落語のマナー「ヨセしぐさ」とは

 

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落語の寄席とは、戦争のない平和な江戸時代に生まれた文化です。

そこには通な常連たちが築き上げた、よりよく楽しむルールのようなものがありました。

その基本は思いやりの心を持って、みんなが楽しく、争い事を少なくし、演者に対する言葉遣いやしぐさにも気を配るというものです。

次第に、落語を楽しむ人たちにも浸透していったと言われています。

そのような体系が「ヨセしぐさ」と名付けられ、口伝で伝承されてきました。

しかしながら明治維新の頃、新政府によって寄席の常連たちは次々命を落としていきました。いわゆる「寄席っ子大虐殺」です。

NPO法人ヨセしぐさでは、伝承の途絶えた体系を現代に復活し、正しく伝えていこうと活動しています。

「ヨセしぐさ」の例を見ていきましょう。

いえ、「寄席しぐさ」ではありませんよ。「ヨセしぐさ」です。

NPO法人ヨセしぐさ

【ねたばらし】

落語は、よく聴いている人ならば、噺家が喋っているその先がわかることがあります。

そんなときは独り占めしていないで、お客さんどうしで内容を分かち合いましょう。

たとえば、「酔っ払いの小噺」を噺家が喋っていたら、「あれ、親子よ」とみんなに伝えてあげましょう。

わからない人をひとりも出さない、それが思いやりというものです。

【さげばらし】

落語は何度も同じ噺を聴くものですから、サゲ(オチ)を知っていることも普通です。

ねたばらしと同様、落語のサゲに掛かったら、初心者に向けてぜひ教えてあげましょう。

たとえば「猫の皿」という落語で、猫を買わされた男が、「どうして300両の皿で餌やってんだ」と尋ねたら、すかさず「猫が売れるからよ」と声を上げましょう。

他のお客様にも感謝してもらえることでしょう。

【ふくろいじり】

寄席に行く際は、お腹もすくし喉も渇くので、買い物してから行くといいですね。

その際のポリ袋も有効活用しましょう。ときどき、袋を手でガシャガシャ揉んで音を出すのが思いやりです。

そうすると高座の噺家も、「あ、あのお客さん生きてるんだ」と安心します。

【みな待ってました】

寄席の作法のひとつが「待ってました」。

高座に噺家が現れたら、大きな声を掛けましょう。

ただし、トリの人など、決まった人だけに声を掛けるのは失礼にあたります。全員に声を掛けましょう。

本当は待っていなくても、声を掛けるのが優しさです。

誰も注目していない噺家も、喜んでくれて、いつもより見事な高座を務めることでしょう。

【高座横切り】

高座の途中で寄席に来た人は、後ろで遠慮していてはいけません。

堂々と高座の前を横切りましょう。そうすると、ネタが欲しい噺家さんがツッコむことができます。

これでみんながほっこりするので、ぜひやりましょう。

同じ理由で、高座の最中でも、通路側の人を立ち上がらせて座りましょう。

みんなが注目しますので、噺家にツッコまれます。ツッコんだ噺家さんには感謝されること請け合いです。

【電話ならし】

携帯電話は必ず大きな音量にしておきましょう。マナーモードは禁物です。

お友達に頼んで、ときどき電話を鳴らしてもらいましょう。それが高座の噺家に対する優しさです。

電話が不意に鳴ることで、噺家はそれをすかさず落語に盛り込みます。その見事なウデを味わいましょう。

高座は、演者とお客との協力で成り立っているのですから。

【ねた早書き】

落語をよく聴く人は、噺家がマクラを話している時点で、今から喋る落語がわかります。

たとえば、「熱い湯を我慢する江戸っ子」が出れば、「強情灸」です。

わかったら、すぐ手元にあるプログラムに演題を書きましょう。早く書かないと、すぐ忘れてしまいますからね。

演題がわかった優越感は、こたえられないもの。ぜひ周りから尊敬されるように、手早く素早く書きましょう。

【ねたつぶやき】

せっかくの作法「ねた早書き」をしようと思ったのにペンを忘れてしまったあなた。

まだできることはありますよ。今から掛かる噺がわかったら、声に出しましょう。

お酒のマクラが出たら、いちかばちか「親子酒か」と言って、周りにも教えてあげましょう。

もしかすると親子酒に入る予定の噺家が、急遽「試し酒」に替えるかもしれません。替えるヒントを与えてあげたのですから、堂々としていましょう。

【飛び出し拍手】

ヨセしぐさの基本は、周りに対する優しさです。一人で楽しんでいないで、初心者にも楽しさを伝えてあげることが大事です。

ですから、落語が終わるときもボケっとしていてはいけません。周りに、「ここで終わりですよ」と教えてあげましょう。

「子ほめ」を聴いていて、「どう見ても」と噺家が言ったら、そこから手を叩きましょう。

【寄席子守うた】

平和な寄席というところでは、眠くなったら寝てしまっていいのです。

いびきをかいたってかまいません。リラックスしている証拠ですし、高座のネタにもなります。

高座の噺家にも、自分の話術が人を寝かせたということで、喜んでもらえます。

体を張ってウケを採るのが通の証拠です。

【拍手続け】

高座の芸人に喜ばれるのは、なんといっても拍手。拍手はどんどんしましょう。

小噺ではぜひ手を叩きましょう。噺家さんが考えたのでない古典の小噺でも叩いて構いません。どんな小噺を振るのかも、噺家しだいなのですから。

拍手をし続けるのは体力がいるものですが、それだけ噺家さんには伝わります。がんばって叩きましょう。

続編:落語のマナー「ヨセしぐさ」とは(芸人編)

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作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。

2件のコメント

  1. ブログ拝見しました

    月並みな表現ですが映画の上映前のマナー動画を思い出しました。映画館によってはユーモアを交えるところもありますよね

    このユニークな発想をもし映像にしてみたら相撲の初っ切りみたいになって面白いかもと思いました。なのでYouTubeをチャンネルを持っている二つ目の落語家さんに提案されてみるというのはいかがでしょうか?

    1. うゑ村さま

      NPO法人ヨセしぐさです。
      私どもの活動にご賛同いただきまして、まことにありがとうございます。
      NPO法人ヨセしぐさでは、今後も寄席のマナーにつきまして、「でっち定吉らくご日常」をお借りし、啓蒙に励む所存です。
      その一環として映像も作成し、AC(公共広告機構)様とも協力して、TV-CMで流したいものだと考えております。
      教科書にもヨセしぐさを載せたいものです。
      第二弾にどうぞご期待くださいませ。

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