【2019/11/3 黒門亭1部】
前座 / 不精床
文吾 / 磯の鮑
小燕枝 / 天災
(仲入り)
駒治 / 同窓会
たけ平 / お札はがし(ネタ出し)
黒門亭へはお盆に行って以来。久々に間隔が空いた。
柳亭小燕枝師の見事な「居残り佐平次」を潰しかけた、居心地悪くなる新作落語のおかげである。
でも、この日の顔付けなら大丈夫。
小燕枝師も顔付けされていて、さらに、常に見事な新作落語を聴かせてくれる、古今亭駒治師も。
トリでない、この二人が目当て。
正直、トリの師匠が微妙だと思っていた。
林家たけ平師。人気の若手真打である。
私も、先日「浅草お茶の間寄席」で聴いた長講「妾馬」を当ブログで激賞したところである。
だが、その後も浅草お茶の間寄席に出て(出演回数がまた、やたら多いのだ)、またしてもたけ平師、引き続き地噺を掛けている。
寄席のバラエティ化に貢献する、地噺も漫談も決して嫌いではない。
だが、地噺でのたけ平師、客と対峙する姿勢がやっぱり苦手。妾馬を聴いて克服したと思ったのだけど。
「もっと僕と会話しませんか」とか「もっと噺に参加してもらっていいですか」とかの客いじり。
客いじりはいけないか。そんなことは言わない。
でも客いじりとは、禁断の実だと思うのだ。
客いじりをやって芸になるのは、古今亭寿輔師ただひとりと思う。
先代・当代圓歌だって、そんなにいじっていない。鈴々舎馬風師、林家木久扇師なども、実は客はいじらない。
客に対する拍手の強要なんてギャグも存在するが、大好きな昔昔亭桃太郎師のこれですら、あまり好まなかったりする。
たけ平師、私の大好きな三遊亭萬橘師と一緒に、谷中で「にっぽり館」など運営したりしている。むしろ、その活躍っぷりからすると、積極的に好きになりたい人なのだけど、現状どうもな。
それでも、この日の黒門亭のトリは、ネタ出し「お札はがし」。牡丹灯籠の一席。
地噺とは全然関係ない。まあ、行ってみよう。
ちなみに、たけ平師の生の高座を聴くのは初めてだ。浅草の顔付けが多い人だから。
結果的には、背筋がピシッと寒くなる見事なお札はがしに、大いに満足したのでした。
そして、小燕枝師も駒治師も期待通りの見事な高座。
さらに二ツ目枠の橘家文吾さんもすばらしい一席で、大満足の日。
ちなみに、並んで入場する必要のある顔付けではないと思い、10分前に入場した。
だが、すでに座布団の空きがほどんどなかった。
たけ平師の人気を甘く見てましたぜ。失礼しました。
ギュウギュウ詰めで、お膝送りまでしての開演。札止めになったのでしょうな。
今日の番頭さんは三遊亭金八師。にこやかで愛想よく、お見かけするだけでなんともいえない気持ちよさの漂う師匠だ。落語は久しく聴いていないのだが・・・
「暑かったり寒かったりはないですか? まあ、暑い中でお札はがしはないでしょう」
この日は、前座だけがもうひとつの感。
前回の、ひどい新作の掛かった黒門亭で開口一番を務め、私をがっかりさせた人である。
黒門亭の前座は一般の寄席と同様、事前に誰が出るのかわからない。ちょっと嫌な人に当たってしまったなと。
といっても、3か月前の高座と比べたら、全然悪くなかった。
前回感じたような、ウケが欲しくて仕方ないようなそぶりはなかった。これでしくじる前座が多いのである。
さすが、若手は短期間に腕を上げるのだなと。
十分に上手いなと思ういっぽう、しかしながらどうも私の感性がついていかない。
私は理屈っぽい落語好きである。理屈のほうから入って、感性を修正してしまうことすらざら。
だがこの前座を聴いて、理屈のほうは納得しているのに、感性のほうが今日は不発。
理由ははっきりしている。
無精床(不精床)という噺が難しいのだろうな。前座の掛ける噺じゃないだろう。聴いたことないし。
ひどい目に遭わされる、床屋の客の気持ちになってしまうとダメだ。
若手だと、このスイッチ発動をなかなか回避できないのではなかろうか。つまり、生々しくなってしまうのである。
この前座、独自の工夫として、ボウフラのわいた水でもって頭を自ら湿さなければならないくだりを強調している。
このくだりウケてたけど、スイッチの発動してしまった私はどうもついていけない。
もっとも、終えた後の拍手も大きく、私以外の客の評判はおおむねよさそうだったので、成功なんじゃないでしょうか。
なら、名前出してもいいのだが、前回からの流れ的に伏せておく。
私だけ、また次に期待します。