池袋演芸場19 その5(三遊亭天どん「肥辰一代記」)

三遊亭天どん1

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仲入り休憩後のクイツキは三遊亭天どん師。
私の持ち時間は適当なんですと。次の人(彦いち師)がまだ来てないんだって。
羽織を引いたりはしなかったが、彦いち師が来たと楽屋から声が途中で掛かっていたようだ。
クイツキに出たときは、天どんの名前の由来を必ず言うのかと思っていたのだが、今回はなかった。
マクラでは、今年あたり私の師匠はようやく死にますと言っていた。めでたい話はこのぐらいにしてと本編に入る。
駒治さんの初トリだそうで。こういうときはめでたい噺を掛けたい。
なのでめでたいウンコの噺をしますと言って、師匠・円丈作の「肥辰一代記」。マクラで師匠を殺しておいて、師匠の噺をする天どん師。
女性の多い席で、なにを掛けてるのだ。
昭和初期のおわい屋一代記である。もちろんウソだが。
池袋のような小さな小屋でウンコの噺を掛けてるというシュールな状況とセットで、なかなか面白かった。
途中、客席が引いていく場面で、「お、おかしいぞ、どんどん引くな」と余計な言葉を発するのが天どん節。そら引くわ。
いい悪いではなく、この日だけでだいぶ女性ファンを失っている気がする。私は好きだが。
この独特な噺に関する天どん師の語り、ちょっとおふざけ感が強いかなと思った。円丈師だと、ギャグは入れるにしてもこのウンコの噺を結構きちんと語る気がする。
このバカな噺は、しっかり語るほうがきっと面白い。

そしてヒザ前(文蔵師と交代)は、間に合った林家彦いち師。NHKラジオの生放送を終えて駆けつけたんだそうな。
NHKの放送は、残念ながらradikoでは聴けない。
駒治師匠の初トリなので、みなさんで待ってましたをやりましょうといって、客に一斉に「待ってました」を言わせる。
先に出た肥辰一代記をいじって、なら私もと、同じ円丈作品である「遥かなるたぬきうどん」。
いきなり、扇子2本持ってガッシガッシとマッターホルンの氷壁を登るうどん屋「長寿庵」。
扇子2本は、私のような、ヒマラヤに行った噺家だけに許される特権ですと。
師がヒマラヤにかつて行ったのは本当で、マクラでもその話はよくしている。
面白いのだが、山頂に付く前に終わってしまった。続きはまたいずれと。
彦いち師のトリでも掛かる噺だが、私は未聴。CDは聴いたけど。

肥辰一代記も、遥かなるたぬきうどんも、こちらの記事で触れている。
Yahoo!ブログ時代に、落語ディーパーからの「ぺたりこん」による検索で、1日500件を超えるヒットがあったものだ。
落語ディーパー、司会の不祥事でどうなるだろう。
前半は古典落語特集で、仲入り後からいきなり新作特集に変わる池袋下席なのであった。いずれも楽しい。

出番変更でヒザを務めるのが漫才の青空一風・千風。キャリア的にはまだヒザはないところ。
結構前から落語協会員になっているのだが、私は初めて見かける。
(※初めてじゃなかったです。駒治師の披露目でお見かけしている。すみませんが覚えがないなあ)
この後で視た、笑点特大号の海老名家忘年会に出席してネタを披露していた。三増紋之助、翁家勝丸といった色物の先生と同様、正蔵一門らしい。
交互出演の米粒写経がどうも苦手なので、この芝居の初日、彼らでよかった。
牛の部位を体で表現するネタはなかなか面白かったです。
牛から鶏に話を持っていって、「トリは駒治師匠にお任せします」とサゲて交代。

トリの駒治師はすでに触れた。
トリを務めつつ、25日には独演会があったが、そちらでは「車内販売の女」の姉妹編、「ビール売りの女」を掛けたようだ。
池袋のほうは、「鉄道戦国絵巻」「公演のひかり号」「都電物語」と来て、5日目はついに野球落語の「同窓会」。鉄道落語縛りが解けたようだ。
そして昨日は「十時打ち」。
もう1日行きたいという気持ちもあるのだが、末広亭の2月上席昼が小ゑん師。そちらも気になる。

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反対俥/遥かなるたぬきうどん

作成者: でっち定吉

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