ヒザはコントD51。お見かけするのは一体何年振りだろうか、
少なくとも、当ブログを始めてからは初。
寄席のコントといえば芸協。まずコント青年団。
チャーリーカンパニーが抜けてしまったが(よくわからないが日高てん師匠だけ芸協香盤に名前が残っている)、新たに超ベテランのコント山口君と竹田君も芸協の正会員になったばかり。
D51はお婆さんと警察官のコント。
トイレ休憩なのか出口に向かっている客を、小道具の杖でじっと指して爆笑。指されたほうは気づかない。
一応「オレオレ詐欺」がテーマになっているが、啓発でもなくて実に緩い、ストーリーに頼らない舞台。
コントなのに芝居に集中せず、いちいち客と対話するのが芸協コント。漫才よりさらに緩い。
客の拍手が大きかったり小さかったりをいじるが、一人だけ変な拍手を続ける客はスルー。当たり前だ。
気楽なコントは実にいいですね。
「ボタンとリボン」の出囃子が鳴ると、主任、小遊三師の登場。
小遊三師はもちろん人気の噺家だが、必ずしも世間で本格派の評価を得ているわけではない。
深い根拠なく爆笑派だと思われているのではないだろうか。
笑点の「好色・男前・泥棒」のイメージを濃厚に持った人が面白落語を期待して小遊三師を聴きにいくと、その期待と微妙にズレた感想をもらいそうな気がする。
前会長の歌丸師も、現会長の昇太師も、笑点でのイメージと落語の高座の姿はあまりズレないと思う。小遊三師だけは、結構違って映るのでは。
でも、最初から超のつく本格派だと思っていると、実にしっくりハマる人。
同業者評価はもちろん高いにせよ、一般の落語好きからそういう評価がもっとあっていいんじゃないかと。
75歳の師匠、あと何年ご活躍かわからないが、まだまだ評価が上がる余地があると思うのだ。
言葉のキレがよく、緊張と緩和のメリハリが最適で、ギャグに頼らずしっかり噺を語り込む。そしてあざとさが皆無。
実に偉大な噺家だと思う。
まあ、私だって偉そうなこと言うほど数聴いてないけど。昨年は独演会にも行ったので、ようやく取り返しつつある。
独演会では、普段出さないたっぷりの個人的なマクラも聴ける。
昨年この芝居で師の船徳を聴いた。
これがまあ、その後1年間にわたって私に強烈な印象を残し続けた一席で。
当ブログの隅々に、この印象が断片的に散らばっている。
先日極めて個人的な、寿司屋での災難を書き記したが、これにも小遊三師の船徳が大いに影響している。要は、「災難を楽しむ心構え」である。
強烈な印象といっても、そこは本格派。破壊的な演出を凝らしているわけではない。
むしろ極めてスタンダードだ。しかし年季の入った芸。
あの一席がすばらしかった分、今年は別の噺を聴きたいなと思っていた。
しかし見事にカブってしまった。
加山雄三が若旦那でなく若大将である理由。若旦那のやるスポーツは卓球ぐらいでいい。
若旦那のマクラで、「お天道様は付いてくるがコメの飯は付いてこない」と振るので一瞬、おや唐茄子屋政談でもやるのかなんて思ったが。でも小遊三師は人情噺の唐茄子屋なんてやらないな。かぼちゃ屋のほうだよなと。
季節をずいぶん先取りしているから、薄曇りで雨もぱらつくこの日には出ないと思っていたのだけど。
今年も相変わらず、この芝居に来る人は誰もツイッターをやらないので、毎日の演目はまったく不明。もしかすると二度目の船徳なのかもしれない。
被ってちょっと残念だったのだが、一席終えた感想としてはまったくそんなことはなかった。
骨太の一席は、ほぼ同一でも実に楽しい。
これもまた、小遊三師がストーリーテラーでなく、落語家であることを物語っている。
あくまで記憶ベースだから正確ではないが、昨年と違っていたのは3か所。
- 太った旦那の嘆きをあまり強調しない
- 石垣に刺さった蝙蝠の横に、別の杖も刺さっている
- 船が桟橋に着かず歩かされる客が、「こんなことなら柳橋から水ん中歩いてくりゃよかった」
まあ、このぐらいの演出の違いは、その場で考えて出したり出さなかったりしているのでしょう。
もともと遊びの部分を刈り込んだ(そばの出前のくだりもなく、竿も流さない)船徳だが、さらにコンパクト化していたようにも思う。
最近国立にやたらよく来てるのだが、今回は特に楽しかったですね。
千穐楽の20日に国立演芸場に行きました。小遊三師は「付き馬」。地の語りが一切なく、登場人物3人の会話だけ。実に軽快なテンポの噺でした。
いらっしゃいませ。
付き馬いいですね。
小遊三師匠、なにやってらっしゃるのか情報がほとんどないので、ありがとうございます。
小遊三師については、定吉様同様、その技量の割に本格派と見られてないのかしらんと思ってます。
以前、「猫の災難」を聞いた時に面白さ以上にすごさを感じました。そのときに同行した人たちからも、一升瓶をはじめいろんなものや人物像までもが見えたと。
もっと光が当たっていい噺家だと思います。
いらっしゃいませ。
笑点のおかげで噺家三遊亭小遊三に対し光は十分に当たってると思うのですけど、でも足りないと思ってます。
私の意見はというと、「小三治より小遊三」ですよ。いやほんとに。