思いたがる傾向がある。二つあるなんてムダだとも思う。
本当に分裂した講談界と比べると、落語の二協会は基本仲良しであります。
この感覚、一般にはなかなかわからないだろうな。落語好きであっても、初心者にはわかりにくいと思う。

最近の報道に連れて、「落語協会と落語芸術協会とはなにが違う? 笑点メンバーに訊きました」というネタ記事に、毎日流入があります。
おかげで過去記事のアクセス数12位まで上がってきた。11位は同じく検索流入の多い「『つまらない落語家ランキング』だと?」。
この上は、1位の「七代目三遊亭圓楽は王楽に違いない!そして圓生は・・・」を除くと、破門関係ばっかりだ。

「落語協会 落語芸術協会 違い」検索で1位になるのは、ネタ記事よりは役に立つだろうが、実につまらん記事。
なにせこんなことが書いてある。

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二大派閥である落語協会と落語芸術協会の違いを端的に示す言葉が「古典の協会、新作の芸協」です。
落語協会が古典落語を中心とする寄席芸能の普及・研究・継承を活動の主眼に置いていることに対し、落語芸術協会は新作落語の創作・研究に努めています。

§

いつの時代の話じゃい。
今や新作落語は完全に落語協会主体になってるのに。
池袋3月下席は、毎年恒例の新作台本まつり。12月下席もずっと新作まつりだ。
8月のプークも、芸協の新作派は申しわけ程度にしか入っていない。
いっぽうで芸協の寄席に行ったら新作ばっかりか。全然そんなことはないのであって。
まあ、この手の記事はクラウドワークスあたりで1文字1円で募集してますからね。さして知識がなくても、調べて書く。
私だって書いたことあるけど。

さて、今日の記事はいちゃもんを書きたかったのではない。検索順位にケチをつけたりしたら、即ブーメランだし。
落語協会100周年のほうで、林家木久扇師が「渋谷に寄席を」と発言したという。下地もあるから。
渋谷か、と思って。

渋谷らくごに行ったことがいまだになく(避けてるわけじゃないですが)、渋谷と寄席とがあまりにもピンとこなくて。
下地というのは、東横落語会とか、東急文化寄席などらしい。うーん、なんだか文化の香りが濃厚に漂う。
東急沿線と縁のなかった小学生時代の私にだって、あのあたりの文化は濃厚に漂ってきたもんだ。
ただ、渋谷がダメになったなんて言う気は微塵もないが、今は文化の香りは感じないですね。

それにしても都内4つの「寄席」というのはこうしてみると改めてすごい存在だと思う。
いまどき、毎日昼夜の興行をしてるのである。よくできるよな。人形町末廣が閉鎖されて以来、寄席は潰れていないのだった。
鈴本も、末広亭もコロナ禍はピンチだった。
そんなものが、新たにできる余地があるかな? まあ木久扇師は常設の小屋ではなく、ホールや映画館などでの開催を念頭に置いているのだろうけど。

渋谷もいいけど。個人的に私は行きやすいし。
とはいえ地域的に、今でも落語みたいなものの素地があるのは、城東あたりのほうかなと思う。
門前仲町なんて、辰巳の辻占の舞台。寄席が1軒あってもよさそうなところだが。
深川東京モダン館では三遊亭圓橘師が会やったりしてますが。行ったことはない。

あとは、伝統的な素地ではなく、ブンカに鋭敏な中央線沿線も落語は盛ん。
最近も高円寺落語まつりがあった。
その先の阿佐ヶ谷とか、私もたまに行ってますね。

品川・大田・目黒あたりは非常に落語会は少ない気がする。渋谷が限界。
目黒のさんま、品川心中、居残り佐平次の舞台も、意外と文化的な香りが薄いようである。
こういうところに寄席小屋建てても、すぐ潰れそうだ。
それぞれ、地元で会やってる師匠はいるのだけども。

ちなみにこのあたりで意外と何とかなりそうな気がする街がひとつ。武蔵小山。
ここは謎のパワーを持っていて、最近増殖している気が、ちょっとする。
武蔵小山は現在進行形で、自由が丘とか学芸大学とか、近隣からパワーを吸い取っている最中である。
今のところ、スクエア荏原というホールで落語会をやってるだけなのだけども。

作成者: でっち定吉

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5件のコメント

  1. 「太田」ではなく「大田」です。
    戦前の大森区と蒲田区が戦後合併して大田区になりました。

    1. ご指摘は感謝しますが、このブログの読者の方なら、私がマウンティングや教え魔が嫌いなことはご承知いただきたいものだなと。
      日本ハムに大田と太田が同時期にいたことなど触れていただくとか、なにかしらユーモア返しをしてくだされば苦笑しながら直すんですが。

      ちょっとカチンときたもので、「太田」のほうへ行った話を張っておきます。
      https://detchisadakichi.com/?p=2132

      1. 大変失礼致しました。
        ただ大田区在住の者としては看過できませんでしたので。 
        お気を悪くされませぬように

  2. お邪魔しまーす。
    深川江戸資料館小ホールなんて常設寄席したら楽しそうだなーなんて思いますが。
    落語の世界観がそのままあるセット?も観れるし。

    1. そうですよね。
      あそこふだん何に使ってるんですかね?
      下席だったら芸協の人すぐつかまりますから定席できそうですね。

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