風子の落語八百席(中・雨花&金太郎 真打昇進について)

メクリのサイズが風子さんだけ違って、短い。
いちばん前に風子さんのメクリが来るので、その他は高座の上に下半分を折り曲げて置いてあった。
それが引き出され、神田紅佳さん。
釈台も登場。一席終わった風子さんが高座の上に釈台を据えて、座布団をめくる。
真打昇進の真紅(改メ松林伯知)さんの代わりに妹弟子である。

師匠が紅なので一字もらい、「佳」の字は本名です。佳子なんです。
師匠は名前を付けるのが上手いです。
寄席ではあり得ないことですが、楽屋(客席の後ろ)の隙間からお姉さんの高座を観ていました。
華やかでいいですね。化粧も上手いし。

知らずに来て聴いた一席だが、実にいいものだった。紀伊国屋文左衛門みかん船。
芸協の寄席で聴く講談、当然女流が多いのだがひとつだけ不満がある。
どうしてあんなにいつも、笑いどころを露骨にこしらえるのだろうと。落語に対抗するためなんだろうけども。
でも紅佳さん、大荒れの海の中豊作のみかんを江戸に運ぼうというマジな男の話を堂々と読む。
命知らずの船頭でも尻込みするが、船頭のおかみさんが50両もいただけるならと亭主の尻を押す。このところ漁にも出られないから生活がかつかつなのだ。
ここに笑いがある。ごく自然なこれだけで十分すぎるぐらいだと思うのだけど。

死に装束に身を包み、嵐の海を江戸に向かう一攫千金ギャンブラーの話は手に汗握るスペクタクル。
映画化したらいいのに。

仲入り休憩はごく短い。
3人高座の前に並んでトーク。
許可もないのに写真撮影が始まる。私も念のため撮ったのだが、休憩時に立ち上げていた電源を、ご丁寧にトーク開始とともに切ってしまった。
再度立ち上げて写真撮りはしたが、デフォルトのカメラ設定を誤っていてブレている。

上手から風子、くま八、紅佳。くま八さんより背の高い風子さんは、立ち姿が非常にキレイな人である。
一緒に昇進する真紅さんは別に急な休演でもなく前からの予定だそうで。
ただ、それは別にお客に断らなくてもいいかなと思っていたと風子さん。

真打昇進についていろいろ語る。
くま八さんは、亡き師匠の思い出について。
師匠が亡くなる間際に、「やまあそび亭」を残してくれと言われたのは確かに聴いた。
その後昇進の話が来た時に、すでに山遊亭金太郎の襲名が既成事実になっていたので驚いた。恐らく、小南師匠が尽力してくださったのだろうと。
不在の真紅さんについては、継ぎたい名前が継げてよかったねと。
風子さん、「私も春雨や雷蔵襲名してもよかったんだけど」。まだ無理でしょとマジなくま八さんのツッコミ。

風子さんの昇進遅れはデリケートな問題で、師匠に気を遣うのでSNSには上げないでと。
昨日も書いたが、別に衝撃の事実はなにもなかったです。
ちなみに一昨年昇進しないのは事前に知っていたが、昨年の昇進組については、ヤフーで知ったのだそうで。事前にはなにも話が来なかったわけだ。

披露会見は昇太師匠が気を遣ってくれて盛り上がったのだという。我々シロウトにはその様子は全然わからないのだが。
「あのときは仕方なかった」という座右の銘について。
人生のそのときそのときの判断、結果的には正解では界ではなかったかもしれない。だが、そのときはそれがいいと思ってやってきたと。
まあそうですよね。

すぐにくま八さんが高座に上がる。
メクリは、トークの途中で「山遊亭」を説明する際にめくったままである。
くま八さんの高座は一度しか聴いたことがない。池袋の定席で。
そういえばあのときも、不規則発言するクソみたいな客がいて気の毒だった。
日ごろ、どこで活動してるのだろう?

真打昇進は大変ですと。準備をずっと進めてきて、全体の3分の2ぐらいは終えたのに、でもなにひとつ始まっていないんですと。
ただ、風子ねえさんという中心になる人がいてくださるのでだいぶ助かります。
披露パーティの請求書見て腰抜かしました。いくらだと思います? 900万円ですよ。
なんだか大したことないなという空気ですが。
風子ねえさんはいいんですよ。太いお客さんもありますし。ぼくなんかそれほどお客さんいませんからね。
まあ、そういうことですのでよろしくお願いいたします。

このスタジオフォーは二度目です。
実にいい空間ですよね。
そしてオーナーがいいです。今日はいっぱいですけど、空いてる日もありますよね、立川流の寄席とか。
そんなときもニコニコしてらっしゃいます。
この高座の後ろの金属のモニュメントもいい感じで。
大学が造形系だったので、溶接したり、こんなことしてたんですよ。卒業制作もしますし。

大学の友人の話は面白かったが、披露目の席のマクラになるだろうから今日は書かない。

本編、東京ではかなり珍しい「胴乱の幸助」に続きます

 
 

作成者: でっち定吉

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