神奈川華高座(上・春風亭かけ橋「牛ほめ」)

暮れもいよいよ押し迫ってまいりました。
22日日曜日は、横浜へ。
M-1グランプリ当日だ。
一昨日書いた通り、観れば面白いし刺激になるが、M-1にも今年はなんだか惹かれなかった。この時季だけのブログのお客さんもいるんですけども。
あえて、帰宅時間がM-1の本選に掛かる、夕方の雑司が谷拝鈍亭(柳家三三)に行こうかなんてことも思いましたよ。

ともかくも、横浜で柳家小せん、柳家小はぜのお二人が出るというので昼間のそちらを予約。M-1観られない心配はない。
神奈川華高座、初めて寄せてもらう会である。
前日にメールが来て、小はぜさんインフルエンザだって。
代演は春風亭かけ橋さん。
ならノープロブレム。かけ橋さん聴きたいと思ってたところだ。
笑点特大号の若手大喜利にもガッツリ入っていて、飛ぶ鳥落とす勢いの、やり直し二ツ目さん。

小せん師はかなり好きな人だが、聴く機会はそれほど多くなくて。
今年はこれが初めてである。いつも聴きたい聴きたいと念じている。

会場の西公会堂は、横浜駅南口から西側に出て、繁華街のバルナード通りを抜けた先、岡野交差点を渡った近所。
ここまで来ると静かな街だが、ただ吉村家本店があって、120分待ちという案内が出てた。寒いのに。

牛ほめ かけ橋
紋三郎稲荷 小せん
(仲入り)
時そば かけ橋
味噌蔵 小せん

主催者挨拶は代演のお詫び。手短でいい。
数えて106回(だったかな)だそうで。
この会は4席やって、若手が1・3席めを担当するらしい。
わりと珍しめのスタイル。二人会は1席め出た人がトリ、というのが多い。
だが、いい方法だと思うけども。

かけ橋さんから。
佐藤さんからお話しありましたけども、今日は代演で。
なんだか2か月にいっぺんくらい出させていただいてますね。
代演を探すのも大変だと思うんです。
まず、二ツ目でしょ。同じくらいのキャリアで、そして小はぜアニさんは古典落語ですから、同じ古典の人で。
あと何と言っても、日曜日にぼ〜っとしてるやつがないと。
ぼ〜っとしてたんですよ電話があったとき。
お客さんからすると、どうせなら佑輔さん出してよなんて思われるかもしれませんが。

今日は小せん師匠と一緒で。
落語協会時代から、いろいろ付けていただいてました。
それから、実は初高座のときに面倒見ていただきまして。
実は昨日も小せん師匠と一緒でした。有楽町の朝日名人会です。
朝日名人会、初めて出していただきましたけど、次しばらくないかもしれないですね。
500人のお客さん、全然笑いません。
反応ないので、宇宙空間でやってる気持ちになりました。

こういうことを言えるのは、デキ良かったからなんでしょうがね。

落語の登場人物はボーッとしてますね。やってる人間もボーッとしてます。
それを楽しんでるお客さんも…
与太郎さんという人がいまして、なにもできないんですけどもその割に嫌がられてはいなくて、なんだか周りが世話を焼いてくれるんです。
と振って牛ほめへ。

マクラ含めて13分の短い高座だったが、爆笑。
牛ほめの最高峰ではないかと思った。
独自の工夫を入れている部分と、スタンダードさが楽しい部分とのバランスが極めていい。
ギャグに取り憑かれないからこそ、効果的なクスグリとなる。古典落語の逆説だ。
冒頭、おとっつぁんが与太郎に、鼻をかめと言う。
紙がもったいねえや。おとっつぁんが教えたろう、乾かして便所で使えばいいんだ。
こないだやってみたよ。順番間違えた。
そこで親父が「次回以降気を付けるように」。
急に固い言葉を入れて、既存のクスグリを斬新に蘇らせるウデ。

おじさんのうちでは、家を褒めるのをなぜか居酒屋料理にしてしまう。
天井はさつま揚げでうずら豆、左右の壁は砂肝で。
「引きずり」を入れなくて済むが、かけ橋さんのやり方が最も効果的だ。
ここからスピーディーに台所の柱を褒めに行くあたり、実に自由。自由なのにしっかり古典落語である。

ちなみに鼻に掛かる声は前の師匠・三三の印象が強いが、なんだかだいぶ、かけ橋オリジナルとして聞こえてくるようになった。
真似とか強い影響とかではなく、自分の目指す方向性の先にこの声があるという感じなのだ。
元師匠に似ていても、たまたま。

牛を褒めに行くのもスピーディ。
なにしろ庭に牛がいて、家から見ている。
サゲが屁の用心ではなかった。最初に振ったクスグリを再利用して入れる。
こんなところ替えてくるのか。
効果は地味だけども、既存の古典落語をリノベーションしてみせた事実は大きい。

非常に満足の高座でした。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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