「上」「中」の記事、アップした後で改めて副題をつけてみました。
今日の副題は、私の好きな錦鯉のフレーズ。ネタ中ではなく、芸人紹介のシーンで使っていた。
昨日、「親父の製麺所」でつい「肉うどん」頼んじゃった。
西の肉うどんとは違って豚肉だけども。
今年のM-1グランプリは、ネタの「飛躍」の程度の有無で切り取ってみたい。私が新作落語から引っ張ってきた要素である。
いにしえの芸協新作を、飛躍に溢れた円丈落語が滅ぼした歴史を振り返って、ご納得いただきたい。
もっとも飛躍の少ない新作落語は現在でも多数あり、それらすべてが価値が低いわけでないことはお断りしておく。特に上方の新作は、飛躍のないものが今でも多い。
そして上方漫才も、伝統的に日常に足を付けがちである。会話のやりとり(しゃべくり)をベースにしたそちらのほうが好ましい価値観もわかる。
ただ、飛躍のあるほうが私は好きだし、M-1のような大会では有利に働くだろう。
そして漫才は、ツッコミの力で、ボケの飛躍を日常につなげることができる。
落語だってよくできたものは、ツッコミがすばらしい。
インディアンス
ネタには飛躍があるのに、小ボケが多すぎ要素が薄れてしまうのがインディアンス。
相当面白いのだけど、ちっとも頭に残らない。何のネタだったっけという。
楽天モバイルしか残らない。
ストーリーをボケで消してしまうのはもったいないのだが、といってスタイルを変えると価値がない。
ということは彼らには限界があり、今後も天下は取れない。
後から冷静に考えると、9番目という出番が功を奏しての決勝進出だったようにも見える。
落語(新作でも古典でも)でも、クスグリ入れすぎちゃいけないという教えがあるが、実に正しい。
好きか嫌いかで言うと、インディアンス大好きですが。
もも
ラストがもも。
もものネタを見て、不快に思う人が続出したという報道があった。
今どきルッキズムかと。
まあ、珍しい意見だ、笑いも窮屈になってくるなと感じる一方、結構理解もできる。
彼らは実に面白いのだけど、漫才の構造として、コンビが終始対立関係にあるところが欠点だと思う。
関西人の普段のキツめの会話だといえばそうなのだが、対立から調和が生まれてこないところがオズワルドとの差である。
ルッキズムに嫌悪感をもたらす人の見解も、対立を原因として生まれてきたのだ。ここを抑えきれていないところがネタの限界。
「〇〇顔やろ」と言い合う部分で「あるある」を通り過ぎて若干シュールな要素(飛躍)をぶち込んでくれば解決しそうに思う。口で言うほど簡単じゃないが。
そして決戦。
「上」で書いた通り、冷静に判断した結果オズワルドと思った。
ツイッターも軒並み錦鯉押しだったようで、結果的にはちょっとズレた評価だった。
確かに錦鯉のサル捕獲のネタは、繰り返しに耐える面白さである。
いっぽう、オズワルドの二本目のネタは確かにややわかりにくい。
でも、再度観てもやっぱり面白い。わかりにくい面白さではあるのかもしれないが、でも本当にわかりにくいネタだったらそもそもトップで抜けていないわけで。
まあ、いいや。
もちろん錦鯉も面白かった。
「街中に逃げた猿を捕獲する人になりたい」というテーマがまず馬鹿の極み。
こういう馬鹿なテーマは面白そうだが、実際には客にポカンとされて終わるコンビが多いのである。なんら共感が生まれないからだ。
そこを合わせてしまうところがすごい。馬鹿すぎるため一般人との距離が大きいのだが、その分、合わせるための手駒を豊富に持っている。
あるときは距離の大きさを強調しつつ、だんだん客の気持ちをノセて、距離を詰めていく。
そしてやはり、ツッコミの腕のすばらしさ。
猿が森に逃げて、「じゃあ、いいじゃねえか」のタイミングはこれ以上ないぐらい絶妙。
毎年M‐1の論評をしているラリー遠田氏が、こんなコラムを書いていた。
M-1は“ボケの時代”に突入した? 松本人志の審査基準に見る「錦鯉優勝」の決定的理由《オズワルド、ハライチも…》
そうかな?と思った。
まったく同じ事象を見て、「M-1はますますツッコミが重要な時代に突入した」という切り取り方だってできるよなあと。
高く遠く跳躍していくボケを、ツッコミがいかに結びつけるかという基準で眺めたときは、ボケとツッコミどっちが重要というのは無意味だ。
ちなみにお笑い好きというものは、ツッコミを必要以上に褒める傾向がある。これはこれで、少々気味悪く感じることもある。
だが私には、錦鯉のツッコミがストレートに感性に響くのである。
更新ご苦労様です
理論派で技巧を重視する丁稚定吉さんが真空ジェシカをそこまで推さず錦鯉を誉めたのは予想外でした。言葉選びのセンスの良さで高得点をつけるのかなと勝手に思ってました(苦笑)
あと、オズワルドは2本目のネタが1本目のネタより弱かったという声もあるみたいですがあのネタでABCを優勝したのでその実績であのネタをやったというネタ選びの根拠は間違いではなかったのかなとも思いました。それ以上に前の錦鯉がウケていてまたしても出順に泣かされ「おくり人芸人」になってしまうあたり運の要素なのかなとも思えてしまいましたね
理論派でなくて、理屈大好きおじさんなだけなのです。
できれば理屈をフルに働かせて、錦鯉の優勝に行きつきたかったですね。
錦鯉もオズワルドももちろん面白いですが、今回の私のイチ押しはなんといってもロングコートダディです。