NHK・Eテレで落語が活用されている(小痴楽・つる子)

更新遅くなりました。ネタ自体はわりとあるんだけども。

落語の番組は極力録画するようにしている。
落語の番組もたくさんあるが、たまにツールとして落語を利用する番組もある。
そんなのが最近ふたつ、NHK・Eテレで流れておりました。

Eテレ(教育テレビ)もずいぶんと民放テイストになってきた。
この傾向を悪く言う人も多いが、なかなか面白いと思うけどね。
最初民放テイストを取り入れた際はスベったりしていたと思うが。
Eテレじゃないがチコちゃんなんかは、民放の人が作った番組。だがそんな人が入ってこないであろう低予算のEテレでも、テイストが蔓延している。
一言でいうと、固い話をエンタメ寄りに演出できるようになったのだ。
そして、そのために落語が便利に使われる。

まず、4月にやっていた「ヴィランの言い分」。
ヴィランは世間から忌み嫌われるものを指すらしい。例としてゴキブリや紫外線。
今回のヴィランは「クセ」。
ため息や爪噛み、貧乏ゆすりにもすべて意味があるのだというテーマ。

司会は八嶋智仁。
そして、クセをわかりやすく演じるヴィランこと「こがけん」と、久保田祐佳アナ(初代ブラタモリの人ですね)。
冒頭から延々続く陳腐な寸劇がなかなかたまらない。褒めてるのです。
こがけんは番組内の結論を熱唱し、久保田アナは固く固く寸劇を進行する。タモさんから学んだユーモア(想像)。
真面目に解説する先生が、こがけんと同じ博士ハゲカツラを被って出てくるあたり、チコちゃんと同じテイストを感じる。

そして柳亭小痴楽師がコーナー登場。
金屏風の前で一席。小痴楽師も、博士ハゲカツラを被っている。
ふざけてるのか! ふざけてますね。

小痴楽師は「交感神経」と「副交感神経」について一席やる。
以前取り上げた「東京蕎麦族」と同じ方法論で高座を進める。
交感神経が長屋の若い衆で、副交感神経が花魁。ため息によって、この二つが入れ替わるのである。
もちろん台本を渡されたのだろうが、それにしてはずいぶん小痴楽テイスト満載。
こういうおぜん立て満載の機会に、師の並々ならぬ腕と個性を感じるわけである。
バカを装ってる師匠だが、隠れインテリなところが教養番組に向いている。

先々週流れたフクチッチという番組は、司会が風間俊介で、ひな壇に高橋ユウやエルフ荒川。
さすがEテレ、ギャラ安く芸能人が揃えられるのだなあと。
新コーナーに、抜擢真打の決まった林家つる子さんが登場。
今後も登場するのかもしれない。
講談も登場しそうな気がするな。予想では、一龍斎貞鏡先生。
つる子さんは別に新作落語を披露するわけではなく、ディスクレシア(学習障害)について、画像に合わせて説明していく。
今までは柳家花緑師がこの手の番組を一手に引き受けていた気がする。当事者だから。

つる子さんの披露した高座のようなものの(別に、悪く言うわけじゃないですよ)、主人公は学校の勉強についていけないさだきちくん。
あ、よたろうくんじゃないんだと思った。与太郎はさすがにまずいのか。
定吉なのは、「平林」からだと思うけど。先祖代々字の読み書きのできない小僧。
識字率が上がるに連れ、知能には問題がないのに、文字を読むのが苦手な子供が増えたのだという歴史を、先生のセリフで語る。
字の認識が難しい子供も、最近は技術の発達で勉強についていけるようになったと。
つる子さん、最後にサゲを作り、その後で「おあとがよろしいようで」。

おいおい、「ああとがよろしいようで」を、世間が誤解しているほうの使い方をしてるじゃないか。
台本に最初からこうあったにしても、つる子さんにも一言言ってほしかった気もするぞ。
別に目くじら立てるほどのもんじゃないけど。

きっかけでもないとなかなか観ない番組だが、内容自体面白かった。
文字が発展したがゆえに、障害に分類される人が生まれてしまったという分析は、実に斬新である。
だから、タブレットの活用でもってハンデを補ってやる必要がある。

というわけで、Eテレ2発でした。
世間が落語になにを期待しているのかがうかがえるので面白いのです。
高座の最中にガヤが入ったりしてカジュアル満載。

(2023/5/24追記)

よく考えたら、「おあとがよろしいようで」は、「私のコーナー終わって本編に戻りますよ」の意味であれば正解かもしれない。
ケチ付けてすみません。

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。

1件のコメント

  1. NHKで「えほん寄席」をやっていることについてコメントいただいたのに、NGワードに引っ掛かったようで弾いてしまいました。
    すみません。

    えほん寄席、Yahoo!ブログ時代に記事に取り上げていました。引っ越すときに消してしまいましたが。
    うちの子もえほん寄席で育ちました。

コメントは受け付けていません。