風子の落語八百席(上・エンタテイナー雲龍亭雨花)

4月初めて出かける。
巣鴨スタジオフォーで、「風子の落語八百席」。
来月、雲龍亭雨花で真打に昇進の、春雨や風子さんの会。
先日神田連雀亭で、ご本人から招待券をもらったので来ることにした。
本当は、こんな真打昇進直前の時期に、タダ券もらったなんて喜んでる場合ではないのだ。
むしろ祝儀を切るなりしないと。
まあでも、披露目に行けばいいでしょうか。

春休みだから都営地下鉄500円パスが出ているのにうっかりしてしまった。
JRで行く。

満員に近く、イスを増設している。
受付に出てきたのは、見たことのある人。山遊亭くま八さんだ。
雨花師匠と一緒に、金太郎を襲名して昇進する人。

悋気の独楽風子
紀伊国屋文左衛門みかん船紅佳
(仲入り)
風子・くま八・紅佳トーク
胴乱の幸助くま八
水神風子

独演会なのかと思っていたら、くま八さんも、そして神田紅佳さんも高座に上がる。
紅佳さんは、姉弟子、真紅さん(松林伯知で同時昇進)の代演とのこと。
主役が2席だが、三人会という触れ込みらしい。

いい会だったが、隣の客が終始ぶつぶつひとりでつぶやいているのがすごくイヤだった。
かつてもこのスタジオフォーで、おんなじ目に遭っている。同一人物じゃなかろうか。
ぶつぶつったって、隣の耳に入る前提で喋るわけだからな。

トップバッターは風子さん。
今日のタイトルに昇進後の名前を載せているのは、昇進後は前名で検索してくる人がいなくなるから。
「入船亭小辰」なんてもう誰も検索しない。

「今日春雨や風子を初めて見る人?」。数人の手が上がる。
5月から真打昇進が決まりますと言って拍手をもらう。
真打が遅れたゴタゴタについて語るということはなかった。仲入り後のトークでちょっと話していたが、SNSにアップしないでということなので書きません。
もっとも、意外な話が出たわけでもなく、誰からも聞いていないのにすでに当ブログにもわりと書いている内容だったが。

身分制度を語る。二ツ目になると羽織も着られて人間扱いされますと。
そして、前座のことを無意識に「前座さん」と呼ぶようになるそうで。昇進後、自分で驚いた。
そして一人前扱いされると、今度は超ベテランの師匠を勝手にライバル視するようになるそうで。誰のことだ。

「今日落語が初めてという人?」これは手が上がらない。
落語偏差値を測るために、落語の基本の小噺を披露するので、わかったところでオチを言って構いません。
と断って、ねずみの小噺。
オチの前で耳に手を当て、客に一斉に「チュウ」と言わせる。
数人フライングした客に、「適切なところでと言ったでしょ」。
続いて、オリジナル小噺を同じように。
それから顔マネコーナー。「芦田ママ」「綾瀬はるかかなた」、それからもっとも似ている秋野暢子の笑顔。

落語の高座だが、ショーパブみたいな愉しさ溢れるマクラである。
笑点の収録もあったそうで。
来週流れるということだったか。芸協の新真打3人の披露目。
私だけトチリましたとのこと。ただ、テレビ見たら「初々しい」ってつぶやいてくださいだって。

長いが退屈させないマクラを振って本編。
いつもマクラ何分、って書き残してるのだが、時計忘れた。
お妾さんの噺ですと。不倫とかそういうことじゃなくて、男の甲斐性なんですね。
今日はやりませんけど、と「権助提灯」について。
林家錦平師匠に教わったんですが、錦平師は談志師匠からです。
談志師匠から「結局どっちも欲しくなるんだな」と教えてもらったそうなので、私もそういう気持ちでやってます。
お妾さんも、欲しがられれば嬉しいはずで。

権助提灯じゃない、というのだからまあ悋気の独楽だろうと。
これがスピーディな一品。
旦那が「寄席に行く」とうちを出て、すぐに定吉に追わせ、とっとと妾宅に着いて上がり込みもせずコマをもらい、おかみさんにすぐバレてとっととコマを回すという。
小遣いはもらうが、きちんと口止めされてすらいない。

そして、完全に遊雀型であった。
風子さんからは、以前も遊雀型の宗論を聴いたことがある。
堪忍袋も持っているに違いない。知らないが、きっと。

旦那がなぜか噺家になって、「寄席で寝るのは大変なんだよ。ひとりぐらいいいだろうと思ってると、高座からは丸見えだ」。
と語るのからして、遊雀師のもの。
定吉が「ほうぼう探したんですけどとうとう見つかりませんで」と言いわけするあたりやら。
先日、小遊三型の千早ふるを語る若手に、小遊三師のまんまだなと思った。
だが風子さん、わかりやすい遊雀型なのに、いっぽうでオリジナリティも強い。
お付きの女中も、ご新造さんも一筋縄でいかないキャラだ。

まさにエンターテインメントという一席。
最近、「スターの落語」という概念を唱えている。
林家たい平師に当てはまるのだが、最近の昇進組では、桃花師であり、満堂師がそんな感じ。
雨花師も、スターの仲間入りだと思うのです。

続きます。

 

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作成者: でっち定吉

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