葛西図書館・春風亭柳枝の会(下・鹿政談)

柳枝師の、本格派の時そばを聴いて大満足。
しかし後でちょっと思ったが、素人落語が先にあったため満足度が結果として高まったということもあるかもしれない。
そういう可能性もあるので、落語のプロじゃない人を出さないでくれとは言えない。
こういう落語も、落語界の裾野を広げるのに貢献するのだろうか? 私がなにしろサンプル数を持っていないのでなんとも言えない。
いずれにしても、30分やらなくてもなとは思ったけど。

柳枝師の挨拶でのマクラを思い出した。
歴代の柳枝師匠は、みんな早死にしていますと。
弟子を採ったら名前を付けたいですね。小柳枝なんていい名前ですけど、つい最近まで小柳枝師匠ご存命でしたので。
落語の実に上手い方でした。弟子に小柳枝なんて付けたら、弟子のほうが偉くなっちゃいますからね。

まあ、柳枝と小柳枝とは長らく別系統だと思われるので、勝手に弟子に小柳枝は付けられないだろうけど。

10分の仲入り休憩を挟んでもう一席。ちゃんと着替えている。
江戸の名物。武士鰹大名小路生鰯茶店紫火消し錦絵火事に喧嘩に中っ腹伊勢屋稲荷に犬の糞。
とくれば、鹿政談。
京名物から奈良名物に進む前に、名古屋名物も入っていた。

町の早起きを振れば鹿政談を初めていいわけだが、さらに小噺を振る。

和歌山のクジラが奈良の大仏に高さ比べを挑む。クジラは熊野を回って陸を奈良まで進む。ツッコミどころがいろいろありますが。
大仏さんが立ち上がったが、クジラの勝ち。カネとクジラではクジラの勝ち。
オチを語ってすぐ、「このオチはどこでやってもわかりません」。
わからない小噺をあえて入れるのであった。ウケない小噺を役立たせるなんて、面白いじゃないか。

それから、今でもたまに聴く大仏の目玉修復の小噺。目から鼻に抜ける坊や。
先にわからない小噺を振っているおかげで、安心した客はどっとウケるのであった。極めて高度なワザ。

町の早起きに戻り、鹿島神社からはるばるお使いにやってきた鹿の説明。
隣に鹿の死骸を運ぶのだけが笑いになるが、でもそれだけ。
でも珍しい小噺を聴いた高揚感であるとか、古典落語の世界の地続きでありながら異世界っぽい奈良の話であるとか、そういったものが複合して実にいい気持ちである。
本編は一本道、どこへも寄り道しない噺なのに。

石子詰めの説明、きらずの説明と、それから豆腐のことを岡部と呼びますと。
ホテルニューオカベの岡部ですと、妙な説明。

鹿の守役は、よく聴くのは塚原出雲であるが、藤波河内。
幕府の役人と、興福寺の坊主と2人体制で守役をやっていると丁寧な説明。
藤波河内は、ものすごい悪い顔で登場。お奉行の、「悪役丸出しであるな」というわかりやすいツッコミがツボ。

鹿政談は、落語としては固い。
クスグリだって、「先ほどワンワンと鳴きました」「犬鹿蝶」ぐらいである。
忠臣蔵六段目の勘平であろうなんて、そんなにウケるわけじゃないし。
そんな固い噺が、極めて心地いい。
これは柳枝師ならではの味だと思うのだ。師は固い噺をしっかり語りつつ、終始余裕が漂っている。
お奉行さまも、なんとか知恵を絞って豆腐屋を釈放しようというより、形をどうつけようかと、八百長感たっぷりなのがいいのだろう。

サゲは、「おかべで、まめに帰れます」だった。
これは初めて聴いた。なんだかイイ。
「岡部」は不要といえば不要なのだろうが、ムダをムダとして語らないのがこの師匠の味だ。

久々の無料落語に堪能した。図書館はいいものだ。
図書館で会があるのは、城北・城東が多い気がする。
講談の会も見たことがある。
城南ではまったく見ない。

都営の1日券持っているので帰りは図書館前の三角停留所から船堀駅へ。
まっすぐ帰ったのだが、NHK新人落語大賞の開始時刻には間に合わなかったので、15分遅れで録画を観ていた。
春風亭一花さんが掛けた「駆け込み寺」は、柳枝師が教えたもの(夫婦に)である。
この噺は柳枝師が復刻したようだ。

月曜日はまたしても阿佐ヶ谷アートスペース・プロットへ。
入船亭遊京さんの会である。
しかし今回も、先日の「B3」に次いで休会。披露目やってる関係でいろいろあるのではないかと想像する。
嫌な予感がしたのでXを見たのだが、知ったときにはすでに阿佐ヶ谷に着いてしまっていた。
まあ、コーヒー豆買うついでだからいいけどさ。
前回は急遽池袋に行ったのだが、特に行きたいところもない。板橋区まで行って、いたばしPayを使うついでに仕事をしてました。

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作成者: でっち定吉

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