黒門亭はすっかりご無沙汰していて、まる1年振り。
昨年はまだマスク義務があったのだ。
土曜第2部は隅田川馬石師の「明烏」ネタ出し。
明烏も、散々聴いてるからなあ。まあでも、馬石師のものは未聴。
繰り返し聴いていても、好きな噺ではある。
他のメンバーは、秋に志ん橋で昇進の志ん松さんに、今年トリも聴いてる馬治師。
明日日曜、赤羽岩淵の大満寺で、花いち、志ん松、遊京の会がある。
黒門亭とちょっと悩んだ。
明日はそういえば芸協らくごまつりだが、仕事する。
黒門亭、満員。さすが馬石師。
狸の鯉 | 市遼 |
あくび指南 | 志ん松 |
笠碁 | 馬治 |
(仲入り) | |
犬の目 | 時蔵 |
明烏(ネタ出し) | 馬石 |
前座は柳亭市遼さん。
いい男で、明朗快活で、表情豊か。
初めてだが、この人が主役のドキュメンタリーをかつて観た。
【柳亭市馬&市遼】寄席の灯を消すな コロナに前座を奪われた弟子と師匠の奮闘1年
名乗らずにいきなり、「狐狸は人を化かすと申しまして」とたぬき。
市馬師の弟子らしくいい語り口だが、それ以上に噺の編集能力に感心した。
「親方の股ぐらくぐったんです。ふんどし代えたほうがいい」
普通、マルのあとにいろいろ説明が入ってもっちゃりするのだ。
そして、若手らしく「ツッコミの省略」も上手い。
「今どき義侠心に飛んだ人だ。人間にしておくのがもったいない」のあと、ツッコミなし。
客が思うだけで十分なんですよ令和の世では。
キンが八畳敷はない。クスグリは厳選するのだ。
古ハガキの件も、極めて手短。
「人間が触れると元に戻る」という、新解釈も聴いた。
札でなくて、狸の鯉だった。
ホワイトボードには「狸鯉」と、狸札や狸賽のように書いてあった。たぬこいと読ませるんでしょうね。
じゃ、「たぬかま」もあるのかな。
たぬこい、落語協会では数年前から流行っているようで、よく出くわすようになった。
私も札より鯉が好きだな。
サイズを調整させて、化けた鯉をアニイのとこの出産祝いに持っていく。
実に上手いこと刈り込んでいるのに、狸がまな板に乗せられてからは急にたっぷりになる。このメリハリが好き。
狸の「捌かれちゃかなわない」という感情が客にしっかり伝わっているので、ここで進行がゆっくりになってなんの問題もない。
そしてバカウケモード突入。
鯉から手が出て引っ掻いたり。
いい前座さん。
というより最近、ダメな前座を見かけるほうが珍しいな。
二ツ目は志ん松さん。満員でありがとうございますと。
廊下にはみ出ているお客のために、前列の客に声を掛けてお膝送り。
そこのふすま閉めたいんです。おあとの師匠方が通りますから。
あの緑色の服着た人がいますでしょ、番頭なんですけど(柳家平和)。
あの人が34人入れたよって威張ってました。
黒門亭は、生半可な落語好きはたどり着きませんからね。みなさん落語のお好きな方ばっかりで。
と、小ゑん師みたいなことを言う。
古今亭志ん松と申します。
おかげさまでこのたび秋から真打に昇進となりました(拍手)。
名前も志ん橋を襲名させていただきます。
披露目にもぜひお越しください。アタシの日だけでいいです。
黒門亭に来れるお客さまなら、披露目は大丈夫です。
今日はこのあとこの会場で、馬桜師の会に出させていただきます。
お時間ある限りぜひそちらもと申し上げたいんですが、ネタ出ししてまして。
明烏なんですよ。
さすがに馬石師匠の明烏を聴いたお客さまに、私のもとは言えません。今日は結構です。
狙ったわけじゃないんですけども。
江戸っ子職人の1日は、午後はだいたいヒマだった。
いつまでも仕事してると、遅いって言われて評判悪い。
時間が空いてるので稽古をする、と振ってあくび指南。
一之輔師のものっぽかったけど(吉原につ〜と行ってしまう)、古今亭にもあくび指南はちゃんとあるから、気のせいか。
斬新な工夫がひとつ。
女師匠でなく看板と知って、八っつぁん自ら付き添いのアニイにもう帰ろうと言っている。アニイは笑ってない。
なるほど、イヤイヤ稽古を始めるのではなく、アニイにたしなめられて仕方なく始める。
このほうが若干、稽古に熱が入りやすいかも。
まあ、私は看板夫人の出てこない型が好きだけど。
志ん松さんは、もっぱら女性にウケる。八っつぁんがバカでかわいいからでしょう。
この噺もフレーズ落語だなと改めて思う。
おい船頭さん。船を上手へやっておくれ。堀から上がって一杯やって、夜はナカへ行って、新造でも買って遊ぼうか。船もいいが、一日乗ってると、退屈で、退屈で・・・あ~あ、ならぬわい
師匠が二度やるとクドくなるなんてのは抜いていた。
前半から楽しい黒門亭。
続きます。