亀戸梅屋敷寄席24 その4(三遊亭楽大「蛇含草」)

三遊亭楽花山さんは、二ツ目昇進後は初めて。旧名楽べえ。
この人など次々二ツ目に昇進してしまい、円楽党は前座が足らなくなったのだ。
けろよんさんの名前のアクセントについて、今日初めて知ったという話をする。
上手いとかそういうことは言わない。まあ、普通言わないけど。
だが、楽花山さんもけろよんさんの高座を初めて聴いたわけで、上手すぎて動揺が隠せない様子である。
前座が上手すぎて、二ツ目が潰されることもたまにはあるのだ。
大丈夫。前座時代の桂宮治師に二ツ目が潰されたのを見たことがあるが、潰れたほうもちゃんと出世し、トリも取れる真打になっている。
それに前座・楽べえ時代の高座もよかった。

楽花山さんは、大阪出身なのだな。知らなかった。
前座は、落語協会の古今亭菊一さんとか、この間辞めた金原亭乃ゝ香さんみたいな、やたらと背負っている人は別にして、上手くても記号。二ツ目になって初めて、さまざまな属性が明らかになる。
Wikipediaによると、大学も立命館だから、本当に関西の人なのだ。

大阪の学校寄席で、子供たちにいちびられた話。
それから師匠、円楽をしくじった話。楽花山さんは「師匠を失敗しました」って言ってた。
普通の前座と違い、円楽師は自ら手料理を振るまってくれる。
松茸の炊き込みご飯。感想を問われた楽べえさん、地元の言葉でもって「おいしい醤油ご飯でした」と言って、しくじる。
醤油ご飯なんて言い方、初めて聴いたな。かやくご飯だと思ってたが。

東京に出てきて言葉を直していますが、今日は上方の噺を、と言葉をチェンジして真田小僧へ。
前座のときは普通に「手紙無筆」とか「のめる」など東京落語を掛けていたが、上方落語をするんだ。
大阪出身の人が円楽党で上方落語をする、そんなのもあっていいんじゃないですか。

内容は東京のものに近いので、上方の師匠に教わったのではなく自分で言葉を改造したのだと思う。
よく聴く東京の真田小僧に、さらに工夫をいろいろ。
金銭の単位は5銭。最後は親父、タンスのへそくり50銭を息子に巻き上げられる。
よくウケていた。
今後も上方落語で行くのかな。

続いて三遊亭楽大師。
今日もでっかいバイクが駐車場に置いてあった。
真打になってからは初めて聴く。披露目に来たかったのだけど、ちょうど寄席の閉まるタイミングにぶつかった。気の毒なことである。

楽大師も、けろよんのアクセントの話。
銭湯に置いてあるあれかと思いましたって。そりゃケロリンだ。
そこから、「楽大」のアクセントについて。
お客さんによく訊かれます。「落第」と同じですかと。
気を遣ってくださるお客さんほど、「ら」にアクセントを置いて読みがちです。
私の自然なアクセントでは「く」にアクセントが来るけどなと思いながら聴く。
お客さんには好きなほうでいいですよと答えるのですが、師匠がそれを聴いて「お前は落第と同じだよ」。
まあ、洒落の名前ですから。

楽大は2代目で、先代は伊集院光さんです。
私も太ってるのでこの名をいただいたんです。伊集院みたいに出世しろよと。
でも、よく聞いたら伊集院さんは噺家辞めてから出世してるんですね。じゃあ、ダメじゃないですか。
私は噺家のまま出世したいものです。

以前も聴いた話だが、楽大師は大船渡のふるさと大使を務めている。
盛岡駅前で、わんこそば200杯食べた話など振る。私は食べることが大好きなんですと。
なので体重は108キロ。正座がつらい。

八っつぁんが隠居を訪ねてきて、あの草なんですかと。
蛇含草である。2017年に二ツ目の楽大さんを初めて聴いたときがこの噺だった。
瀧川鯉昇師に教わったものだろうか。
東京はそば清だが、蛇含草も多少やる人がいる。

板前上がりの本当に食欲旺盛な噺家が、本当にうまそうに餅を平らげる。
そして隠居に「お前、本当にうまそうに食べるね」と言わせる。
蛇含草のお餅、罰ゲームみたいになりかねないが、そうではないのだ。客のほうも、醤油を付けないお餅を旨そうに感じるではないか。

隠居は餅をごちそうしろと迫る八っつぁんに少々立腹気味ではあるが、でもそんなに対立関係にはない。
八っつぁんは独身で、家に帰って一人で寝ている。
グロくはなく、爽快感ある結末である。

亀戸は前座も含めて5人なので、あまりパッとしない日もあるのだが、この日は最高でした。
ただねえ・・・好楽師の記事より、昨日出した前座の記事のほうがアクセス多いのはちょっと複雑。

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作成者: でっち定吉

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